【従軍行】

〈形式〉五言律詩
〈韻〉(平)庚
〈作者名〉楊炯(ヨウケイ)

烽火照西京
心中自不平
牙璋辞鳳闕
鉄騎繞竜城
雪暗凋旗画
風多雑鼓声
寧為百夫長
勝作一書生

烽火 西京を照らし
心中 自ずから平らかならず
牙璋 鳳闕を辞し
鉄騎 竜城を繞る
雪暗くして 旗画凋み
風多くして 鼓声雑わる
寧ろ 百夫の長と為るも
一書生と作るに 勝る



【送杜少府之任蜀州】

〈形式〉五言律詩
〈韻〉(平)真
〈作者名〉王勃(オウボツ)

城闕輔三秦
風煙望五津
与君離別意
同是宦遊人
海内存知己
天涯若比隣
無為在岐路
児女共沾巾

城闕 三秦を輔し
風煙 五津を望む
君と離別の意
同に是れ 宦遊の人
海内に 知己を存せば
天涯も 比隣の若し
為す無かれ 岐路に在りて
児女と共に 巾を沾おすを



【和晋陵陸丞早春遊望】

シンリョウノリクジョウショウノソウシュンユウボウニワス

〈形式〉五言律詩
〈韻〉(平)真
〈作者名〉杜審言(トシンゲン)

独有宦遊人
偏驚物候新
雲霞出海曙
梅柳渡江春
淑気催黄鳥
晴光転緑蘋
忽聞歌古調
帰思欲沾巾

独り 宦遊の人有りて
偏えに 物候の新たなるに驚く
雲霞 海を出でて曙け
梅柳 江を渡って春なり
淑気 黄鳥を催し
晴光 緑蘋に転ず
忽ち 古調を歌うを 聞けば
帰思 巾を沾さんと欲す



【望洞庭湖贈張丞相】

〈形式〉五言律詩
〈韻〉(平)庚
〈作者名〉孟浩然(モウコウネン)

八月湖水平
涵虚混太清
気蒸雲夢沢
波撼岳陽城
欲済無舟楫
端居恥聖明
坐観垂釣者
徒有羨魚情

八月 湖水平らかにして
虚を涵して 太清に混ず
気は蒸す 雲夢沢
波は撼がす 岳陽城
済らんと欲するに 舟楫無く
端居 聖明に恥ず
坐して 釣を垂るる者を観るに
徒らに 魚を羨むの情有り



【過香積寺】

〈形式〉五言律詩
〈韻〉(平)冬
〈作者名〉王維(オウイ)

不知香積寺
数里入雲峰
古木無人径
深山何処鐘
泉声咽危石
日色冷青松
薄暮空潭曲
安禅制毒竜

知らず 香積寺
数里 雲峰に入る
古木 人径無く
深山 何れの処の鐘ぞ
泉声 危石に咽び
日色 青松に冷かなり
薄暮 空潭の曲
安禅 毒竜を制せん



【使至塞上】

〈形式〉五言律詩
〈韻〉(平)先
〈作者名〉王維(オウイ)

単車欲問辺
属国過居延
征蓬出漢塞
帰雁入胡天
大漠孤煙直
長河落日円
蕭関逢候騎
都護在燕然

単車もて辺を問わんと欲し
属国 居延を過ぐ
征蓬 漢塞を出で
帰雁 胡天に入る
大漠 孤煙直に
長河 落日円かなり
蕭関にて 候騎に逢えば
都護は 燕然に在りと



【送友人】

〈形式〉五言律詩
〈韻〉(平)庚
〈作者名〉李白(リハク)

青山横北郭
白水遶東城
此地一為別
孤蓬万里征
浮雲游子意
落日故人情
揮手自茲去
蕭蕭班馬鳴

青山 北郭に横たわり
白水 東城を遶る
此の地 一たび別れを為し
孤蓬 万里に征く
浮雲 游子の意
落日 故人の情
手を揮って 茲より去れば
蕭蕭として 班馬鳴く



【破山寺後禅院】

〈形式〉五言律詩
〈韻〉(平)侵
〈作者名〉常建(ジョウケン)

清晨入古寺
初日照高林
曲径通幽処
禅房花木深
山光悦鳥性
潭影空人心
万籟此倶寂
惟聞鐘磬音

清晨 古寺に入れば
初日 高林を照らす
曲径 幽処に通じ
禅房 花木深し
山光 鳥性を悦ばしめ
潭影 人心を空しうす
万籟 此に 倶に寂たり
惟だ 鐘磬の音を 聞くのみ



【春望】

〈形式〉五言律詩
〈韻〉(平)侵
〈作者名〉杜甫(トホ)

国破山河在
城春草木深
感時花濺涙
恨別鳥驚心
烽火連三月
家書抵万金
白頭掻更短
渾欲不勝簪

国破れて 山河在り
城春にして 草木深し
時に感じては 花にも涙を濺ぎ
別れを恨んでは 鳥にも心を驚かす
烽火 三月に連らなり
家書 万金に抵る
白頭 掻けば 更に短かく
渾べて 簪に勝えざらんと欲す



【春夜喜雨】

〈形式〉五言律詩
〈韻〉(平)庚
〈作者名〉杜甫(トホ)

好雨知時節
当春乃発生
随風潜入夜
潤物細無声
野径雲倶黒
江船火独明
暁看紅湿処
花重錦官城

好雨 時節を知り
春に当たって 乃ち発生す
風に随って 潜かに夜に入り
物を潤して 細かにして 声無し
野径 雲は倶に黒く
江船 火は独り明かなり
暁に 紅の湿える処を看れば
花は 錦官城に重からん



【旅夜書懐】

〈形式〉五言律詩
〈韻〉(平)尤
〈作者名〉杜甫(トホ)

細草微風岸
危檣独夜舟
星垂平野闊
月湧大江流
名豈文章著
官応老病休
飄飄何所似
天地一沙貎

細草 微風の岸
危檣 独夜の舟
星垂れて 平野闊く
月湧いて 大江流る
名は豈に文章にて著れんや
官は応に老病にて 休むべし
飄飄として 何の 似たる所ぞ
天地の 一沙貎



【登岳陽楼】

〈形式〉五言律詩
〈韻〉(平)尤
〈作者名〉杜甫(トホ)

昔聞洞庭水
今上岳陽楼
呉楚東南繋
乾坤日夜浮
親朋無一字
老病有孤舟
戎馬関山北
憑軒涕泗流

昔聞く 洞庭の水
今上る 岳陽楼
呉楚 東南に繋け
乾坤 日夜浮かぶ
親朋 一字無く
老病 孤舟有り
戎馬 関山の北
軒に憑れば 涕泗流る



【商山早行】

〈形式〉五言律詩
〈韻〉(平)陽
〈作者名〉温庭勣(オンテイイン)

晨起動征鐸
客行悲故郷
鶏声茅店月
人迹板橋霜
槲葉落山路
枳花明駅牆
因思杜陵夢
鳧雁満回塘

晨に起きて 征鐸を動かす
客行 故郷を悲しむ
鶏声 茅店の月
人迹 板橋の霜
槲葉 山路に落ち
枳花 駅牆に明らかなり
因りて思う 杜陵の夢
鳧雁 回塘に満つるを