【飲酒】

〈形式〉五言古詩
〈韻〉(平)元・先・刪
〈作者名〉陶潜(トウセン)

結廬在人境
而無車馬喧
問君何能爾
心遠地自偏
采菊東籬下
悠然見南山
山気日夕佳
飛鳥相与還
此中有真意
欲弁已忘言

廬を結んで 人境に在り
而も 車馬の喧しき無し
君に問う 何ぞ能く爾るやと
心遠ければ 地自から偏なり
菊を 東籬の下に采り
悠然として 南山の見ゆ
山気 日夕に佳く
飛鳥 相与に還る
此の中に 真意有り
弁ぜんと欲すれば 已に言を忘る



【帰園田居】

〈形式〉五言古詩
〈韻〉(平)先
〈作者名〉陶潜(トウセン)

少無適俗韻
性本愛邱山
誤落塵網中
一去十三年
羈鳥恋旧林
池魚思故淵
開荒南野際
守拙帰園田
方宅十余畝
草屋八九間
楡柳蔭後簷
桃李羅堂前
曖曖遠人村
依依墟里煙
狗吠深巷中
鶏鳴桑樹巓
戸庭無塵雑
虚室有余間
久在樊篭裏
復得返自然

少きより 俗に適するの 韻なく
性 本と 邱山を愛す
誤って 塵網の中に落ち
一去 十三年
羈鳥 旧林を恋い
池魚 故淵を思う
荒を 南野の際に 開かんと
拙を守って 園田に帰る
方宅 十余畝
草屋 八九間
楡柳 後簷を蔭い
桃李 堂前に羅なる
曖曖たり 遠人の村
依依たり 墟里の煙
狗は吠ゆ 深巷の中
鶏は鳴く 桑樹の巓
戸庭 塵雑なく
虚室 余間あり
久しく 樊篭の裏に在りしも
復た 自然に返るを得たり



【読山海経】

〈形式〉五言古詩
〈韻〉(平)魚・虞
〈作者名〉陶潜(トウセン)

孟夏草木長
繞屋樹扶疏
衆鳥欣有託
吾亦愛吾廬
既耕亦已種
時還読我書
窮巷隔深轍
頗回故人車
歓言酌春酒
摘我園中蔬
微雨従東来
好風与之倶
汎覧周王伝
流観山海図
俯仰終宇宙
不楽復何如

孟夏 草木長び
屋を繞りて 樹 扶疏たり
衆鳥 託する有るを 欣び
吾れも 亦た 吾が廬を愛す
既に耕し 亦た已に種え
時に 還た 我が書を読む
窮巷 深轍を隔て
頗る 故人の車を回らす
歓言して 春酒を酌み
我が園中の 蔬を摘む
微雨 東より来たり
好風 之れと倶にす
汎く周王の伝を 覧て
流く山海の図を 観る
俯仰して 宇宙を終う
楽しまずして 復た何如



【送別】

〈形式〉五言古詩
〈韻〉(平)支
〈作者名〉王維(オウイ)

下馬飲君酒
問君何所之
君言不得意
帰臥南山陲
但去莫復問
白雲無尽時

馬を下りて 君に酒を飲ましむ
君に問う 何れに之く所ぞと
君は言う 意を得ずして
南山の陲に帰臥すと
但だ去れ 復た問うこと莫し
白雲は 尽くる時無し



【子夜呉歌】

〈形式〉五言古詩
〈韻〉(平)庚
〈作者名〉李白(リハク)

長安一片月
万戸擣衣声
秋風吹不尽
総是玉関情
何日平胡虜
良人罷遠征

長安 一片の月
万戸 衣を擣つの声
秋風 吹いて尽きず
総べて是れ玉関の情
何れの日か 胡虜を平らげ
良人 遠征を罷めん



【幽居】

〈形式〉五言古詩
〈韻〉(平)庚
〈作者名〉韋応物(イオウブツ)

貴賎雖異等
出門皆有営
独無外物牽
遂此幽居情
微雨夜来過
不知春草生
青山忽已曙
鳥雀繞舎鳴
時与道人偶
或随樵者行
自当安蹇劣
誰謂薄世栄

貴賎 等を異にすと雖も
門を出ずれば 皆営み有り
独り 外物の牽く無く
此の 幽居の情を遂ぐ
微雨 夜来過ぎ
知らず 春草生ずるを
青山 忽ち已に 曙け
鳥雀 舎を繞りて 鳴く
時に 道人と偶し
或いは 樵者に随いて行く
自から 当に蹇劣に 安んずべし
誰か 世栄を薄んずと謂わん



【遊子吟】

〈形式〉五言古詩
〈韻〉(平)微
〈作者名〉孟郊(モウコウ)

慈母手中線
遊子身上衣
臨行密密縫
意恐遅遅帰
誰言寸草心
報得三春暉

慈母 手中の線
遊子 身上の衣
行に臨みて 密密に縫う
意に恐る 遅遅として帰らんことを
誰か言う 寸草の心
三春の暉に 報い得んと



【薊丘覧古】

〈形式〉五言古詩
〈韻〉(平)灰
〈作者名〉陳子昂(チンスゴウ)

南登碣石館
遥望黄金台
丘陵尽喬木
昭王安在哉
覇図悵已矣
駆馬復帰来

南のかた 碣石館に登り
遥かに 黄金台を望む
丘陵 尽く喬木
昭王 安くに在りや
覇図 悵として已んぬるかな
馬を駆って 復た帰り来たる



【贈衛八処士】

〈形式〉五言古詩
〈韻〉(平)陽
〈作者名〉杜甫(トホ)

人生不相見
動如参与商
今夕復何夕
共此灯燭光
少壮能幾時
鬢髪各已蒼
訪旧半為鬼
驚呼熱中腸
焉知二十載
重上君子堂
昔別君未婚
児女忽成行
怡然敬父執
問我来何方
問答未及已
児女羅酒漿
夜雨剪春韭
新炊間黄梁
主称会面難
一挙累十觴
十觴亦不酔
感子故意長
明日隔山岳
世事両茫茫

人生 相見ざること
動もすれば 参と商との如し
今夕 復た何の夕べぞ
此の 灯燭の光を共にせんとは
少壮 能く幾時ぞ
鬢髪 各已に蒼たり
旧を訪えば 半ばは鬼と為る
驚呼すれば 中腸熱す
焉くんぞ知らん 二十載
重ねて 君子の堂に上らんとは
昔別れしとき 君未だ婚せざりしに
児女 忽ち行を成す
怡然として 父の執を敬い
我に問う 何れの方より来たると
問答 未だ已むに及ばざるに
児女 酒漿を羅ぬ
夜雨 春韭を剪り
新炊 黄梁を間う
主は称す 会面難し
一挙 十觴を累ねよと
十觴も 亦た酔わず
子の故意の長きに 感ず
明日 山岳を隔てなば
世事 両に茫茫たり