
|
|
094:理想郷 |
|
|
|
肌に感じる風が柔らかい。春一番を啼く告鳥の声が、ここ、『ヴィレッジ』に春を運んでくる。 国で唯一の魔術師養成の場、『ヴィレッジ』。そんな特殊な環境にも、外界と変わらず四季は巡る。 ──キュルルルルーッィ ルーッィ 空高く舞う告鳥を見上げて、ヴォルフはそっと、その朱の双眸を細めた。顔に降り注ぐ陽光も、どことなく柔らかみを帯びて、暖かい。シルバーグレーの不揃いな髪を、春の風が撫でていく。 「すっかり春だな」 独りごちて、彼は視線を手元の本へ戻した。分厚い革張りの本の表には、鈍い金色の文字が踊る。曰く、『魔法理論基礎学 2 ー 禁術への招待』著者、アンデルア・ヴィリジャーヌ。 およそ、うららかな春の陽気とはほど遠い。
──キュルルルルーッ…… ──ッドーンッ
「なんだ?」 告鳥の声を遮り、遠くで大きな爆発音が轟いた。わずかに眉を寄せ、ヴォルフはそちらの方角へ目を向ける。『ヴィレッジ』の端の端、もくもくと煙の立ち昇る方角に妙な胸騒ぎを覚えて、ヴォルフはそっと腰を浮かした。 「何か……」 あったのだろうか、と呟きかけて、ヴォルフは眼をみはる。立ち昇る白煙を背に、こちらへ駆けてくる者の姿があった。ヴォルフと同じ、見習い魔術師の灰色ローブに身を包むその者は、ヴォルフめがけて一目散に駆けてくる。 「……ロード?」 「ヴォルフ、走れ!」 信じがたい速さでヴォルフの脇まで到達した相手は、その夕闇色の眸を不敵に光らせてそう宣った。 そのまま、勢いを殺さずヴォルフの横を駆け抜ける。 「おい? ロード?」 訳が分からないまま友を振り返ったヴォルフは、背後からの息も絶え絶えの声を聞き、再び視線を前に戻す。 「待てーぃっ! ロード・ヴェラ・カーディナル! ヴォルフ・アルジェント! とまれーぃ」 そう叫びながら、よたよたと駆けてくるのは、『ヴィレッジ』の師匠陣の中でも高齢の域に入る、マルーン老師だった。黒ぶち眼鏡と特徴的なくせ髪がチャームポイントと自称する、実践理論専攻。講義を一切もたない、謎多き師の一人である。 「ヴォルフ! 早くこい!」 状況を掴めずに立ち止まっていると、唐突に後ろから襟首を引かれた。 「ロード。何故俺まで追われるんだ」 「俺とお前は一心同体だからな」 「……なんだそれは」 納得しかねる、とヴォルフは渋面を浮かべる。そんな彼にはお構いなしに、ロードはさらに速度を上げた。 「いいから走れ」 ロードにつられ、ヴォルフも全力で坂を駆け下りる。 「ロード・ヴェラ・カーディナル! ヴォルフ・アルジェント! またぬかぁぁぁぁっ!」 「ロード、何をした」 走りながら、息も乱さずヴォルフが尋ねる。 「いやちょっと、老師の書棚から文献を……」 「っな、お前!」 「いいから走れ!」 ロードはまるで悪びれないまま、喜色を浮かべて走っている。この顔が、何かを企んでいる顔だということを、ヴォルフは経験で痛い程良く知っていた。 このあと、ロードが何をしでかすのか見届けなくてはならない。可能なら、無茶を止めるのがヴォルフの仕事だ。 勿論、可能なら、の話だが。 このあとに続くあれこれの厄介ごとを想像し、ヴォルフは独り重たい溜め息をついた。そんな彼の気も知らず、友は軽やかに駆けていく。
広大な『ヴィレッジ』の土地には、多くの魔術師たちが住まいを構える。点在する塔のうちの一つの影で、ようやくロードは走るのを止めた。 「さすがに撒けたな」 涼しい顔で背後を振り返ったロードは、やや息を乱したヴォルフの姿に、驚いたように片眉を上げた。 「なんだ。この程度で息切れか? 珍しい」 黙ったまま、ヴォルフは小脇に抱えた本を軽く示す。『魔法理論基礎学 2 ー禁術への招待』。総ページ数、驚きの六○○ページ。 まさか露天に本を放り出すわけにも行かず、ここまで律儀に小脇に抱えて走ってきたのだ。 バカ律儀だな、と思うが、ロードは敢えてコメントしない。ヴォルフの眉間の皺が普段より格段に多いことに気づいて、さり気なく一歩距離を置く。 呼吸を整え、額の汗を拭ったヴォルフは、その朱の双眸に不機嫌な色を浮かべてロードを睨みつけた。 「普段は実践だ、行動だ、と騒いでるお前が、老師の本棚からいったいどんな文献を拝借してきたんだ」 「これだ」 軽い調子でロードが放って寄越したのは、簡易製本された紙の束だった。焦げ茶色の布の表紙に、簡潔な数字が書かれている。 「378, 4, 1, 〜 379, 6, 14, ?」 「老師の日記だ」 驚いて、ヴォルフは危うくそれを取り落としそうになる。 「日記だと?」 凶器のような分厚い本で片手が塞がっているヴォルフは、その日記を開きようがない。先を促すように日記を押し返し、眼だけで「それで?」と尋ねるヴォルフに、意気揚々とロードが語り始める。 「秘華という花を知ってるか?」 「いや。なんだそれは」 耳慣れない言葉に、ヴォルフが首を傾げる。 「ヴィレッジの北の外れに、この時期になると立入り禁止になる区域があるだろう」 それは、春だけ閉鎖される森の端。春は、人心を惑わす花が咲くとも、冬眠明けの巨大熊がいるだの、色々に噂される、通称『春の森』。 「まさか、立入り禁止区域の人心を惑わす花とやらが、それだと? 馬鹿らしい」 「なぜ」 「あそこは、春になると北のアザック山脈からの雪解け水が地下から湧き出て、あちこち底なし沼になるんだ。危険だから立入り禁止だと、知らないのか」 誰でも知っている、と言わんばかりのヴォルフの自信に、ロードは何故か不敵な笑みを浮かべた。 「それは誰情報だ」 「俺の師だ。ローシェンナ師」 「あんな若作りのおっさんが信じられるか。そうやって、方々の師が好き勝手理由をつけるから、噂だらけになるんだ。いいか、秘華は確かに人心を迷わす花だ。ほら、ここを読んでみろ」 差し出された老師の日記は、ある日付で開かれている。 そこにあるのは、延々と繰り広げられる桃源郷での酒宴の様子。隣のページと見比べてみれば、老師の筆自体が浮き足立ったようにふわふわとしている様子が見て取れる。 「春の森で宴が?」 「そうだ」 「桃源郷か」 口に出して呟いてみて、ヴォルフはうぅむと唸る。桃源郷があるとして、それがどうして立入り禁止の理由になるのか? 師たちが集って宴を催すことも、別に珍しいことではない。 立入り禁止になる以上、それなりの理由があるはずなのだ。その一点がひっかかり、ヴォルフはどうしても渋面を解く気になれずにいる。 焦れたように、ロードは開いたままの老師の日記を手元に引き下げた。 「どうだ。信じる気になっただろう? それで、」 「却下だ」 あっさりと即答を返されて、思わずロードの肩が下がる。 「まだ何も言ってないぞ」 「お前の言いそうなことくらいわかる。あそこは“立入り禁止”だ」 「そうか。なら一人で行こう」 「ロードッ」 ヴォルフの伸ばした腕を、寸でのところでひょいと避け、ロードはにやりと笑う。 「ついてこなくてもいいぞ、お目付役どの」 笑い含みのロードの言葉に、ヴォルフの額には青筋が浮く。 「まったく、何故お前が放校にならないのか」 不思議でしょうがない。 思ったヴォルフの耳に、あっけらかんとしたロードの声が響く。 「そんなの、決まっているだろう」 才能があるからだ。 ヴォルフも良く知っている。この友人は、王族の血族にして魔術の才能に恵まれた子。それ故に、血族に疎まれ、畏れられる。『ヴィレッジ』で魔術を学ぶなど、体のいい厄介払いに近い。 『ヴィレッジ』にとっても、彼の無尽蔵な能力を野放しにするよりは、手元に置く方が安心だったのだろう。利害の一致という奴だ。 勿論、そんな境遇にロードが大人しく甘んじているはずもなく、『ヴィレッジ』切っての問題児を自負しては、あちらこちらを引っ掻き回し、昇級試験はサボり続ける。 お蔭さまで、目付役兼護衛役のヴォルフまで、万年見習い魔術師だ。 「そんな我侭がいつまで続くか……」 ボソリと呟いたヴォルフの声を耳聡く拾って、ロードが振り返る。 「何か言ったか?」 「いや」 何を言っても無駄なのだ。所詮、ヴォルフはロードの護衛であり、目付役。 立入り禁止区域に一人で行かせるわけにもいなかい。止められないならせめて、ついていくのが仕事というわけだ。 ふぅ、と一つ息を吐いて、ヴォルフはロードの後を追う。付いてくる友を横目で見遣って、ロードは満足げな笑みを浮かべた。
北の森は、立入り禁止と言われる程の鬱蒼さもなく、春らしい暖かな陽射しの中で、長閑にそこに存在していた。 「思っていたより、普通だな」 明らかに期待を裏切られたようで、ロードはわずかばかり顔を顰めている。 「帰るか?」 「まさか。これだけ立派な結界があるんだ、破らなければ失礼に当たるだろう」 「なんだそれは」 何に対して失礼なのか、ヴォルフは呆れたように溜め息をつく。ロードはといえば、まるで気にする風もない。 「さて、どうするかな」 いつの間に取り出したのか、五指に銀色の呪具を嵌め、ロードは楽し気にそれを打ち鳴らす。細かく繊細な文様の彫り込まれた呪具は、その度にカチカチと小さな音を立てた。 「実力行使よりも、良い方法があったら教えてくれ、副官どの」 「誰が副官だ」 応えながら、ヴォルフは素早く結界の編目を読む。 なかなか手の込んだ結界が二重、三重と組まれる中に、明らかな綻びを見つけてヴォルフは眼を細めた。 「おかしいぞ」 頑強なはずの結界が、明らかに綻んでいる。否、ぽっかりと、穴が開いているように見える。 自他ともに認める理論派のヴォルフは、もう一度確かめるように周辺に目を配った。 目立った魔法陣が書かれた、一番外側はフェイク。その内側の、繊細な絹糸で紡いだような網は、ロードの師匠アントワープ女史の手によるものだろう。さらに内側に、ソルフェリノ女史とおぼしき悪戯心満載のトラップが張り巡らされ、どこそこ見覚えのあるローシェンナ師の気がちらつく。 けれど、それらを縫うように明らかに、ぽっかりと口を広げた空間があるのだ。まるで、開け放しの窓のように、そこにだけ本当に何の気配も感じられない。 「……そうか」 「何を一人で納得してるんだ?」 じりじりと、待つことに飽きたロードが呪具を弄びながら尋ねる。 「扉が、開いてる」 そう言って、ヴォルフはそっと、森の一点を指差した。 はじめ、ヴォルフはそれを「綻び」だと感じた。しかし、そこには無理に押し通ったような形跡もなければ、綻びの結果生じる歪みも、何もなかった。 「つまり、どういうことだ」 「無闇に入れば、結界に弾かれる。実際、入りやすそうな薮の周辺は全て結界で覆われている。けれど、あの穴さえ通れば自由に出入りができるということだ」 ヴォルフの指差した先。それは、一本の大きな樫から張り出した、太い枝。頭上の遥か高みにある。 「あそこを通れば出入りができ、こんな面倒な結界を毎度張り直さなくてもいい」 「便利な隠し通用口だな。気づくのは、小姑のように細かいヴォルフくらいというわけだ」 軽口を叩いて、ロードは何気ない動作で右腕を頭上に掲げる。五指に嵌った銀の呪具が、春の陽射しを反射してきらりと光る。その呪具が、互いにぶつかりあって澄んだ音を立てた。 「“Volare”」 一言。たったこれだけで、ロードともどもヴォルフの体までが宙に浮く。 長い呪文の詠唱も、集中力を高めるための呼吸法も、ロードは一切すっ飛ばす。これこそが、彼が『ヴィレッジ』に放り込まれた、才能の賜物だ。 「……相変わらず、常識を無視したやり方だな」 樫の枝の上でたたらを踏んで、ヴォルフはなんとか踏みとどまった。眼下を見れば、落ちたらひとたまりもない高さにいることがわかる。 「そういうお前は、知識常識で凝り固まって、ろくすっぽ実践ができないじゃないか」 「……」 言い返す言葉が見つからずに押し黙るヴォルフの肩を、ロードは軽い調子でぱんぱんと叩く。 「まぁ、気にするな。さぁ、さっさと人心を惑わす桃源郷の華とやらを拝みにいこうじゃないか」 嬉々とした様子でロードが先を行く。最早止める機会を完全に逃したヴォルフは、諦めとともにその背を追った。
「これは……すごい」 知らず、感嘆が漏れる。何事にも飄々と構えるロードでさえ、呟いたきり言葉が続かない。 彼らの眼前に広がるのは、一面に咲く純白の華だった。森全体が雪景色のように白く染まり、柔らかな風が吹く度に、雪華のように花弁が舞う。 それは、目も眩むような鮮やかさ。 胸が苦しくなる程の、圧倒的な情景。 「空気が重い。すごい密度だ」 「息苦しいか?」 「いや、逆だな。なんというか、すごい勢いで周りの力が入ってくる感じだ」 応えるロードに、ヴォルフは頷く。 「人心を惑わす、というのも、あながち嘘じゃなさそうだ」 「嘘であり、真であり、かな」 突然肩越しに掛けられた声に、驚いてヴォルフは振り返った。 「ローシェンナ師」 やぁやぁ、と手を振りながら近づいてくるのは、ヴォルフの師、魔術理論の大家を自称するアーネスト・ムンデ・ローシェンナであった。眼鏡の奥の黒い眸が、人の良さそうな笑みを浮かべている。 自分達が立入り禁止区域にいることを思い出し、ヴォルフはハッとした顔で畏まった。傍らのロードはといえば、こちらも人の良さそうな笑みで、奇遇ですね、などと嘯いている。 「申し訳ありません、師。その……」 言い訳のしようもなく、頭を下げて固まるヴォルフの耳に、緊張感のない師匠の声が響いた。 「いやいや、全然おっけー」 一瞬、何を言われたのかわからずに顔を上げる。 これは、人心を惑わす華の見せる幻覚か何かだろうか? そんな考えさえ、脳裏を過る。 ローシェンナのさらに後方に数人の人影をみとめ、ヴォルフの懸念はさらに深くなった。ひい、ふう、みぃ……見える人影は、どれも『ヴィレッジ』の師匠陣に違いない。偉大な魔術師たちが、手に手にバスケットや樽を持ち、にこやかにこちらに向かって歩いてくる。 さらに後ろには、くせの強い金髪の魔術師に従えられた、イスの軍列。 「……ロード、あれは俺の見間違いだろうか」 「あれって、どれだ? 陽光の下にいるアントワープ女史か、エクルベイジュ師のイスの軍隊か、それとも、酒樽担いでるソルフェリノ女史か?」 「全部だ」 「俺には、全部本物に見えるな」 「その通り」 全部本物だとも。と、ローシェンナ。 「どういうことですか」 尋ねる弟子に、ローシェンナは茶目っ気たっぷりのウィンクを返す。 「春の森はね、エナジースポットなのさ。色んな意味でね」 色んな意味で、というところに引っかかりを覚えつつ、ロードとヴォルフは互いに顔を見合わせる。 「君らもここに辿り着いたからには、参加していきたまえ」 さぁ、と背中を押され、ロードはローシェンナを振り返った。 「参加、とは?」 「決まっているだろう?」 驚き顔で、ローシェンナは前を指差す。 グリーンのシートがくるくると広がり、思い思いの形のイスが並び、バスケットから飛び出した茶器や酒器がところ構わず飛び回る。 「何をしているの! 早くいらっしゃい!」 こちらに向かって叫ぶソルフェリノ女史が見える。右手にグラス、左手にボトル。 「待たずに始めるわよ!」 「今行きますから〜! さぁ、ほら」 歩き出した師匠の背を慌てて追い、ヴォルフは小声でその背に尋ねる。 「あの、師匠。立入り禁止の禁を破った件については……」 「ん? 君らは結界を破ったりしてないだろう?」 「は、いや、確かにそうですが」 「いいんだよ。あれを通ったら、この会に参加する資格がある。そういう決まりなんだ。昔からね。ここは力の濃い場所だから、力のない術者が来るとあてられる。ここに来る資格を測るための結界だからね。あれでいいんだよ」 昔は私も随分やんちゃしたもんだよ、などと、外見に似合わぬ昔語りを始めるアーネスト・ムンデ・ローシェンナ。外見年齢二十代の、ウン十歳。 「アーネスト! 早く来ないと全部ソルフェリノ女史が飲んじゃうよ」 「黙りなさい、エクルベイジュ! 私だって勝手に始めたりしませんよ!」 やいのやいのと賑やかな声が辺りに満ちる。どこからともなく楽の音が流れ始め、その音に乗るように花弁が舞う。 聞き馴染みのない旋律に、エクリュ語の詠唱が重なった。呪文とも祈りとも付かない不思議な歌声は、アントワープ女史のメゾソプラノだ。 「見ておいで」 ロードとヴォルフに盃を手渡しながら、ローシェンナが頭上の華を示した。 時は黄昏に移りゆく頃。アントワープの歌声に呼応するように、白い花が緋色に染まる。夕陽に染め上げられたように、少しづつ、少しづつ、茜を帯びる華。 「秘華、は、元は緋華と書くんだよ」 世界が緋色に輝き始める。 「いい頃合いかしらね」 華から視線を外し、ソルフェリノ女史が盃を掲げた。 「精霊と、自然の理の永久の安寧に」 「美しく咲いた秘華に」 「ここまで辿り着いた、我らが問題児たちに」 『乾杯!』 風に舞う緋色の花弁が、盃に散って波紋を揺らした。 ハーブ酒の強い香りが、華の香りと混ざって空気を包む。ヴォルフは、疲れも悩みも溶け出していくような、不思議な感覚に身を浸していた。 ふと横を見れば、何やらにやけたロードの顔がある。 「なんだ」 「いや、珍しく眉間の皺が消えてるな、と思ってな」 ロードの指摘に、ヴォルフは嫌そうに顔をしかめる。 「誰の所為で……」 「言っておくが、今回のこれだって俺の行動力の賜物だろう」 「お前一人なら、無理矢理ぶち破ってただろうがな」 確かにそうだ、と、笑って応えるロード。つられるように渋面を解いて、ヴォルフは盃を傾けた。 「今回に限れば、お前に付き合うのも、そう悪くない」 見上げれば、友の眸と同じ夕闇の空。
──短い華の命を惜しむように、桃源郷の宴は夜更けまで続く。 |
|
|
|
|
|
この作品は、『突発性競作企画「桜」』に参加しています