
○各社社説
●北の核保有宣言 経済制裁の国際包囲網を 脅しに屈しない姿勢を示せ
北朝鮮が核兵器の保有を公式に宣言し、六カ国協議への参加を無期限で中断すると発表した。日本を含めた周辺諸国の平和と安全保障に対する許しがたい挑戦である。日本は米国などと十分に協議したうえで、経済制裁の発動に踏み切るべきである。
北はこれまでも、二〇〇二年十月に訪朝したケリー米国務次官補との会談や翌年四月の米国、中国との三カ国協議などで、核兵器保有を認めてきた。核兵器五、六個分のプルトニウムを抽出できる核燃料棒八千本の再処理の完了も宣言している。
今回の北朝鮮外務省声明には「核兵器をつくった」「核兵器庫を増やす」という表現が使われているが、内容的には従来、北が非公式に言ってきたこととほぼ変わらない。しかし、北が公式に表明したことは重大で、政府は強い姿勢で対応すべきである。
≪北の狙いは5カ国分断≫
米国の第二期ブッシュ政権は北朝鮮を「圧制国家」としながら、六カ国協議の場に出させるため、努めて抑制的な姿勢を示している。先の一般教書演説でも、ブッシュ大統領は北朝鮮の核開発放棄を求めるにとどまり、非難めいた表現を避けた。そこにつけこみ、米国との二国間協議に持ちこもうというのが北の狙いだろう。
北は声明の中で、日本に対しても、「すべて解決した『拉致問題』に言いがかりをつけ、偽遺骨問題まででっち上げ」などと非難し、六カ国協議に同席できないとしている。中国、韓国、ロシアには触れていない。日米両国とその他の三カ国との分断を図ろうとする北の意図が感じられる。
北の核保有宣言は、明らかに平成十四年九月に小泉純一郎首相と金正日国防委員長が署名した「日朝平壌宣言」に違反している。
≪家族会の声は国民の声≫
拉致被害者の家族たちも強い憤りの声をあげ、拉致被害者家族会代表の横田滋さんは「北朝鮮に抗議すると同時に期限を切って制裁を通告すべきだ」と話している。
平成九年三月の家族会結成以降、拉致事件解決を求める署名が五百万人を超え、今月八日、首相官邸にその目録が提出された。当初は拉致事件の解明と被害者の早期救出を求める署名だったが、平成十五年七月以降は政府に経済制裁の発動を求めるための署名だ。五百万人という数字は大変な数字である。最近の世論調査の結果を見るまでもなく、北朝鮮への経済制裁を求める家族会の声は、多くの日本国民の声でもある。
日本独自の判断で北朝鮮への送金規制などを可能にする改正外為法と、万景峰号など北の船の入港禁止を可能にする特定船舶入港禁止法は昨年の通常国会で、社民、共産党を除く与野党の圧倒的多数の賛成により成立した。
自民党のシミュレーションチームは、最も軽い「人道支援の凍結」(レベル1)から最も重い「全北朝鮮船舶の入港禁止」(レベル5)まで五段階の制裁案をまとめている。公明党の神崎武法代表も経済制裁の段階的実施を求めている。政府だけが依然、慎重姿勢を崩していない。小泉首相の決断が待たれる。
「日本だけが経済制裁を行っても効果が薄い」という意見が、日本の外務省や米国の一部にある。北から見れば、対日貿易額は中国、韓国に次ぎ三番目で、日朝貿易が減った分、中韓両国との貿易にシフトしてくる可能性があるためだ。しかし、まず、何よりも日本の国としての姿勢を経済制裁という形で示す必要がある。
もちろん、経済制裁の効果も考えるべきである。日本だけでなく、中国や韓国からの燃料や食糧、肥料などの供給が減れば、それだけ制裁の効果が上がる。北の危険な核開発のスピードを鈍らせることも可能である。北の核開発は中韓両国も黙認できないはずだ。特に、中国は北の核保有宣言により、六カ国協議の議長国としてのメンツをつぶされた。
拉致事件の解決に加え、完全かつ検証可能で後戻りできない核開発の廃棄を北に迫るためには、国連安保理への付託も視野に入れつつ、日米の結束をさらに強固なものにし、中国、韓国、ロシアの周辺各国にも連携を求める粘り強い外交努力が必要である。(産経新聞2/12)
●6か国協議 北朝鮮の離間策に乗せられるな
北朝鮮が外務省声明で、六か国協議への参加を「無期限中断する」と発表した。
北朝鮮の核廃棄を目指す六か国協議は、昨年六月を最後に開かれていない。北朝鮮が再開に応じず、のびのびになっている。
ブッシュ米政権が二期目のスタートを切り、再開は近い、と見られていた矢先の不参加表明である。案の定、拉致事件での日本の対応も口実にしてきた。きわめて遺憾な事態だ。
北朝鮮が協議を全面否定したのなら、舞台は国連安全保障理事会に移り、制裁協議が始まる。だが、北朝鮮はそこまで踏み切ったわけではない。
声明は、「結果を期待できる十分な条件と雰囲気がもたらされたと認められる時まで、やむを得ず」参加をしない、としている。「対話と協商」による解決を目指す姿勢や、「朝鮮半島の非核化」という最終目標に変わりはない、とも主張している。
協議中断の脅しをかけることで、協議出席の「代価」を得たい、という新たな遅延策であろう。
六か国協議のホスト役である中国の共産党幹部が近く訪朝する予定という。中国相手にだだをこね、ブッシュ政権の強硬姿勢をなだめてもらう計算があるのであれば、見当違いも甚だしい。
六か国協議の進展は、北朝鮮がウラン濃縮計画を含め「すべての核開発計画の廃棄」を決断するかどうかにかかる。北朝鮮は、遅延策を弄(ろう)するのではなく、核廃棄の戦略的決断をすべきである。
北朝鮮は、新たな恫喝(どうかつ)も示した。声明は、「ブッシュ政権の圧殺政策に対抗して、核兵器を製造した」と、初めて公式に核保有を宣言した。「核兵器庫を増やす」と開発継続も強調した。
手持ちの核カードを強化することで、「エネルギー支援」や「安全の保証」など、「補償」のつり上げを図ろうとする狙いもあるのだろう。核を弄(もてあそ)ぶ、相変わらずの危険きわまりない姿勢だ。
北朝鮮は、核拡散防止条約(NPT)から脱退した唯一の国だ。加盟中に取得した核技術を悪用して核武装化を進めるのは、NPT体制を根底から揺るがす容認できない行為だ。
日米中韓露の五か国は、北朝鮮の核廃棄という共通の目標を有するが、達成するための戦術は異なる。強硬な米国に対し、韓国や中国は北朝鮮への融和的姿勢を見せてきた。そこに、北朝鮮が離間策を弄する危険が潜む。
連携を緩めず、北朝鮮の脅しに過剰反応することなく、六か国協議の早期再開を、北朝鮮に強く促すべきだ。(読売新聞2/11)
●北朝鮮声明 脅しや強要は通用しない
北朝鮮外務省は10日、懸案となっていた核問題をめぐる6カ国協議への参加を無期限中断し、「米国の孤立圧殺政策に対抗して自衛のための核兵器を製造した」との声明を発表した。
6カ国協議は昨年6月、北京で第3回が開かれて以来、中断されたままだ。米国が「3カ月の準備期間を経て核計画の凍結と査察に入る」と提案したのに対し、北朝鮮が即答を拒んだのが中断の始まりだ。11月の米大統領選やブッシュ政権2期目の政策をみきわめようとしていると受け止められてきた経過がある。
その意味で、ボールは北朝鮮側にあった。1月の米下院議員団訪朝の際には6カ国協議参加に前向きな姿勢を示したとされ、米政府も「体制変革や攻撃を仕掛ける意図はない」と明言したり、意図的に刺激的な言動を避けて、仲介役の中国と連携を図ってきた。
この時期に今回の声明を発表した狙いは、米政府の主要な関心がイラク復興など中東方面にクギ付けになっている現実や、6カ国協議再開へ向けて近く中国代表団が訪朝する予定であることとも無関係ではないだろう。再開協議の主導権を握るために米国からさらなる譲歩を強要し、中国側からも協議参加の見返りを求める意図があるのかもしれない。
しかし、どんな狙いにせよ、核兵器の製造を誇示したり、さらに増産するなどと称して国際社会を脅迫する態度は、誰の目にも容認できない。日本に対しても、声明は「米国追従の敵視政策」や「解決済みの拉致問題で、ニセ遺骨問題までねつ造した」としている。これも許しがたい暴言としか言いようがない。
北朝鮮はこれまでも重要な段階を迎える度に、話し合いを拒む強硬姿勢を打ち出すことによって有利な成果を得ようとしてきた。
そうした見えすいたやり方が、国連や国際社会が求める朝鮮半島非核化はもちろん、話し合い解決をめざす協議の原則にも反するのは明白だ。第一に、協議が再開されなければ、北朝鮮が必要とする経済、食糧、エネルギー支援は遠のくだけで、何の利益にもならない。第二に、拉致問題を口実にして日本を協議から締め出そうとしても、かえって日本国民や各国の反発を買うばかりだろう。
ライス米国務長官は北朝鮮声明に対して「国際的孤立を深めるだけだ」と述べた。いたずらに声明に反応せず、協議再開へ向けて日米韓が冷静に北朝鮮の狙いを分析し、結束した対応を固めることが重要である。また北朝鮮に最大の政治・経済的影響力を持つ中国との連携も密にした上で、協議参加を求めていくことが大切だ。
米国を含む参加国に対する主張や要求があるのならば、協議の場に出て堂々と言えばよい。かたくなな対決姿勢をとったり、国際社会を脅して得をしようとするやり方が自らを一層疎外させ、自国民の窮状をますます悪化させるのは目に見えている。北朝鮮はそうした愚かしさから早く目を覚まして協議参加を表明すべきだ。(毎日新聞2/11)
●北朝鮮声明 脅しをやめて席に着け
北朝鮮が、みずからの核開発問題をめぐる6者協議への参加を無期限に見合わせるという外務省声明を発表した。
ブッシュ米政権が北朝鮮に敵視政策を続ける限り、協議に応じる意味はないというのだ。「自衛のために核兵器を製造した」とも明言した。
北朝鮮は核を「保有」していることを非公式に表明してきたが、公式声明で確認したのは初めてだ。開発が実際どの段階にあるのか分からないが、脅威のレベルを高めて状況を有利に導こうという瀬戸際外交であることは間違いない。
核開発は断じて認めることができない。そもそも6者協議は核開発をやめさせるためのものだ。参加を拒み、核を誇示する北朝鮮の手前勝手な理由付けを、私たちは厳しく非難したい。
声明が主な標的としたのは、発足したばかりの第2期ブッシュ政権の姿勢だ。ブッシュ大統領が先月の就任演説で「世界の圧制を終わらせるのが究極の目標だ」と宣言したことなどをあげ、もはや6者協議に参加できないと結論づけた。
しかし、ブッシュ氏のその後の一般教書演説は北朝鮮を直接非難せず、6者協議を強調しただけだった。北朝鮮を「悪の枢軸」の一角と断罪した3年前の演説に比べてはるかに穏やかなものだった。北朝鮮が目くじらを立てるのは、一見不思議に見える。
米国がイラクを抱えたまま北朝鮮への軍事行動には出にくいということを、北朝鮮が知らないはずはない。今回の声明は、そんな米国の足元を見て、米国を北朝鮮との直接交渉に引き出そうと打った一手なのかも知れない。
6者協議についても、枠組み自体を否定はしていない。「対話と交渉で解決する原則は変わらない」とも述べている。とにかく米国から「安全の保証」を取り付けたい。声明から聞こえてくるのは、北朝鮮のそんな本音である。
こうなった以上、6者協議の早期の再開は難しそうだ。しかし、米国、日本、中国、韓国、ロシアは、この事態を放置してはならない。時間がたてばたつほど北朝鮮は核開発を進める恐れがある。北朝鮮が「脅威」をつり上げ、外交解決をいっそう困難にする可能性もある。
5カ国が連携しながら、北朝鮮をテーブルに引き戻す外交を強めることが重要だ。核開発を断念するなら体制は保障するとのメッセージを、もっとはっきりと伝えるなどの策も考えられる。
北朝鮮の声明は6者協議に参加できない理由として、拉致問題などをめぐる日本の「敵視政策」もあげている。とんでもない言いがかりだ。
折もおり、日本政府は横田めぐみさんの「遺骨」鑑定を「捏造(ねつぞう)」と非難する北朝鮮に再反論する文書を送った。科学的な根拠の公開は、国際的な支持を集めるためにも有効だろう。
北朝鮮の脅しは通じない。拉致も核もミサイルも、対話と圧力の腰をすえた外交でかかりたい。(朝日新聞2/11)
●許せない北朝鮮の核保有
北朝鮮外務省は10日、「核問題に関する6カ国協議への参加を無期限中断する」との声明を発表、さらに「自衛のための核兵器を製造した」と明確な表現で核保有を宣言した。北朝鮮の唐突な動きの真意は不明だが、国際社会には到底受け入れられない暴挙である。北朝鮮は6カ国協議に応じ、核を廃棄しなければならない。日米韓と中ロの5カ国は国連安全保障理事会による制裁も辞さない姿勢で、北朝鮮の翻意を強く促す必要がある。
朝鮮中央通信によると、北朝鮮外務省スポークスマンは「第二期ブッシュ政権が我々を敵視し、体制転覆を狙うことが明らかになった」として6カ国協議への参加を無期限中断。初めて明確に核保有を宣言、核開発を続ける意向を表明した。また日本を「米国に追随し、共和国に対する敵視政策に頼っている」と非難、協議から排除するよう主張した。
ブッシュ米大統領が2日の一般教書演説で北朝鮮への直接非難を控えたことで6カ国協議再開への期待も出ていたが、北朝鮮の声明はこれに冷水を浴びせた。その意図は不明だが、一方で「対話と協議を通じ核問題を解決しようとする原則的な立場には変わりない」とも述べている。
したがっていつものどう喝戦術で協議再開に向け、有利な足場を築こうと狙っているのかもしれない。そのために「核抑止力」というあいまいな言い方をしていたのを改め、核保有を明確に認め、廃棄の見返りに日米の対北政策の変化を促そうとしているようにもみえる。
袋小路に陥った金正日政権の苦境と焦りを反映した動きと見ることもできよう。経済危機が一段と深刻化し、北朝鮮国内から政権非難や体制打倒の呼びかけが漏れ伝わるようになってきたからだ。
5カ国をはじめとする国際社会はまず北朝鮮の真意を探るべきだ。北との関係が緊密な中国にその役割を期待したい。北朝鮮が声明通り核開発を続行し、協議再開に応じないなら国連安保理を招集し、制裁に向けた協議を始めるべきだ。国際社会は北朝鮮の核保有を断固許さないとの基本線で結束を再び強化すると同時に、金正日政権が何を求めているのか冷静に見きわめる必要がある。(日本経済新聞2/11)
●北朝鮮の「核保有・対話拒否」は最悪の選択だ
北朝鮮が不吉なカードを取り出した。6者協議への参加を拒否し、核兵器保有を宣言した北朝鮮外務省の発表は、対話による核問題解決の可能性に水を差す危険な発想だ。国際社会に向けて、今後「核保有国」としての待遇を主張することも同然だ。韓半島に災いを呼び起こす呪いのようにも聞こえる。
北朝鮮外務省の発表で、05年2月10日以前と以後の北朝鮮核問題の性格が一変した。北朝鮮の核保有に対しては、これまで反論が提起されてきた。韓国政府内にも疑問を示す者がいた。北朝鮮核問題の論議は、もはや実のない争いになった。北朝鮮の一方的な主張だとか、核兵器を実際に見て確認しなければならないと言って状況を混乱させる人がこれ以上出てはいけない。
北朝鮮は、核保有を宣言し対話を拒否する二重の挑発に出た。対話を通じて問題を解決しようという姿勢ではない。昨年の6月以来6者協議を拒否してきた理由が、米国の対北政策の変化を促すためではなく、核保有を完成するためではないかという疑いを避けることはできなくなった。
2期目のブッシュ政権が、「北朝鮮と共存しないということを政策化した」という主張も、納得し難い。先週のブッシュ大統領の国政演説後に全世界が下した結論は、「ブッシュ大統領が北朝鮮を刺激しないために節制した」というものだった。ブッシュ大統領は、イランとシリアは攻撃したが、北朝鮮に対しては6者協議による核問題解決の努力だけを言及した。
北朝鮮の対話再開への拒否は、米国と韓国をはじめ6者協議参加国への不信感という点で波紋が大きくなるしかない。北朝鮮は、核問題を意図通りに利用できると考えるだろう。しかし、とんでもない誤判である。北朝鮮が公式的に核保有を宣言した以上、対話が再開されなければ、国連安全保障理事会で制裁が論議されるしかない。中国も含め、北朝鮮の核武装を受け入れる周辺国は一つもないということを、北朝鮮は忘れてはいけない。(東亞日報2/11)
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