【金陵酒肆留別】

〈形式〉七言古詩
〈韻〉(平)陽
〈作者名〉李白(リハク)

白門柳花満店香
呉姫圧酒喚客嘗
金陵子弟来相送
欲行不行各尽觴
請君問取東流水
別意与之誰短長

白門の柳花 満店香し
呉姫 酒を圧し 客を喚びて嘗めしむ
金陵の子弟 来たりて相送り
行かんと欲して行かず 各おの觴を尽くす
請う 君問取せよ 東流の水に
別意と之れと 誰れか短長と



【哀江頭】

〈形式〉七言古詩
〈韻〉(入)職
〈作者名〉杜甫(トホ)

少陵野老呑声哭
春日潜行曲江曲
江頭宮殿鎖千門
細柳新蒲為誰緑
憶昔霓旌下南苑
苑中万物生顔色
昭陽殿裏第一人
同輦随君侍君側
輦前才人帯弓箭
白馬嚼齧黄金勒
翻身向天仰射雲
一箭正墜双飛翼
明眸皓歯今何在
血汚遊魂帰不得
清渭東流剣閣深
去住彼此無消息
人生有情涙沾臆
江水江花豈終極
黄昏胡騎塵満城
欲往城南忘南北

少陵の野老 声を呑んで哭し
春日 潜行す 曲江の曲
江頭の宮殿 千門を鎖し
細柳新蒲 誰が為にか緑なる
憶う 昔 霓旌 南苑に下りしとき
苑中の万物 顔色を生ず
昭陽殿裏 第一の人
輦を同じうし 君に随って 君側に侍す
輦前の才人 弓箭を帯び
白馬嚼齧す 黄金の勒
身を翻して天に向かい 仰いで雲を射る
一箭 正に墜す 双飛翼
明眸皓歯 今何くにか在る
血は遊魂を汚して 帰り得ず
清渭は東流し 剣閣は深し
去住彼此 消息無し
人生 情有り 涙 臆を沾す
江水 江花 豈に終に極まらんや
黄昏 胡騎 塵 城に満つ
城南に往かんと欲して 南北を忘る



【胡笳歌送顔真卿使赴河隴】

〈形式〉七言古詩
〈韻〉(平)支
〈作者名〉岑参(シンジン)

君不聞胡笳声最悲
紫髯緑眼胡人吹
吹之一曲猶未了
愁殺楼蘭征戍児
涼秋八月蕭関道
北風吹断天山草
崑崙山南月欲斜
胡人向月吹胡笳
胡笳怨兮将送君
秦山遥望隴山雲
辺城夜夜多愁夢
向月胡笳誰喜聞

君聞かずや 胡笳の声最も悲しきを
紫髯緑眼の胡人吹く
これを吹いて 一曲猶お未だ了らざるに
愁殺す 楼蘭征戍の児
涼秋八月 蕭関の道
北風吹断す 天山の草
崑崙山南 月斜めならんと欲し
胡人 月に向かいて 胡笳を吹く
胡笳の怨みもて 将に君を送らんとす
秦山遥かに望む 隴山の雲
辺城 夜夜 愁夢多し
月に向かいて 胡笳 誰か聞くを喜ばん



【漁翁】

〈形式〉七言古詩
〈韻〉(入)屋
〈作者名〉柳宗元(リュウソウゲン)

漁翁夜傍西巌宿
暁汲清湘燃楚竹
煙消日出不見人
欸乃一声山水緑
回看天際下中流
岩上無心雲相逐

漁翁 夜 西巌に傍いて宿る
暁に 清湘を汲みて 楚竹を燃く
煙消え 日出でて 人を見ず
欸乃一声 山水緑なり
天際を回看して 中流を下れば
岩上 無心に 雲相逐う