【涼州詞】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)灰
〈作者名〉王翰(オウカン)

葡萄美酒夜光杯
欲飲琵琶馬上催
酔臥沙場君莫笑
古来征戦幾人回

葡萄の美酒 夜光の杯
飲まんと欲すれば 琵琶 馬上に催す
酔うて沙場に臥すとも 君笑うこと莫かれ
古来 征戦 幾人か回る



【九月九日憶山中兄弟】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)真
〈作者名〉王維(オウイ)

独在異郷為異客
毎逢佳節倍思親
遥知兄弟登高処
遍挿茱萸少一人

独り異郷に在りて 異客と為り
佳節に逢う毎に ますます親を思う
遥かに知る 兄弟 高きに登る処
遍く茱萸を挿して 一人を少くを



【送元二使安西】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)真
〈作者名〉王維(オウイ)

渭城朝雨□軽塵
客舎青青柳色新
勧君更尽一杯酒
西出陽関無故人

渭城の朝雨 軽塵をうるおし
客舎 青青 柳色 新たなり
君に勧む 更に尽せ 一杯の酒
西のかた 陽関を出づれば 故人無からん



【涼州詞】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)刪
〈作者名〉王之渙(オウシカン)

黄河遠上白雲間
一片孤城万仞山
羌笛何須怨楊柳
春光不度玉門関

黄河 遠く上る 白雲の間
一片の孤城 万仞の山
羌笛 何ぞ須いん 楊柳を怨むを
春光 度らず 玉門関



【峨眉山月歌】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)尤
〈作者名〉李白(リハク)

峨眉山月半輪秋
影入平羌江水流
夜発清渓向三峡
思君不見下渝州

峨眉山月 半輪の秋
影は平羌江水に入って 流る
夜 清渓を発して 三峡に向かう
君を思えども見えず 渝州に下る



【早発白帝城】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)刪
〈作者名〉李白(リハク)

朝辞白帝彩雲間
千里江陵一日還
両岸猿声啼不住
軽舟已過万重山

朝に辞す 白帝 彩雲の間
千里の江陵 一日に還る
両岸の猿声 啼いて住まざるに
軽舟 已に過ぐ 万重の山



【春夜洛城聞笛】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)庚
〈作者名〉李白(リハク)

誰家玉笛暗飛声
散入春風満洛城
此夜曲中聞折柳
何人不起故園情

誰が家の玉笛ぞ 暗に声を飛ばす
散じて春風に入りて 洛城に満つ
此の夜 曲中 折柳を聞く
何人ぞ起こさざらん 故園の情



【黄鶴楼送孟浩然之広陵】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)尤
〈作者名〉李白(リハク)

故人西辞黄鶴楼
煙花三月下揚州
孤帆遠影碧空尽
唯見長江天際流

故人 西のかた 黄鶴楼を辞し
煙花 三月 揚州に下る
孤帆の 遠影 碧空に尽き
唯だ見る 長江の 天際に流るるを



【従軍行】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)刪
〈作者名〉王昌齢(オウショウレイ)

秦時明月漢時関
万里長征人未還
但使竜城飛将在
不教胡馬度陰山

秦時の明月 漢時の関
万里 長征して 人未だ還らず
但だ竜城の飛将をして在らしめば
胡馬をして陰山を度らしめず



【芙蓉楼送辛漸】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)虞
〈作者名〉王昌齢(オウショウレイ)

寒雨連江夜入呉
平明送客楚山孤
洛陽親友如相問
一片氷心在玉壷

寒雨 江に連なって 夜 呉に入る
平明 客を送れば 楚山 孤なり
洛陽の親友 如し相問わば
一片の氷心 玉壷に在りと



【塞下曲】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)灰
〈作者名〉常建(ジョウケン)

北海陰風動地来
明君祠上望龍堆
髑髏尽是長城卒
日暮沙場飛作灰

北海の陰風 地を動かして来たる
明君祠上 竜堆を望む
髑髏 尽く是れ長城の卒
日暮沙場 飛んで灰と作る



【除夜作】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)先
〈作者名〉高適(コウセキ)

旅館寒灯独不眠
客心何事転凄然
故郷今夜思千里
霜鬢明朝又一年

旅館の寒灯 独り眠らず
客心 何事ぞ 転た凄然
故郷 今夜 千里を思う
霜鬢 明朝 又た一年



【別董大】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)文
〈作者名〉高適(コウセキ)

十里黄雲白日大
北風吹雁雪紛紛
莫愁前路無知己
天下誰人不識君

十里の黄雲 白日大し
北風 雁を吹いて 雪紛紛
愁うる莫かれ 前路 知己無きを
天下 誰人か 君を識らざらん



【江南逢李亀年】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)文
〈作者名〉杜甫(トホ)

岐王宅裏尋常見
崔九堂前幾度聞
正是江南好風景
落花時節又逢君

岐王の宅裏 尋常に見
崔九の堂前 幾度か聞く
正に是れ 江南の好風景
落花の時節 又た君に逢う



【逢入京使】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)寒
〈作者名〉岑参(シンジン)

故園東望路漫漫
双袖竜鐘涙不乾
馬上相逢無紙筆
憑君伝語報平安

故園 東に望めば 路漫漫
双袖 竜鐘として 涙乾かず
馬上 相逢うて 紙筆無し
君に憑って伝語して 平安を報ぜん



【磧中作】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)先
〈作者名〉岑参(シンジン)

走馬西来欲到天
辞家見月両回円
今夜不知何処宿
平沙万里絶人煙

馬を走らせて 西に来たり 天に到らんと欲す
家を辞してより 月の両回 円かなるを見る
今夜は知らず 何れの処にか宿せん
平沙 万里 人煙絶ゆ



【重送裴郎中貶吉州】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)尤
〈作者名〉劉長卿(リュウチョウケイ)

猿啼客散暮江頭
人自傷心水自流
同作逐臣君更遠
青山万里一孤舟

猿啼き客散ず 暮江の頭
人自ずから心を傷ましめ 水自ずから流る
同じく逐臣と作りて 君更に遠し
青山万里 一孤舟



【帰雁】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)灰
〈作者名〉銭起(センキ)

瀟湘何事等閑回
水碧沙明両岸苔
二十五絃弾夜月
不勝清怨却飛来

瀟湘より 何事ぞ等閑に回る
水は碧に 沙は明らかに 両岸は苔
二十五絃 夜月に弾ずれば
清怨に勝えずして 却飛し来たる



【寒食】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)虞
〈作者名〉韓娵(カンコウ)

春城無処不飛花
寒食東風御柳斜
日暮漢宮伝蝋燭
青煙散入五侯家

春城 処として 飛花ならざるは無し
寒食 東風 御柳斜なり
日暮 漢宮 蝋燭を伝う
青煙は散じて 五侯の家に入る



【楓橋夜泊】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)先
〈作者名〉張継(チョウケイ)

月落烏啼霜満天
江楓漁火対愁眠
姑蘇城外寒山寺
夜半鐘声到客船

月落ち 烏啼いて 霜 天に満つ
江楓 漁火 愁眠に対す
姑蘇城外の 寒山寺
夜半の鐘声 客船に到る



【夜上受降城聞笛】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)陽
〈作者名〉李益(リエキ)

回楽峰前沙似雪
受降城外月如霜
不知何処吹蘆管
一夜征人尽望郷

回楽峰前 沙 雪に似たり
受降城外 月 霜の如し
知らず 何れの処にか蘆管を吹く
一夜 征人 尽く郷を望む



【江村即事】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)先
〈作者名〉司空曙(シクウショ)

罷釣帰来不繋船
江村月落正堪眠
縦然一夜風吹去
只在蘆花浅水辺

釣を罷め 帰り来たって 船を繋がず
江村 月落ちて 正に眠るに堪えたり
縦然 一夜 風 吹き去るとも
只だ 蘆花 浅水の辺に在らん



【王昭君】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)東
〈作者名〉白居易(ハクキョイ)

満面胡沙満鬢風
眉銷残黛臉銷紅
愁苦辛勤莊茫尽
如今却似画図中

面に満つる胡沙 鬢に満つる風
眉は残黛を銷し 臉は紅を銷す
愁苦辛勤して莊茫し尽き
如今かえって画図の中に似たり



【烏衣巷】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)虞
〈作者名〉劉禹錫(リュウウシャク)

朱雀橋辺野草花
烏衣巷口夕陽斜
旧時王謝堂前燕
飛入尋常百姓家

朱雀橋辺 野草の花
烏衣巷口 夕陽斜なり
旧時 王謝堂前の燕
飛んで 尋常百姓の家に入る



【秋思】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)蕭
〈作者名〉劉禹錫(リュウウシャク)

自古逢秋悲寂寥
我言秋日勝春朝
晴空一鶴排雲上
便引詩情到碧霄

古より 秋に逢うて 寂寥を悲しむ
我は言う 秋日は 春朝に勝れりと
晴空 一鶴 雲を排して上る
便ち 詩情を引いて 碧霄に到る



【十五夜望月】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)麻
〈作者名〉王建(オウケン)

中庭地白樹棲鴉
冷露無声湿桂花
今夜月明人尽望
不知秋思在誰家

中庭 地白うして 樹に鴉棲み
冷露 声無く 桂花を湿す
今夜 月明 人尽く望むも
知らず 秋思の 誰が家に在るを



【度桑乾】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)陽
〈作者名〉賈島(カトウ)

客舎并州已十霜
帰心日夜憶咸陽
無端更渡桑乾水
却望并州是故郷

客舎 并州 已に十霜
帰心 日夜 咸陽を憶う
端無くも 更に渡る 桑乾の水
却って 并州を望めば 是れ故郷



【秋思】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)東・冬
〈作者名〉張籍(チョウセキ)

洛陽城裏見秋風
欲作家書意万重
復恐怱怱説不尽
行人臨発又開封

洛陽城裏 秋風を見る
家書を作らんと欲して 意 万重
復た恐る 怱怱 説いて尽くさざるを
行人 発するに臨んで 又た封を開く



【聞白楽天左降江州司馬】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)江
〈作者名〉元兔(ゲンジン)

残灯無焔影幢幢
此夕聞君謫九江
垂死病中驚坐起
暗風吹雨入寒窓

残灯 焔無く 影幢幢
此の夕べ 君が九江に謫せられしを聞く
垂死の病中 驚いて坐起すれば
暗風 雨を吹いて 寒窓に入る



【江南春】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)東
〈作者名〉杜牧(トボク)

千里鶯啼緑映紅
水村山郭酒旗風
南朝四百八十寺
多少楼台煙雨中

千里鶯啼いて 緑紅に映ず
水村山郭 酒旗の風
南朝 四百八十寺
多少の楼台 煙雨の中



【山行】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)麻
〈作者名〉杜牧(トボク)

遠上寒山石径斜
白雲生処有人家
停車坐愛楓林晩
霜葉紅於二月花

遠く寒山に上れば 石径 斜めなり
白雲 生ずる処 人家有り
車を停めて 坐ろに愛す 楓林の晩
霜葉は 二月の花よりも 紅なり



【清 明】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)元
〈作者名〉杜牧(トボク)

清明時節雨紛紛
路上行人欲断魂
借問酒家何処有
牧童遥指杏花村

清明の時節 雨紛紛
路上の行人 魂を断たんと欲す
借問す 酒家は何れの処にか有る
牧童 遥かに指さす 杏花の村



【泊秦淮】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)麻
〈作者名〉杜牧(トボク)

煙籠寒水月籠沙
夜泊秦淮近酒家
商女不知亡国恨
隔江猶唱後庭花

煙は寒水を籠め 月は沙を籠む
夜 秦淮に泊して酒家に近し
商女は知らず 亡国の恨み
江を隔てて猶唱う 後庭花



【夜雨寄北】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)支
〈作者名〉李商隠(リショウイン)

君問帰期未有期
巴山夜雨漲秋池
何当共剪西窓燭
却話巴山夜雨時

君 帰期を問う 未だ期有らず
巴山の夜雨 秋池に漲る
何れか当に共に 西窓の燭を剪って
却って 巴山夜雨の時を 話すなるべし



【己亥歳】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)虞
〈作者名〉曹松(ソウショウ)

沢国江山入戦図
生民何計楽樵蘇
憑君莫話封侯事
一将功成万骨枯

沢国 江山 戦図に入る
生民 何の計あってか樵蘇を楽しまん
君に憑って話すこと莫かれ 封侯の事
一将 功成って 万骨 枯る



【山亭夏日】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)陽
〈作者名〉高駢(コウベン)

緑樹陰濃夏日長
楼台倒影入池塘
水晶簾動微風起
一架薔薇満院香

緑樹 陰濃やかにして夏日長し
楼台 影を倒にして池塘に入る
水晶の簾動いて微風起こり
一架の薔薇 満院香し



【鍾山即事】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)尤
〈作者名〉王安石(オウアンセキ)

澗水無声繞竹流
竹西花草弄春柔
茅簷相対坐終日
一鳥不鳴山更幽

澗水声無く 竹を繞って流る
竹西の花草 春柔を弄ぶ
茅簷 相い対して坐すること終日
一鳥鳴かずして 山更に幽なり



【春夜】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)侵
〈作者名〉蘇軾(ソショク)

春宵一刻直千金
花有清香月有陰
歌管楼台声細細
鞦韆院落夜沈沈

春宵 一刻 直千金
花に清香有り 月に陰有り
歌管 楼台 声 細細
鞦韆 院落 夜 沈沈



【飲湖上初晴後雨】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)支
〈作者名〉蘇軾(ソショク)

水光瀲表晴方好
山色空濛雨亦奇
欲把西湖比西子
淡粧濃抹総相宜

水光 瀲表として 晴れて方に好し
山色 空濛として 雨も亦た奇なり
西湖を把って 西子に比せんと欲すれば
淡粧 濃抹 総べて相宜し



【贈劉景文】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)支
〈作者名〉蘇軾(ソショク)

荷尽已無薦雨蓋
菊残猶有傲霜枝
一年好景君須記
正是橙黄橘緑時

荷尽きて 已に雨を薦ぐるの蓋無く
菊残われて 猶お霜に傲るの枝有り
一年の好景 君 須らく記すべし
正に是れ 橙黄橘緑の時



【剣門道中遇微雨】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)元
〈作者名〉陸游(リクユウ)

衣上征塵雑酒痕
遠遊無処不消魂
此身合是詩人未
細雨騎驢入剣門

衣上の征塵 酒痕を雑う
遠遊 処として消魂せざるは無し
此の身 合に是れ詩人なるべきや未や
細雨 驢に騎って剣門に入る



【偶成】

〈形式〉七言絶句
〈韻〉(平)庚
〈作者名〉朱熹(シュキ)

少年易老学難成
一寸光陰不可軽
未覚池塘春草夢
階前梧葉已秋声

少年老い易く 学成り難し
一寸の光陰 軽んずべからず
未だ覚めず 池塘春草の夢
階前の梧葉 已に秋声