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=第5章=


 部屋を照らす、橙色の灯りが揺れた。語り終えたアーヴェンが口を閉ざし、部屋には沈黙だけが残る。

 話を聞いた五人の顔に浮かぶのは、一様に戸惑いの表情だった。

 その中で、真っ先に口を開いたのは、宮。

「狭間……那夜も大きく出たな」

 そう言ったきり、彼女は斜め上の天井を睨んだまま黙り込む。再び、沈黙。

「あー……のさ」

 重たい部屋の空気を払うように手をはたつかせ、尚が一同を見回した。一同の視線が尚に向かう。六人の視線を一気に受けて、尚はやや視線を泳がせながら気まずそうに言った。

「狭間の秘宝って、何? いや、知ってるよ、知ってる。伝説の方はね。詳しい内容はからっきしだけど。ただ、えー、結局あれは実在するってこと?」

「少なくとも私は、実在するなんて話聞いたことない」

 応えたのは翔だった。隣でタカが頷いているところを見ると、どうやらタカも翔も尚と同レベルの知識しかないらしい。

「うちも詳しくは知らんけどね。ただ、世界のそこかしこにある神殿には、色々伝承が残ってるはず。シュキナ、書くもんある?」

 おう、と応えたシュキナが、どこからか紙と羽ペンを持って戻ってくると、宮はそれをテーブルに広げた。

「取り敢えず、色々ある神殿の中で、大きいところてのは大抵「自然」と結びついているとこなわけよ。火、水、大地、風に加えて、海と空。で、神々がこの世をお作りになった時に、この各エレメントで世界を作ったわけだ」

 言いながら、宮は紙の上に簡単な地図を描いていく。

 陸地は大地、そして火と水が全てを作る。陸の周りには取り巻く海、陸と海の上に、空。世界を包み込むは、風。

「で、だ。狭間てのは、こゆとこね。イメージだけど」

 そう言って宮が指したのは、海と陸の境。

「神々が作った各要素の境目。それが狭間。そこは人の世界じゃなくて、神々の世界に通じてるんだとさ。だから、神々のお宝があるかもね、てのがいわゆる狭間の伝説。伝承の中身は、地域によって千差万別」

 ひどく簡単にまとめて、宮はペンを置いた。黙って頷く尚を通り越し、宮はカルを名指しする。

「で、カルはどの程度ネタを持ってるよ?」

 問われたカルは、ふむ、と眼鏡の奥の目を細めた。

「あんまり変わらないかな。学術的な研究もほとんどなされてないし。あるのは神話に基づく研究書ばかりだった記憶があるなぁ。この手のネタは、とにかくガセが多くて……」

 ようするに、手持ちの情報ではにっちもさっちもいかないということだ。五人揃って、眉間に皺を寄せる。

 彼らはまさか、那夜の手掛かりを求めてこんなとんでもない話に行き着くとは思っていなかった。精々が、那夜の向かった先、狙っていた船なりが解れば次に繋がるかな、くらいの軽い気持ちだったのだ。

「まいったな。ほとんど振り出しじゃん」

 呟いた尚を軽く見遣って、カルは視線を真っすぐアーヴェンに向けた。

「那夜は、狭間は伝説じゃない、て言ってましたね。「あんたも知ってる通り」て。アーヴェン……あなたは狭間について、まだ情報を持っているんでしょう?」

 彼女の言葉に、周囲の視線が一斉にアーヴェンへと向かう。テーブルの一点に視線を落としていた彼は、緩慢な動作でゆっくりと顔を上げた。その色素の薄い双眸が、緑がかったカルの眸とあう。

「狭間の秘宝は、実在する」

 低い声が、はっきりと断言した。

 

   

 

 

 

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