日長石(Sunstone)

 

世界各地のサンストーン (Sunstones) 0.60 - 7.7ct

 
灰曹長石の日長石 (Oligoclase Sunstone) 曹灰長石(Labradorite)
サンストーン

2.71ct 13.6x8.7nn
中性長石の日長石(Andesine Sunstone)
7.7ct 16.2x12.2mm 2.36ct 10x8mm
7.84ct 18x11mm 3.34ct 12x8mm Congo
Southern India Tanzania Oregon, U.S.A. 実は内モンゴル産の淡黄色の中性長石に
人為的な銅の拡散処理をしたもの

 

   日長石(サンストーン)とは鉱物名ではなく、内部に赤鉄鉱や針鉄鉱の微細な薄片状結晶を含んで眩く輝くアヴェンチュリン効果を示す斜長石族の宝石の名称です。
 したがってアヴェンチュリン・フェルドスパー(斜長石)とも呼ばれます。
 一般に見かける日長石は灰曹長石(オリゴクレーズ)に微細な赤鉄鉱片を含むもので南インド産が代表的な産地です。不透明なため全てがカボション・カットされます。
 アヴェンチュリンとは,イタリア語の”ア・ラッヴェントゥーラ(a l'avventura ) : 偶然に”に由来する言葉です。
 かつてヴェネツィア、ムラノのガラス工場で銅箔を適当に混ぜて作ったガラスがきらきらと輝く効果から起こった名称です。
   ただし、アヴェンチュリンとだけ言えば,それは砂金石あるいはGold Stoneとも呼ばれる、雲母片や赤鉄鉱片を含む不透明な黄、褐色、赤や緑色の石英を指します。
 スペインのアルメリアやウラル山脈、中央アジアが有名な産地です。
 インドのマイソール、マドラス,ブラジルからはクロム白雲母(Fuchsite)を含む緑色のアヴェンチュリンを産します。
 更にガラスに銅粉を混入した人工の砂金石もアヴェンチュリン・ガラスあるいは単にアヴェンチュリン,あるいはGold Stone,時にはFire Agate(火瑪瑙)と称されることもあります。


 1980年代になると、 アメリカ、オレゴン州産の新種のサンストーンが登場してきました。 
  従来のサンストーンは灰曹長石に赤鉄鉱を含むものですが、新種のサンストーンは曹灰長石(ラブラドーライト)に銅の結晶片を含み、真紅から緑、多色のものと色合いが豊富でファセット・カットされる透明なものがあり、サンストーンのイメージを一新するものでした。 

  更に2002年春にコンゴ産と称する深い朱色の、まるでルビーのようなサンストーンが出現しました。
これは同じく銅片を含みますが、カルシウムとナトリウムとがほぼ同じ比率で含まれる中性長石(アンデシン)です。この種のサンストーンとしては異例の大きさの、最大で28.6カラットお真紅のルースが採れました。
 同様の中性長石のアンデシンは2003年に中国、更にモンゴル、チベットからも登場しましたが、後にこれらはコンゴ産も含め、全てモンゴル産の淡黄色のアンデシンに銅の微細な薄片を人為的に拡散処理させたものと判明しました。 

 実は日本の三宅島や八丈島の玄武岩溶岩中からも銅片を含んで赤い灰長石が発見され、稀に透明なものはファセット・カットされることがあります。



アメリカ・オレゴン州の曹灰長石(Labradorite)サンストーン
(Sun Stone from Oregon, U.S.A.)

Dust Devil Mine
 新たに採掘が始まった Sunstone Butte Mine
オレゴン州南東部のサンストーン産地

 

2色の原石 11.76ct 多色の原石 5cm 2.4ct 4.95ct 7.95ct 2.85ct
Ponderosa Mine Sunstone Butte Mine Sunstone Butte Mine Sunstone Butte Mine


多色のサンストーン オレゴン産??
5.4ct 16.9x10.2mm 6.79ct 22.3x9.0mm 2.71ct 13.6x8.1mm 1.93ct 8.4x7.0mm

 

1.8ct 9.6x7.5mm 0.6ct 7.2x6.1mm 普通の曹灰長石(ラブラドーライト)
6.47ct 19.0x8.8mm
5.4ct 15.2x10.0mm
Ex. F.Pough collection

Plush, Dust Devil 鉱山のサンストーン
ラブラドレッセンスを示すルース
32.9ct
フリーフォームのサンストーン・ルース 28.67ct ハチドリの彫刻のサンストーン
32.8ct

フリーフォーム彫刻のサンストーン  もっとも人気のある朱色
10.6mm

   アメリカで新種の曹灰長石(ラブラドーライト)サンストーンが最初に報告されたのは1917年のことでした。
 オレゴン州南部のPlush の南方33kmの地点で、一般にはPlush と呼ばれています。
100km余り離れたWhite Horse Ranchからも小規模な鉱床が発見されています。
 その後1937年、1966年、1972年、1983年、1985年と研究者による報告がありました。 
 しかし昔は産出が散発的で量も少なかったため、いずれも注目を浴びることはなく殆ど忘れられていました。
 オレゴン州のサンストーンが世界の注目を浴びたのは1980年夏、ポンデローサで国有林の伐採のための道路建設中に大規模な鉱床が発見されたためです。 
 直ちに重機による採掘が開始され、オレゴン・サンストーン,あるいはサンストーン・ラブラドーライトの名称で多彩な色合いのルースと宝飾品とが市場に登場するようになりました。
ポンデローサに続いて、その後110kmほど南の Plush の北30kmほどに Dust Devil 鉱山にも新たな鉱床が発見され、更にすぐ近くに Sunstone Butte 鉱山も開発され、美しいサンストーンが市場に姿を見せています。
 
 ”Dust Devil : 埃の悪魔 ” とは凄い名前の鉱山と思っていましたが、 ひょんなことから、塵旋風 : つむじ風 ” のことと分かりました。 写真を見ると、暑い夏にはつむじ風が吹き荒れそうな荒野ではあります。

 
オレゴン州のサンストーンの産状と特徴

   オレゴン州南部は広大な範囲にわたっておよそ1200万年から2300万年昔、新第三紀半ばに続いた盾状火山噴火による玄武岩溶岩と火山灰とに覆われています。
 火山灰と溶岩流の厚さは15m〜100mに及びますが、一帯は深い針葉樹林に覆われています。主な鉱床は幅130m,長さ700m,深さ7mほどの大きさです。
 ブルドーザー等の重機で風化した玄武岩を掘り起こし、砕かれた母岩から結晶片が取り出されます。
全体で50万トンの母岩におよそ200トンの宝石質結晶が含まれていると推定されています。
 冬の降雪のため採掘は春から秋にかけて6ヶ月程で、年間で平均100万カラット相当の宝石質結晶が採掘されています。 
 歩留まりは大体10kgの結晶片のうちおよそ10%が宝石質ですが、85%は無色か淡い色合いです。
 濃い緑色は極めて稀で、あっても殆どが1カラット以下の小さなルースが年に20個ほど採れるのみです。
 平均すると年間100万カラット採れる宝石質結晶片のうちファセット級のラフは5%の5万カラットに過ぎません。
 最終的なルースはその15%の7500カラットに止まり、その75%が1カラット以下のルースです。
 因みに1990年代末に本格的な重機による採掘が始まったPlushのDust Devil鉱山の生産量は年間25万カラット相当です。
 Plush産は比較的銅の薄片の量が多いため赤みを帯びているものが多く,また結晶も大きいため多色性を活かしたフリーフォームの彫刻やルースが多く見られるます。
 赤の発色は銅片による光の吸収と反射によるものですが、緑は微小なコロイド状の銅片が結晶格子間に分布しているために起こる電荷移動によって起こる光の吸収と考えられています。
 オレゴン産のサンストーンに含まれる銅の薄片は一般には直径が0.05mmと、肉眼では見えないほどの微小な大きさなので普通は光の反射、吸収による赤や緑の色しか見えないものが大半です。
 が、中には辛うじて薄片が見える大きさのものもないわけではなく、アヴェンチュレッセンスが顕著な石も見かけられます。
 最近オレゴン産と称するタンザニア産のような大きな銅の薄片が見えるものが市場に登場しました。
写真の1.93カラットのルースです。 正式な情報がなく、これが本当にオレゴン産か否か確信はありません。が、否定する情報もありません。とりあえず紹介して、今後の新たな展開を待つのみです。


オレゴン州のサンストーンの市場価格 

 従来のサンストーンとは異なり,透明で美しい色合いや多色性のために、長石族の宝石の中では市場で最も高い評価を受けています。
 とはいえポンデローサ鉱山産の95%は不透明なカボション級ですから、色合いによりますがカラット当たり2ドルから200ドル程度です。 透明なファセットのルースはカボションよりはかなり高くなります。
 ただし個々のルースの大きさ、色合い,多色性により30ドルから500ドルまでまちまちです。
 稀な緑や濃い赤と緑の2色のルースは余りにも数が少なく、カラット当たりの相場はなく、個々のルース毎に値段がつけられます。

中性長石(Andesine)のサンストーン
"Lavanite" サンストーン
0.65ct 6.8mm
2.36ct 10x6mm 1.12ct 8x6mm 3.18ct 10.1x8.7mm
Inner-Mongolia
実は全て内モンゴル産の淡黄色の中性長石に人為的な銅の拡散処理を施したもの
Aritificially copper diffusion treated andesines
(original color is pale yellow only) from
Inner-Mongolia
銅箔片の混入 30x

 
中性長石(Andesine)50mm
Bodenmais, Germany
銅片を含み赤い灰長石 37mm
(Anorthite with copper inclusion)
八丈島 石積ヶ鼻 Hachijojima, Japan
灰長石 (Anorthite) 10-50mm         37x21x13mm
北海道倶多楽湖外輪山崩落斜面( Kuttara Lake, Hokkaido)


 2002年、ルビーの真紅、或いはトルマリンの濃い緑色等を偲ばせる均一な色合いのサンストーンが世界の宝石市場に登場しました。
 銅の薄片による発色の中性長石(アンデシン)サンストーンです。
 コンゴのニイラゴンゴ火山の崩落斜面から採集されたが、300カラットのみが宝石としてカットされて絶産となってしまった、との触れ込みでカラット当り数万円から最上のものは10万円を越える高値で取引されました。
 中性長石は他の斜長石と同様、多くの岩石に細粒として含まれる最も一般的な造岩鉱物です。
しかし大きな結晶で発見されることは少なく、鉱物フェアで単独の標本を見かけることは稀です。
 鉱物図鑑等にも斜長石族の一種、とのみ短い記述があるくらいの地味な扱いでした。
 2002年に、このように普遍的に存在するものの、結晶標本さえ稀な鉱物が、際立って美しい宝石として発見されたというニュースは驚きでした。
 オレゴン産には稀な、透明度が高く、均一に発色した真紅や緑のルースがコンゴ産には普通に見られます。
 測定により、比重が2.67、屈折率が1.551〜1.560と、オレゴン産のそれぞれ2.67〜2.72、1.563〜572と比べるとやや小さな価を示し、灰長石成分比がやや50%を下回る中性長石に属することが判明しました。
 市場では鉱物名と同じAndesineが使われていますが、宝石としてはサンストーンに属します。

 300カラット程が得られただけで絶産となってしまったとのことでしたが、ルースは市場に途絶えることなく供給されアメリカではTVショッピングで量販される程。
 冒頭の写真の7.7ctのルビーのような真紅のルースも御徒町の宝石店で見かけて入手したもの。稀産の宝石ルースとしては異例の大きさのインクルージョンは皆無、カット,プロポーション共に完璧なルースです。
 コンゴのサンストーンはルワンダとの国境沿いのニイラゴンゴ火山南西斜面の崩落岩中に発見されるとのことです。となると300カラットだけで絶産となったという情報は信用できません。溶岩の崩落鉱床なら広範かつ大量に発見される可能性が大きいからです。
 写真の北海道、倶多楽湖産の灰長石は私が30分足らずで容易に採集したものです。同様の産状の中性長石も宝石質でなければ簡単、かつ大量に採集できるはずです。
 またルースはふんだんに市場に出回りましたが、何故か原石や結晶標本を見かける機会は皆無でありました。
 2003年に場所等の詳細は不明ですが,全く同じ、銅片で赤く発色する中性長石のサンストーンが中国から登場してきました。また品質等の詳細は不明ですが2004年にはチベットにも同様のサンストーンが発見されたと言う情報があります。更に2004年9月にネット市場に突然モンゴル産のサンストーンが現れました。
産地や産状等の詳細は全く不明ですが、恐らく中性長石に銅片を含むものと思われます。 
 ひょっとするとモンゴル産といっても実際の産地は内モンゴルで前述の中国産とは同じ産地である可能性があります。

 
コンゴ、中国、チベット産サンストーンの本当の産地と発色の素性

 
しかし2005年ごろから、これらの新たな中性長石のサンストーンの産地と発色の素性について、実は内モンゴル産の中性長石に拡散処理をしたものという噂が業界に広がり始めました。
 日本の全宝協、日独宝石協会、アメリカのGIA等の専門家が共同で内モンゴル、中国、チベットの産地を訪れ、入手した原石とカットされたルースの詳細な分析の結果、以下の事実が明らかになりました ;

内モンゴルの漂砂鉱床から大量に採れる水磨礫はサンストーンではなく淡黄色の中性長石のみ。 これらは銅の拡散処理により透明な赤いサンストーンに変貌する。ただし理想の色合いを得るには処理に3ヶ月もかかりコストが高い。
天然のサンストーンも実は溶岩中で銅が拡散されたものなので、人為的な処理品との識別は不可能
 チベットの産地からは確かに赤いサンストーンの原石が発見される。が、分析の結果、3000km以上も離れた内モンゴル産の中性長石と組成と特性とが余りにも近似している。
 拡散処理された内モンゴル産の原石をチベットの産地と称する原野にばら撒いた可能性を否定できない
 コンゴ産と称するサンストーンは火山の崩落斜面から大量に発見されるはずの結晶標本が存在しない。
 分析の結果は内モンゴル産と同じ成分組成と判明したが、アジアとアフリカと、全く別の火山起源の斜長石が同一の組成を持つことはあり得ない。
 銅の拡散技術は中国人の研究者が開発したが、詳細な研究ノートが盗まれ、技術が流出した。 現在、拡散処理は中国ではなく、タイで行われている。

 と、チベット産については、更なる分析と研究とが行われています。
が、新たに登場したアンデシン・サンストーンはコンゴ産と称するものも含め、ほぼ全てが内モンゴル産の淡黄色の中性長石(アンデシン)に中国で開発された銅片の拡散処理を施したものを、中国やチベットの新産地と称する土地にばら撒いたものと思われます。
 コンゴのニイラゴンゴ火山は、炭酸ナトリウム型の極めて特異な溶岩を噴出するタイプの火山なので、その溶岩中に斜長石が結晶する可能性は殆ど考えられません。
 美しいサンストーンを造り出す拡散処理技術が開発されたとほぼ同じ時期に、偶々噴火し、大きな災害をもたらした火山の名を利用してだけと思われます。
 カラット当たり数万円から10万円も払った方々には、全くお気の毒としか言いようがありません。
 しかしながら、人為的な拡散処理がされたとは言え、全くの贋物と言うわけではなく、天然には極めて稀な美しいサンストーンであることには違いありません。
 


タンザニアとイェメンの灰曹長石(オリゴクレーズ)サンストーン

 

20.81ct
Engare, Naibor, Tanzania
3.34ct 12x8mm
Longido, Tanzania
1.63ct 9.6x6.6mm
Yemen
 
 2002年にタンザニアのArushaの町の北方、ケニア国境近くの Engare Naibor の村から赤鉄鉱片
により虹色に輝くサンストーンが発見されました。
 数平方kmに広がるドロマイトの層の深さ4〜5mに雲母片岩と共に発見されます。
 母岩は比重2.64,屈折率が1.537−547の灰曹長石で、赤鉄鉱片を含む典型的なサンストーンですが、
透明な母体と,虹色に輝く赤鉄鉱片を含むのが特徴です。
写真のようにファセット・カット出来る透明なものと、カボション級の品質のものとが採れますが、
辺鄙な場所で,継続的な採掘は行われていません。
 平均で10カラットを越える大きさで、大きなものでは125ctものルースを産します。
 詳細な産地は不明ですが、ほぼタンザニア産と同じ透明な赤鉄鉱を含むサンストーンがイェメンからも」登場しました。

サイモフェーンを示すサンストーン


微斜長石(マイクロクライン)スター・サンストーン  12.24ct
右は赤鉄鉱結晶片の拡大写真 35x 
Tanzania
キャッツアイ・サンストーン
 1.65ct  2.39ct
Madras近郊 Tamir Nadu India
 
金属の結晶片を含むサンストーンですからスターやキャッツアイ効果を示すサイモフェーン型が多くありそうですが、これが意外とありません。
 恐らく結晶片のインクルージョンが多すぎて光があらゆる方向に乱反射するためでしょう。
 スターやキャッツ・アイ効果が出るためには、インクルージョンとして含まれる結晶片が母体の結晶の結晶軸に沿って整然と並ぶ必要があります。
 とはいえ大量に採れるサンストーンですからサイモフェーンを示すものがあっても不思議ではありません。
 2003年頃に市場に現れたタンザニア産のサンストーンは分析の結果では殆どカルシウムを含まないカリ長石です。 十字に交叉するスターは、しかし完全に直角ではなく僅かに傾いています。
 したがって正長石ではなく赤鉄鉱の針状結晶と平板状の結晶を含む微斜長石のサンストーンと言えるでしょう。
 南インド産のサンストーンはオリゴクレース(灰曹長石)に赤鉄鉱の結晶片が含まれる種類です。

サンストーンの名称論争

 かつて南インド産の灰曹長石に赤鉄鉱を含む不透明なサンストーンが市場の主流であった時代には問題はありませんでした。
 が、近年、透明な曹灰長石(ラブラドーライト)や中性長石(アンデサイト)を母体とし更に自然銅結晶の薄片を含む新種の宝石が出現して同様にサンストーンと呼ばれるようになり、混乱を避けるために新たな名称の提案があり議論が沸騰しました。

 名称論争を持ち出したのは、例によってスイスの著名な宝石学者 E.Gübelinでした。
 オレゴン産の通称 Sunstone Labradorite は、サンストーンは曹長石(オリゴクレーズ)に赤鉄鉱片を含む宝石の名称であって曹灰長石(ラブラドーライト)をサンストーンと呼ぶのは明らかに間違っていると槍玉に挙げました。
 そして新種のサンストーンには、アメリカ鉱物学会の重鎮、ポー(F.Pough)博士が ”Lapidary Journal 誌 1989 Winter号の連載 Mineral Notes”で提唱したように、古く(1811年)からあったが余り一般的ではなかった”Heliolite(ヘリオライト):helios : 太陽と lithos:石、つまりサンストーンのギリシア語の呼び名”が相応しいと提案しました。

 これに対して当時の G&G誌の編集長であった R.Liddicoatは、個人的には提案はもっとも思うが、宝石名を科学的に定義するのが G&G誌 の役割と言うわけではない。一般的に広く通用している名称を使っただけと反論しています。
 Shipley 博士が“宝石と宝石学辞典”で、サンストーンとは ”曹長石(あるいはその他の斜長石)”と定義してあるから、斜長石族のアヴェンチュリン効果を示す宝石をサンストーン以外の名で呼ぶ必要はないと反論しています。


こうしたやり取りに対して,早速次の冬号で賛否両論が巻き起こりました。


 カリフォルニアの宝石学者W.Wm.Hannemanは、妙な宝石名を乱発しているアメリカの宝石業界に対しては、世界の宝石学の指導的な立場にあるアメリカの G&G誌が宝石名の定義にも責任を持って指導力を発揮すべきであるとギューベリン提案を支持しています。


 またコロラド在住の宝石学者、D.B.Hoover は Heliolite が古くから灰曹長石(オリゴクレーズ)サンストーンの同義語として使われていたことをポルトガル語,ロシア語の例を引き合いに出し,更にポー博士やロシアの鉱物学者フェルスマン等のヘリオライトの使用例を厳密に解釈した上で、ヘリオライトをオレゴン産の新しいサンストーンに用いることはかえって混乱を招くとしています。
 

 ポンデローサ鉱山の持ち主であり、Sunstone Labradorite あるいは Oregon Sunstone の名称を一般化し、”G&G誌 1991 Winter”にて鉱山とサンストーンについて詳細なレポートを掲載した C.L.Johnston からは Heliolite の提案に対して次のような反論がありました ; 新種の鉱物名の決定権を持つのは IMA (International Mineralogical Association : 国際鉱物学連合)でありここで決まった名称が唯一正式なものだ。
 しかし宝石についてはIMAの関知する所ではない。 宝石の変種の名前は最終的には科学的な根拠が絶対条件ではなく、一般消費者も含む市場での分かり易さも念頭に置いた命名こそが重要な要素なのだ。
 オレゴン・サンストーン,あるいはサンストーン・ラブラドーライトの名称は、斜長石族の一つであることを示すと同時に他の産地にはない全く新しい種類の宝石の産地の名称と特徴とを端的に示唆するものだ。
 しかも私はパートナーと共に既に250万カラットもの原石を採掘し、研磨して市場に送り込み、これまでは全く市場価値の低かったサンストーンの地位を飛躍的に高めるべく努力して来た本人なのだ。
 そうした努力に関わらなかった他人によって、いまさら見当違いの名前を押しつけられたところで我々はオレゴン・サンストーンの名前を未来永劫使い続けるのみである。

 いずれの議論も,ごもっともと言うしかありません。大切なことは名前の白黒をつけることではなく、こうした議論を交わすことで、正しい認識が広がることです。 オレゴン・サンストーンとは簡潔で良い呼び名だと,私は思います。