新着宝石展示室
(New Gemstone Gallery


March 2011 : 螢石 (Fluorites)

螢石 (Fluorites ) 1.36 - 29.79ct

ベルギーの螢石(Belgic fluorite)

 ごく稀ではありますが時折ベルギー産の紫色の螢石を見かけます。
何処で宝石質の螢石が採れるのか調べてみました : ベルギー南部のフランス国境に近いシャルルロワ近郊から南東のアルデンヌ高原のロシュフォールに至る 50km 程の間に 10ヶ 所の石灰岩と大理石の採石所があり、いずれも紫色の螢石が採れるようです。
 私が入手したベルギー産の螢石ルースはこれが2個目でした。
 残念ながら震度 6 を記録した今回の地震でルースや結晶が引き出しやキャビネットから床に投げ出され、とりわけ螢石のルースの多くは大きな損傷を受けました。
 写真の素晴らしく透明度の高い薄紫色のルースは下のイリノイ産の紫色のルースと共に原型を留めないほどの細かな破片と成り果てました。
 幸いなことに、この写真が貴重な記録として残りました。
29.79ct 18.6x15.0mm

イリノイの螢石 (Illinois fluorite)


 アメリカ・イリノイ州最南部のハーディン郡から隣のケンタッキー州に至る一帯は世界で有数の螢石の産地でありました。
 石灰岩の接触変成鉱床に鉛や亜鉛の鉱石と共に採掘された何千万トンもの螢石の大半は製鉄用の材料として溶鉱炉に投げ込まれましたが、紫、青、黄色、無色の螢石の美晶は世界中の博物館や鉱物収集家の手に残されました。
 このルースは、最も美しい結晶を多産したミネルヴァ鉱山産でしたが、上述のように地震で跡形も無く砕け散りました。
 今となっては写真で端整な姿を偲ぶのみです。

23.33ct 23.0x17.3mm
Minerva Mine, Cave in Rock, Hardin Co., Illinois

イギリス・ロジャリーの螢石 (Fluorites of Rogerley, Northern England)


Frazer's Hush Mine Area, Weardale, Northern England ロジャーリー鉱山坑口(Portal to Rogerly Mine)

通常光(Daylight 紫外線下での蛍光(Fluorescence under Ultraviolet light) 通常光(Daylight
1.36ct 7.1x6.0mm 25.07ct 18.7x18.7mm
  イギリス東海岸中央部、北イングランドのニューカッスルから南西へ40km程行ったウェア川沿いのウェアデール地方は恐らくローマ時代から鉛や亜鉛、鉄鉱石に伴う螢石の産地として知られ、近郊で豊富に採掘される石炭と相まって、イギリスの近代鉄鋼産業を支えたものでした。
 ウェアデール地方には 20km 四方の狭い地域の中だけでも 40 余りの鉱山がひしめき、鉄や鉛、亜鉛の鉱石と共に産出する螢石の美しい結晶は鉱夫たちの重要な副収入源として鉱物収集家に販売されました。
 この地方の螢石は素晴らしい蛍光を発することでも知られています。中でもロジャリー鉱山産の螢石は太陽光下でもその紫外線により魅惑的な青い蛍光色を発します。

      

       ナミビア・エロンゴ山の螢石 (Fluorite of Erongo Mtn., Namibia)

12.13ct 14.8x14.8mm エロンゴ山ペグマタイトの採掘
(Granite pegmatite of Erongo Mtns)
左 長石上の6・8面体螢石結晶 6cm 右 6・8面体螢石結晶 
left (Cuboctahedral fluorite on orthoclase) 4.4cm
right (Cluster of fluorite with modified by {111} octahedral faces)
 緑色の螢石は決して珍しくはありませんが、エメラルドのような輝かしい色合いを見せる螢石となると世界的には産地が限られます。
 インドのビハール州、コロンビアのペーニャス・ブランカス・エメラルド鉱山、アメリカ・ニュー・ハンプシャー州のワイズ鉱山、南アフリカ・北ケープ州のナミビア国境沿いの Riemvasmaak ペグマタイトと、ナミビアのエロンゴ山のペグマタイト鉱床が代表的な産地です。
 エロンゴ山の螢石は6面体と8面体との組み合わせの結晶形で産出します。
ペグマタイト産なので他の金属鉱山と比べると産出量は極めて少なく貴重な存在です。
 一般に緑の螢石は希元素のサマリウム (Sm2+) による発色ですが、輝かしいエメラルド・グリーンの場合はイットリウム (Y) とごく微量のセリウム (Ce) によるカラーセンターが関与した非常に稀な発色例と考えられています。
* 冒頭の写真の右端の2点も同様に今回の地震で大きく破損しました。

詳細は2月11日の新着展示にて説明があります。
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