最初のページに戻る隠れ家/「もてない女」
この作品はフィクションです。
もてない女
一.

 私は話をするとき、よく「もっと要点をまとめなさい」とか「つまりお前の言いたいことは何だ」と注意される。でもそうやって要点をまとめたり、最初から一貫性をもって話をするのは苦手だ。何というか、たとえば文章を書くことを想像してもらいたいんだけど、書く前に話の展開を始めから結末までつくっておくよりも、思いつきで書いてしまう方が、文に勢いがあって、それに書いてる本人が楽しい。そういうのは単に私に小説家的才能が無いだけかもしれないけど、別に私は小説家になる積もりは皆無だから、今からも思いつきでぺらぺら喋ってしまおうと思う。なんというか、その方が素直に気持ちをしゃべられる気がする。
 まあ、私という人間はもてない女でして、いや、自分で自分のことを「もてない」とか評価しちゃうのは、すっごくしゃくに触るんですが、たまにはそう言ってみようと思います。で、そんな私は、(「そんな」ってのは「もてない」ってことです。いちいち言わせないでよ)やっぱりくせとして、恋人と付き合ってる想像をしちゃんですね。例えば、放課後に彼と居残りさせられて、で、勉強そっちのけで、窓際で二人でしゃべって、それから…ってのとか、もうとても恥ずかしくて言えないような内容でして。たまに私はこわくなるんですけど、もし私が頭で妄想してることが、最先端の科学技術で映像化されて、クラス中のみんなに見られたとしたら…いや、想像するだけで赤面しますよ。あ、そう、言い忘れてましたが、私は今高二でして。高二って高校生活を一番楽しんでそうな時期ですよね。まあ私には当てはまりませんが?そりゃ、高校入りたての時なんて張り切りましたもん。かわいくなって、彼氏つくるぞって。でも今となっては何なんでしょうね。そういう可愛い子と私って、絶妙なところで差ができるんでしょうね。自分でも、どこで何を間違ったかも分からないです。私服とかまじで見せられんです。制服最高。あー、言葉にするほどみじめだ……
 だから私はいっつも現実逃避するために、彼とデートする妄想をする訳です。そしてその「彼」ってのが、幸い現実に存在する男の子でして。たまに妄想が酷い人って、実在しないイケメンを頭の世界に創り出すそうでして、そういう人と比べれば、自分は全然安全な方です。って優越感には意味がないですよね。はあ自分はなんと性格が悪い。まあいいです。で、その男の子って、クラスにいるA君です。A君て別に「A」は適当に言ったんじゃなく、本当にA…あ!いえ、気にしないでください。優しいんですよ、A君って。この前私が廊下でボールペン落としたとき、たまたま前にいたA君が拾って、「はい」って言ってきて、その時目が合ったんですよー。ふつう嫌いだったら知らないふりするし、まして目を合わせませんよね?これはやっぱり脈がある筈ですよ。そのA君てのがまたちょうど良い線を行ってましてね。派手すぎず、地味すぎない。
 いけない、ああ、いけない!A君のこと話してたら、胸がどきどきしてきた…これが、まあ、恋ってものでして、私は恋をするときの、胸が一杯になるような、充実感がすごく好きでして、もう、今やってることの全て、例えば、部活とか学校とか美容とか友人とか、全部恋のためにある気がします。恋をしてると一番生きてるって実感がするんです。みなさん、最近なんだかつまらないなって思ったら、それは体が恋を忘れてるって合図です!まあ私はもてない女ですが!
 すいません。調子乗りすぎました。一度も付き合ったことが無いくせに恋について語るとか私は何様でしょうね。ホント、彼氏持ってから言えよと。私はくずです、女の。こんな人間に恋愛とかする権利は無いんです。あ、何だか胸が苦しくなってきた。おかしいな、自分で自分のことかわいそうとか思うのは中学で卒業したつもりでしたけど。今日はねむくなったのでこの辺で。明日はバレンタインのことでも話そうかなと思います。

二.

 昨日はバレンタインの話でもするとか予告したと思いますが、やっぱりやめにしました。
 正直、死んだ方がましじゃないかと思えてきて。まあ、私は、今までも嫌なことはありましたし、今日もあったわけです。それはまあ何かとはいいたくもないことですけど、最悪なことでして。実際こういう嫌なことって、生きてく上でこれから先もいっぱいあるんでしょ?無理です。だって、良いことがどれだけあっても、それと同じくらい嫌なことがあるんですよね。意味ないじゃないですか。
 何があったかを赤裸々に話しますけどね(後で気付いたけど、私さっき「話したくない」って言ってましたね。もうこの時には忘れてましたけど)。私、何か分からないけど今日の始まりはずっと順調だったんですよ。朝起きてから無性に気分がよくって、授業中は何事もなかったし。
 だというのに、学校出て三歩ぐらいのところで転んだんですよ。別に石とか落ちてたわけじゃないし、ましてバナナなんかなおさらなくて。ただ足元がふらついて。そしたら、うしろに偶然いたクラスの男子のMとNとSっていうバカ3人が、吹き出してんの。私が痛くて足をおさえてるのに、そばを通るときもにやにや笑いながらこっちを見てるんですよ。なんたって、あいつら普段から私のことバカにしてるんですよ。この前クラスの前でレポートの発表するってときも、あいつら私のこと見て笑ってましたからね。実際大体、あいつら人をバカにしてるんです。ああいうのは自分にいいところがないもんだからって他の人をけなす。そうしないといけない弱虫。
 あ。弱虫なのはあいつらなんだから、別に自分が落ち込む理由はないってのに、なんで私はこんなユーウツになってるんでしょう?
 (私の心の中にいる第三者):「それは、やっぱり自分に自信がないからじゃないの?」
 なぜ?「自分に自信がない」とか、今風というか、うさんくさい言い方ですね。
 (私の心の中にいる第三者):「MとNとSに笑われたせいで、自信が喪失したのさ。君はそいつらをばかにしつつ、若干そういうもてる連中はちょっとうらやましいんだろ?」
 うるさい、うるさい。ああいうやつらが悪いんであって、自分はおかしくない。第一あいつらは男だ。なんで女の私がうらやましくなるのさ?
 (私の心の中にいる第三者):「でも、本質的にはMたちみたいな根明のやつらには憧れてんじゃないの?君のなりたい「もてる女」ってのは、たとえば同じクラスのS子さんとかさ、何だかんだいってMみたいな遊んでそうなやつらと付き合ってるもんさ。何というか、明るい連中が共通して持ってる性質に、君が憧れてるってことだよ。」
 何だか今日は、自分一人で考えているはずなのに、心に第三者の声が聞こえてきて非常にうっとうしいですね。もう寝ますよ。みなさん、おやすみ!明日はひなまつりについて話します。

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