トパーズ(Topaz)


世界各地のトパーズ  1.14 - 205ct

化学組成
(Composition)
結晶系
 (Crystal System) 
モース硬度
 (Hardness)
 
比重
(Density)
屈折率
(Refrctive Index)
 Al2SiO4(F,OH)2  斜方晶系
(Orthorhombic)
 3.49-57  1.62−83

名前と産状 (Name and Occurences)

   トパーズの名前の由来についてはさまざまな説があります;
一般には、ギリシア語の ”トパシオス : 捜し求める” を意味する、紅海にあった島(現在ではザバルガート島、あるいはセント・ジョン島)の名に由来すると伝えられています。
 何故なら、この島では古来よりペリドットが採掘されていたからです。
 中世の頃まで トパーズ、あるいはトパシオとは、ペリドットも含め、緑や黄緑、黄色の宝石の一般的な呼び名であったのです。
 トパーズの語源については、もう一つ、サンスクリット語で ”火”や ”熱” を意味する ” Tapas” に由来するという説があります。
 現在ではほとんど使われてはいませんが、日本語ではトパーズとは ”黄玉” と呼ばれます。
おそらく、トパーズが日本に伝えられた明治時代には、ドイツのエルツ山脈で発見された黄色のトパーズがヨーロッパで人気を集めていた宝石であったためでしょう。
 
 トパーズは弗素と水酸基を含む珪酸アルミニウムという、ありふれた元素の化合物で、ペグマタイト鉱床、気成鉱床、熱水鉱床、交代鉱床と、世界各地の多様な起源の地質に広範に発見される、鉱物です。
 が、宝石質のトパーズの殆どはペグマタイト鉱床起の源です。
とりわけ最も尊重される金色、ピンク、シェリー色のトパーズはブラジル、ミナス・ジェライス州のオウロ・プレトが唯一の供給源といっても過言ではありません。
 世界の他の産地から発見される無色、淡青、淡褐色のトパーズは、透明で美しいものであっても、コレクター用以外には、宝飾品用途としてカットされることはまずありません。
 しかし、この30年余り、宝石として価値のない無色のトパーズを原子炉や高エネルギー加速器で照射し、さらに加熱処理により濃淡様々の青い色に発色させる技術によって、膨大な量の青い色のトパーズが宝石市場に定着するようになりました。
 さらに、近年、無色のトパーズにレンズの薄膜コーティング技術を応用して多彩な色合いに着色させたものが手ごろな宝飾品として登場してきました。

ブラジルのトパーズ (Brazilian Topaze)

オウロ・プレトのインペリアル・トパーズ (Imperial Topaz from Ouro Preto)
4.37ct 11.5x8.2mm 1.32ct 10.1x5.6mm 1.43ct 1.20ct 4.67ct 13.0x8.3mm 1.42ct 2.51ct 8.0x7.5mm
1.65ct 2.45ct 16.5x5.5mm
 17世紀末に金が発見され、当時の世界の金の産出の半分を占めるほどの大鉱山となったオウロ・プレトの町は、ミナス・ジェライス州の州都となるほどの大発展を遂げました。
 実はこの一帯は鉄の四角地帯と呼ばれ、現在も世界で屈指の鉄鉱石の産地でもあります。
オウロ・プレトとは ”黒い金” を意味し、黒い鉄鉱石の鉱脈中に金が発見され、それが町の名前の由来になりました。
 さらに1735年に郊外にてピンクや金色、サーモン、シェリー等の美しい色合いのトパーズの大鉱床が発見され、当時ドイツのエルツ山脈で発見され、ヨーロッパで人気を集めていた黄色いトパーズに対抗するために、インペリアル・トパーズと命名され、ブラジル特産のトパーズとして、すっかり定着した呼び名となっています。
 ピンク、シェリー、稀に紫等の色は、微量に含まれるクロムによる発色です。
が、天然のトパーズの殆どは、原因不明の黄色のカラーセンターのために、好ましい色合いではありません。
 このため黄色を取り除く加熱処理が施されています。
 天然にも稀に美しい色合いの原石が発見されますが、それは結晶成長時、あるいはその後の地殻変動による自然の加熱があったためと考えられます。
 加熱処理の結果は安定していて、その後の褪色や変色は起こりません。


 同じオウロ・プレト産ですが、金色のトパーズは宝石業界ではプレシヤス・トパーズと呼ばれることもあります。
 何と呼ばれようと、美しいトパーズであることに変わりはありませんが、今日、金色はピンクやシェリー、サーモンといった色合いと比べると人気が低く、したがって値段も安いので、呼び名に差がつけられたという事情です。 
 他のルビーやサファイア、エメラルド等の色石と比べると、トパーズは驚くほど安いのですが、しかし、産出量は年間20万カラット足らずと遥かに少なく、実は希少な宝石なのです。
0.84ct 7.9x4.8mm 8.32ct 22.0x8.6mm
1.06ct 0.96ct 0.56ct
 ロンドニア州のトパーズ (Topaz from Rondonia)
5.93ct 17.6x8.4mm 7.71ct 16.3x8.7mm 9.72ct 20.6x7.6mm
Bom Futuro Mine, Rondonia, Brazil
  天然の青いトパーズは珍しくはありません。
しかしこの青は不安定で光により褪色し、無色になってしまいます。
 ところが数年前に登場したブラジル産の淡青色のトパーズは褪色しません。
トパーズの青の発色はその仕組みが未だに解明されていません。
 ルチル(金紅石)の針状結晶を含み美しい効果を見せる水晶が、ルチル・クォーツとして人気があります。  1987年に同様のトパーズが発見され、ルチル・トパーズと呼ばれます。
ところが、トパーズの場合は、含まれるのがルチルではなく、エッチ・チャンネルと呼ばれるトパーズ結晶の細い空洞状の欠陥中に針鉄鉱が入り込んだものであることが、後に判明しました。
 即ち鉄の錆びに過ぎないのですが、金色の美しい模様が特長です。
 いずれも大変稀な種類のトパーズですが、長い間、正確な産地が不明でした。
最近になってようやく、ボリビア国境に近いロンドニア州の世界的な錫鉱山である、ボン・フトゥーロ鉱山でと判明しました。
 ブラジルにはミナス・ジェライス州を通って南北に伸びるトパーズ・ベルトと、もう一つ北東部のパライバ州から西南西のボリビア方面に伸びるベルトと二本のベルトがあり、世界で稀なトパーズを産するのです。

バイア州のトパーズ (Topaz from Bahia)



   ミナス・ジェライス州の北に位置するバイア州もまた豊穣な金属や宝石の産地です。
 近年、バイア州産として魅惑的なコーヒー・ブラウン色の大きなトパーズが姿を見せるようになりました。
 かつてなかった色合いですが、これが天然の色か、あるいは放射線処理されたものか不明です。
 最近の ”Gems and Gemology” に因るとガンマ線照射で濃褐色のトパーズがあるが、その色は不安定で忽ち褪色するとのこと。
 写真のトパーズは3年後の現在も褪色の気配がありません。
23.49ct 18.8x17.8x10.0mm 28.07ct 22.8x16.8mm

北米のトパーズ (Topaz from North Americasa)

 北米には東海岸北部のメイン州周辺、西海岸、コロラド州のパイクス・ピークやアンテロ山、サンディエゴと多くのペグマタイトがあり、淡青色のトパーズを産します。
  さらにユタ州のトーマス・レンジ、トパーズ山の淡褐色の美しい結晶が標本として出回ります。が、いずれも宝石としてカットされることはまずありません。
 メキシコでは4ヶ所のトパーズ産地が知られています。
  が、宝石質のトパーズはサン・ルイス・ポトシから稀に採れるのみです。
 
2.55ct 10.6x6.3mm 1.26ct 5.5mm
1.45ct 1.43ct
San Luis Potosi,Mexico Topaz Valley, Utah

アジアのトパーズ (Topaz from Asia)

スリランカのトパーズ (Topaz from Srilanka)
  2.95ct 2.07ct, 2.64ct   2.89ct 9.5x8.0mm 11.54ct Ø15mm Ratnapura 13.39ct 14.8x11.8mm


 世界で有数の宝石産地のスリランカでは当然のことですが、トパーズは珍しい宝石ではありません。
 しかしながら、その大半は商品価値のない無色、淡褐色、淡青色なのでコレクター向けの珍しい二色の石、アクアマリンのような天然の淡青色、針鉄鉱入り等々以外は、宝石としてカットされることはありません。
 が、1970年頃から放射線照射と加熱処理によって魅力的な青い色に発色させることが可能になり、かつては捨てられていた大量の結晶が宝石用途に復活しました。
4.18ct 12.0x9.3mm 針鉄鉱入り(Geothite inclusion)
4.12ct 12.8x10.8mm 
Matale

その他の産地のトパーズ (Topaz from other localities)
3.24ct 0.96ct 2.99ct 13.1x6.1mm 205ct 36.5x31.2mm 1.14ct Ø6.3mm 17.9ct 20.1x9.3mm
Ghundhao Hill, Katlan, Pakistan Xilingol, nei-Mongolia 岐阜県苗木木積沢 Volodarsk-Volynski, Ukraina



 美しい宝石質のトパーズ結晶は世界各地で広範に発見されますが、宝石用途としてはブラジルのインペリアル・トパーズがほぼ全てを占めています。その他、時折発見される美しいトパーズが話題になるくらいです。
 その中で、1980年代初頭にパキスタンのカトランで発見されたピンクのトパーズと1990年代後半にウクライナのヴォロダルスクーヴォリンスキー・ペグマタイト鉱床から淡青と淡朱色の二色のトパーズとが稀に見る美しいトパーズでした。 
 いずれも、短い期間にわずかな量がカットされ、市場に姿を見せただけでした。
 モンゴルは近年、金、石炭、ウラン、レアアース等の地下資源が大きな関心を集めていますが、中国側の内モンゴルも、シベリアのバイカル湖東南部のネルチンスク・ペグマタイト地帯から連なるj豊穣な鉱物資源が古くから知られています。  長さが数mに達する緑柱石結晶や数十kgもあるトパーズ結晶が報告されています。
 写真の205カラットのトパーズもそうしたペグマタイト産です。
 20年余り昔に入手した時は淡い朱色でしたが、次第に淡青色に変色し、今では殆ど無色になってしまいました。
こうした変色や褪色はトパーズに良く起こることです。
 大切なトパーズの標本や宝飾品は、極力光を避けて保存しなければなりません。
 世界の各地と並んで、かつては日本はトパーズの世界的な産地として名を馳せていました。
明治時代の初期に岐阜県苗木周辺や滋賀県、田上山では数kgもの大きなトパーズ結晶を産したものです。
 アフリカのナイジェリア、モザンビーク、マダガスカル、ナミビア等も無色、淡青色のトパーズを産しますが、いずれも宝石としての価値が殆どありません。
 ヨーロッパも、ドイツ、スイス、オーストリア、イタリア、スペイン、ポルトガル、ウラル山脈の山岳地帯やペグマタイト鉱床、タングステンや錫鉱山等、広範な地域と産状とでトパーズが発見されますが、いずれも標本級が大半です。
 ウラル山脈からは19世紀ですが、濃いピンクや赤いトパーズが発見され、宝飾品や博物館級の結晶として見ることができます。 詳細はロシアのトパーズ等、他の展示を参照ください。
 
放射線と加熱処理されたトパーズ (Irradiated Topaz)

64.25ct 24x22mm  2.87ct(11.5x7.5mm) - 14.37ct(20x11mm) 12.81ct 16x14mm 9.53ct 15.9x12.2mm 180.15ct 43.6x31.6x20.5mm
 1970年代初め頃から最上級のアクアマリンのようなトパーズが、世界の宝石市場に登場しました。
すばらしく色の濃い、透明度が高く、煌きの強いアクアマリンを思わせる青いトパーズは、しかし、マルタ・ローチャやサンタ・マリアと呼ばれる最上級のアクアマリンと比べれば10分の1から100分の1の値段で市場にあふれ出したのです。
 それこそは、それまで商品価値がなく、破棄されていた無色のトパーズに原子炉や高エネルギー加速器等で放射線を照射し、その後に加熱処理をしたトパーズでした。
 元がただ同然のトパーズですから多少の手間をかけて処理しても極めて安価で市場に出すことが出来ます。
実は、天然も含め、トパーズの青い色が何に由来するのかは未だに解明されていません。
 しかし、こうして様々な手法で処理された青いトパーズの色は安定していて、天然のトパーズのようには褪色も変色も起こりません。 
 天然の青い色の宝石と比べて、処理されたトパーズの様々な青の色調と煌きは類の無い美しさです。
さらに100カラットを超える大きく無傷の石も手ごろな値段で入手可能ですから、様々なデザインのカットや加工が出来るので、宝飾品として多彩な用途が広がりました。
 現在ではすっかり宝石市場に定着して、廉価なセットやパッケージ品から、手作りの高級品にまで使われ、年間5億カラット(100トン)もの青いトパーズが市場に流通しています。
 原子炉等で処理されるため、包有物が放射能を帯びることがありますが、アメリカの原子力委員会が厳格な安全基準の下に管理していますから、安全性の危険はまずありません。

その他のコーティング処理トパーズ (Other treated Topaz)
各 1.24ct 10.65x4.1mm 4.72ct 9.9x9.8mm 2.02ct 9.1x7.0mm 8.3ct 12x10mm 9.4ct 14x12mm 2.1ct 8.9x7.0mm
 照射トパーズに続き、1990年末頃から鮮やかな色合いのトパーズが次々と市場に姿を現すようになりました。 
様々な名前がありますが、一般にはミスティック・トパーズと呼ばれています。
 これらの色合いは、無色、あるいは淡褐色のトパーズに、レンズや半導体等の最先端技術を応用した薄膜コーティングを施したものです。使われる金属の種類や薄膜の厚さにより如何なる色合いも出すことが可能です。 
 最先端技術の応用ですから、簡単に剥がれることもありません。
 この技術は、プラスティック、ガラス、水晶等々、何にでも応用可能ですが、やはりトパーズを使うことによって、宝石を身に着けているという満足感が、ガラスやプラスティックとは異なるのでしょう。
 手ごろな値段のアクセサリー向けに急速に普及し始めています。


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