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(『賢者への人間学』藤堂明保・産業新潮社)絶版 より
「未」は成長途上の植物の意 子丑寅・・・・・・とかぞえて亥に終る十二進法の数え方がある。その八番めが未にあたる。この数詞は、もとは子(=種子)から始まり亥(=核、結実してしんができる)に至る植物の発達段階を十二段に分けて表したもので、未はまだ熟しきらない成長途上の植物を表している。つまり未熟の未という意味である。 しかし「文盲の百姓に数を教えるには、むずかしい文字や言葉では不便である。いっそのこと身近な動物の名を当てたらよかろう」(なんと差別的な発想か。これが「知識人」の発想)というので、ネズミ・ウシ・トラ・・・・・・と当ててゆき八番めには羊をもってきた。 ※十干と十二支 -- 干支(えと・かんし) 「羊」は美と栄養食の代表 牧畜に縁のうすい日本人と違って、中国人は羊をたいせつな家畜としてきた。三千年前には、北中国に羌(キョウ)と呼ばれる遊牧人が羊を放牧していた。羌は「羊+人」を合わせて羊飼いを表した字で、今日のチベット人の元祖にあたる。その影響をうけて、大昔から華北、華中の漢民族も羊の肉と羊の毛皮とを愛用した。 羊という字は、ヒツジの頭部を描いた字で、つのの特色をよく表している。羊肉は古代から最もたいせつな栄養食であったので、「羊+食」を合わせて養という字ができた。羊(ヨウ) ─ 養(ヨウ)は、発音までひとしい同系語である。またヒツジの姿は、やさしく堂々としているというので、「羊+大(りっぱ)」を合わせて美という字ができた。中国では昔からあか犬の肉も食用にしたが(黒や白の犬は食べない)、それは羊肉の旨さには及びもつかない。そこで「いかさま商売」を諷刺して「羊頭を懸(かか)げて狗肉を売る」という。だからこそ、十二進法の動物の名にヒツジが登場したのであった。 晩秋から正月にかけて、北京の街かどには「焼羊肉」の立て看板が立ちならぶ。いわゆるジンギス汗鍋のことであるが、これも羊肉を使い、豚や牛は用いない。日本では「ヒツジ年の女は・・・・」などと悪口をいうようだが、中国では羊は、美と栄養食の代表である。「一衣帯水」とはいっても、島国と大陸では話が違うのである。 (『賢者への人間学』藤堂明保・産業新潮社)絶版 より |