菱苦土石(Magnesite)

 

マグネサイト 10.7x7.5mm 3ct マグネサイトの宝石質結晶
劈開片 22x12mm
Brumado Brasil
灰電気石の中の菱苦土石結晶 12x10mm
Brumado,Bahia Brasil

 

化学組成 MgCO
結晶系 三方晶系
モース硬度 3 1/2- 4 1/2
比重 3.0−2
屈折率 1.51−71

 

 無色透明な鉱物は,類似の仲間が多く、肉眼ではもちろん、比重や屈折率などの特性を調べても正確な鉱物名を判断するのは難しいものです。  
 しかし,きれいな結晶であれば、たとえ同じ結晶系の鉱物であっても、様々な特徴から、鉱物名や、場合によっては産地までも特定することが出来る場合があります。
 ところが、カットされた無色透明のルースとなると識別はさらに困難となり、まして産地を判別するのは不可能と言っても良いでしょう。
 しかし,唯一の例外がマグネサイトとなのです。 
その名の通り、主要なマグネシウム資源であり,世界中で大量に産する鉱物ですが、時にファセット・カットが可能な美しく大きな結晶を産するのは世界でブラジル,バイア州のブルマード鉱山が唯一の存在といっても過言ではありません。
 従って、冒頭の写真のルースも、産地表示がなく、単にマグネサイトとして売られていたものですが、これがブルマード産であることはほぼ間違いありません。
 マグネサイトのようなありふれた鉱物で美しい結晶が皆無に近いというのは鉱物界の七不思議と言えるかもしれません。
 実は私自身もカットされたルースを入手するまではマグネサイトには全く関心も無かったと白状しましょう。 一般には白い塊状で産出するのみですから、鉱物としては全く面白みがありません。
 ルースを入手したからには結晶をも、と探し始めましたが、何と丸1年、ありとあらゆる機会に丹念に探して、結局見つかったのは,冒頭右の写真のように5mm足らずの結晶でした。
 これはもしやと思って,ブルマード産の灰電気石をひっくり返して,その裏側に見つけたものです。 
 改めてマグネサイト結晶が如何に稀少な物かを痛感した次第です。

灰電気石結晶 6x4cm マグネサイト結晶 4cm
Brumado Brazil
John Lucking Collection
 この灰電気石 (Uvite) の表側には水晶の結晶が一面についていて,もちろんこちらが表で展示してありました。 一般には、この灰電気石と水晶の取り合わせの方が遥かに人気があるからでしょう。 
 結局、宝石のルースより、小さな結晶のほうが倍も高かったという本末転倒な事になってしまいました。
 もっとも、稀少な宝石の場合良くあることで、結晶を入手出来ただけでも幸運でありました。
 右の結晶は大変稀なる宝石級のマグネサイト結晶です。
 後にかなり大きな宝石質結晶を入手しました。 冒頭の中央の写真がそれです。
方解石と同じマッチ箱を押しつぶしたようなきれいな劈開の様子が良く分かります。
 カットすれば20カラット程度のルースが取れると思いますが、しかし宝石質の大きく透明な結晶は十分美しい上に、価値もルースにするよりよりは結晶のままの方がずっと高いのです。
 ブルマードの鉱床にマグネサイトの美しい結晶が発見される理由は次のように考えられています ; 
 恐らくこの地のマグネサイト鉱脈が多量の熱水による変成作用を二度に渡って受け、溶融した炭酸マグネシウムの層の中にポケット(晶洞)が形成され、その自由な空間の中に20cmものマグネサイトや灰電気石、緑柱石,トパーズ,ウラン鉱物等の多様な結晶が成長したと推定されるとのことです。
 しかし,数多く発見されるポケットには,何故かそれぞれ異なる住民(鉱物結晶)が納まっているという、まことに奇妙な鉱脈なのだそうです。
 アメリカ,ワシントンDCにあるスミソニアン博物館群の一つに自然史博物館があります。
その宝石ホールのコレクションは世界でも屈指のもので、ここに 134.5 カラットものマグネサイトのルースが展示してあるとのことです。
 私は何度も行きましたが,ついぞマグネサイトのルースには気がつきませんでした。 
何しろホープのダイアモンドを初め、何百カラットものダイアモンド、インドのマハラジャのエメラルドやらと、目を奪われるような逸品が盛り沢山ですから、地味なマグネサイトなど見落としてしまったのでしょう。
 いったいどんなルースなのか、次回は必見と、密かに期待しています。

 

 

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