新着宝石展示室
(New Gemstone Gallery)


August 2018 : 蛍石(Fluorites)

 
 蛍石(Fluorites) 2.34 - 10.68ct

インド、ビハール州の蛍石 (Fluorites from Bihar, India)
    インドの北東部、お釈迦様の生まれたブッダガヤがあるビハール州 産のエメラルドグリーンの蛍石。
 Gems & Gemology 誌 2007 Spring に紹介されて以来ずっと探して来て、ようやく出会った蛍石です。
 緑色の蛍石はありふれていますが、エメラルドグリーンは稀な存在です。 コロンビアのエメラルド鉱山、ナミビアのエロンゴ山等、世界で稀にしか発見されません。
 コロンビア産は二価のサマリウムのカラーセンターに因る発色ですが、ビハール産は詳細な分析の結果、イットリウムとごく微量のセリウムとのカラー・センターと解明されました。 この発色の仕組みは極めて稀にしか報告されていないとのこと。
 ビハール州産の宝石に出会うのはこれが初めてです。
 詳細な産地情報はありませんが、高校時代の地理の教科書を見ると、南のオリッサ州との州境付近に鉄、銅、クロム、ボーキサイト等の鉱山があり、この辺りで発見されたものと思われます。
 8.39ct 14.9x11.4x7.1mm  10.68ct 15.7x11.8x9.00mm  
 Bihar, India  


ヴェトナムの蛍石 (Fluorite from Vietnam)
      南北に細長い全土の14ヶ所にルビー、サファイア、スピネル、トルマリン、アクアマリン、ガーネット、紫水晶、ペリドット,等々、高品質の宝石が発見され、今や世界で有数の宝石産地となったヴェトナムですが、蛍石は初めてです。
 しかも非常に美しく、包有物のない、透明度の高い蛍石です。
 これは希少な宝石の優秀なカットを専門に集めていたコレクターの放出品です。
ルースから鉱物結晶収集に方針変更をしたとのこと、貴重なコレクションを有難く譲り受けました。
 ヴェトナム産の蛍石については、G&G誌にも全く報告がありませんから、詳細な産状も発色の分析も不明ですが、この色合いは、前述のインドのビハール州産と少し似た傾向を示します。
 G&G Summer 1988 の全宝石の発色の仕組みの特集号によると、蛍石の青の発色は三価のイットリウムと弗素の脱落による2個の電子との相互作用によると、1978年に解明されました。  
 
 2.34ct 7.9x7.9x4.8mm
Luc Yen, Vietnam

写真について

 宝石の写真は、何よりも自然光下で肉眼で見える色合いを忠実に再現することが大切です。
しかし、微妙な色合いを忠実に再現することは簡単ではありません。
 とりわけ、クロムによる発色のルビー、エメラルドとアレクサンドライトの色の再現は困難で、このホームページを始めた20年ほど昔のカメラとモニターの性能では、如何に色加工ソフトを駆使したところで、いずれも、どんよりと灰色がかかった、実物とは似ても似つかない色にしかならず、アップロードを断念せざるを得ないほどでした。
 カメラとモニターの驚異的な性能の向上により、最近でこそ、どんな色の宝石でも、何とか様になる色合いの再現ができるようになりましたが、今回の、特にビハール州産の蛍石の色には、久しぶりに往生させられました。 何しろ肉眼で見た色がまるで再現できない。
 この数年、殆どの宝石の撮影に使用しているのは富士フィルムのコンパクト・デジタルカメラ、Finepix HS30です。
扱いが簡単で、ほぼ全ての写真をオートで撮影し、色加工ソフトは最小限のコントラスト調整のみで、肉眼で見た色合いを忠実に再現できます。
 しかしながら、今回の蛍石の色の再現は、20年前のルビー、エメラルドとアレクサンドライト並みに七転八倒しました。
結局、取扱説明書を読み直して、EXRという、画像エンジンの、ダイナミック・レンジを16倍まで拡大出来る機能を活用して撮影し、色加工ソフトで処理して、ようやくほぼ肉眼で見たのと同等の、輝かしいエメラルドグリーンの色合いを再現できました。
 昔のカメラによるクロム発色の弱点は人間の眼のダイナミックレンジと比較して、格段に非力であったことなのだと、今更ながら気づきました。

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