新着宝石展示室
(New Gemstone Gallery)



2016 June : 正体不明の宝石 (Old-fashioned gemstones)



 
  正体不明の宝石 1.21 - 12.08ct


 最近のことですが、ネット市場に正体不明の宝石ルースがまとまってただ同然の値段で出品されている例をよく見かけるようになりました。
 宝石については全くの素人の出品者なのは明らかで写真の質が悪く、宝石の素性が明らかではなく、天然、合成、イミテーションもあるとの断り付きのいわくありげな出品ですが、正体を確かめるために落札してみました。
 冒頭の写真は2件分の落札品ですが、応札者もいましたが、正体不明の宝石ルースを高値で競り合うような展開にはならず、落札価格は合計で1000円にもなりません。

 早速調べてみて、下記のごとく、その正体が判明しました ;
 

水晶 (Quartz)

   
 12.08ct Ø12.08ct  9.43ct 16.1x10.0mm
   
 予想してはいましたが、この2点はいずれも水晶でした。
写真では透明なルースの写真には避けられない影が映っていますが、実物は肉眼では無色透明です。
 12.08カラットのルースは古風なスタイルの丁寧なカットが施されています。
9.43カラットのルースは底面がカボションで、テーブル面がやや盛り上がり、中心から周囲に12面の放射状の面が浅い角度で広がるという珍しいカットが施されています。
 水晶を指輪用に加工するというというのは半世紀以上も昔のことですが、敗戦後の貧しい日本では輸入品の宝石など夢のまた夢という時代でしたから、恐らくは国産の水晶を、日本の職人が丹精込めてカットしたものだろうと考えられます。


エメラダ(合成スピネル)


       これも予想した通り、ニッケル着色でミントグリーンの合成スピネルです。
 半世紀以上昔、日本市場にエメラルドのイミテーションで、エメラダの名で時計店等によく展示されていたものです。
 本物のエメラルドなど夢のまた夢の時代でしたから、こんな代用品でも金の指輪にセットして数千円と、当時のサラリーマンの給料の半月分に相当する値段で売られていたものです。
 相当使い込まれたのでしょう、キュレットやガードル面等にぶつけて欠けた傷などが見かけられます。
   6.41ct 16.0x8.2mm  


火炎溶融法合成ピンクサファイア (Flame Fusion Synthetic Pink Sapphire)

   
    9.38ct Ø13.25mm   
 これも予想した通り、火炎溶融法の合成ピンク・サファイアでした。
左の写真の右下、ガードルに近いテーブル面近くの表面に並行してかなり大きなインクルージョンが認められます。
 肉眼では分かりにくいのですが、火炎溶融法で、このような天然の宝石に見られるようなインクルージョンが認められるのは珍しいことです。
 これも半世紀以上昔、宝飾品として結構な値段で売られていたものでしょう。
インクルージョンこそありますが、しかし写真から分かるように背面に数十面のラジアン・カットと呼ばれる放射状の面をつける、素晴らしく手間をかけたカットが施されています。
 テーブル面も完璧なバランスのとれた高い技術でカットされていて、これが熟練された職人の手になる仕事であることが一目瞭然。


キュービック・ジルコニア(Cubic Zirconia)

      これは調べるまでもなく一見して強い光の拡散からキュービック・ジルコニアと分かります。  
 6.01ct 10.2x9.4mm      


ペリドット (Peridot)

   今回入手した中ではこれが唯一の天然の宝石。

 1.21ct 6.7mm  



 こうした正体不明のルースがまとまってネット市場に登場する理由は、最近の金価格の高騰のためと思われます。
 身に着ける機会がなく、箪笥の中に眠っていた宝飾品が金の買い取り業者のもとに持ち込まれて、貴金属だけが溶かされ、今や全く商品価値のない水晶や合成品、ただ同然のキュービック・ジルコニア、ペリドット等々のルースがまとめてバッタやに卸され、ネット市場に流れるようになったのでしょう。
 
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