ピエガ(Piega) C-3

           
 Piega C3Ltd Piega C-3   Piega C8Ltd

 発売年度   H D  Weight
 2002~2005年    90cm   22cm    32cm   25kgs 

   スイスのピエガ社のスピーカーが日本に登場したのは2000年代初めのことだった。
写真で見る、細身のアルミニウム仕上げでイタリアのソーヌス・ファベールのスピーカーと同じ、水滴型のキャビネットを持つ美しいデザインが印象に残ったものの、値段が200万円ともなると、入手して聴いてみようという思いすら起きない水準だった。
 しかしながら、オーディオ誌にはピエガの新製品が次々と紹介され、売れそうもない値段の割りにはやたらとラインアップを揃えるブランドという感想を抱いたものだ。
 このスピーカーを入手しようと思い立ったのは、他でもない、本社と工場の存在地がスイスのホルゲン(Horgen)と分かってからのことだった。
 ホルゲンはスイスのチューリッヒ湖の西岸をチューリッヒから20㎞程南下した湖岸の小さな町だ。
実は、1980~1981年の2年間、ホルゲンの小さな町を100回ほど通った思い出があった。
 当時、ホルゲンから20㎞程南西にあるツーク(Zug)という町で働いていた。働いていたといっても、ツークには汎欧州オペレーションの本部があるだけで、実際の仕事は欧州各国の代理店を毎週のように訪問していたが、ツークからチューリッヒの飛行場への道すがら、ホルゲンの町を通っていたのでした。
 高速道路を通るより時間のかかる遠回りを選んでいたのは、風光明媚なチューリッヒ湖岸のドライブが快適だったからに他ならない。
 行きは朝の太陽に光る湖と緑滴る周囲の丘を、帰りはその丘に並ぶ住宅の光でクリスマスツリーのような夜景を楽しみに走ったものだ。
 ピエガ社の設立はその後の1986年で、当時はホルゲンにスピーカー・メーカーが誕生するとは思いもよらなかったが、それと分かった以上はこの美しいデザインのスピーカーどんな音を奏でるのか俄然聴いてみたいと思った次第。
 5年ほど待ってようやく2013年末のネット市場に姿を見せたのが冒頭の写真のC-3だった。
 当時オーディオ誌には高級モデルのC-3Ltd(124万円)とC-8Ltd(198万円)とが紹介されていて、C-3というモデルは同じシリーズのモデルとして輸入販売されていたのが、値段もスペックも一切不明だった。
 スイスでの市販価格がペアで6000スイスフランであったから、上級機との比較で日本での定価はおそらく 70~80 万円程度と思われるが、紹介すらされないモデルであったから、殆ど売れなかっただろう。その後ネット市場に二度と姿を見せることはない。
 上級モデルはリボン・ツィーターが超高音と高音との同軸 2-ウェイで中低音のスピーカー・ユニットがアルミニウム振動版となっている。
 キャビネットの16層の木の積層に外装のみアルミニウム仕上げは全ラインアップに共通の仕上げだ。
 ピエガのリボン・ツィーターの驚異的な性能は、既に紹介済みのソーヌス・ファベールに詳しく紹介しているので参照ください。現存するスピーカーの中では最も優れたツィーターと言っても過言ではない。
 ところが、その高音を支えるアルミニウムの中低音ユニットがどうも問題らしかった。
既にオーディオ販売店が次々と姿を消してしまって中で、100万円超の高級スピーカーを店頭で聴く機会は全くなく、オーディオ誌に取り上げられた試聴記が唯一の参考なのだが、それがあまり芳しくなかった。
 専門家の意見はあくまでも参考なのだが、しかしいずれも高音と比べて、中低音にいささか違和感があるというのが共通したコメントだった。100万円や200万円ものスピーカーでこの評価は厳しいものだ。
 思うに、デザインの統一感のために、中低音ユニットの振動版に、軽金属とは言え紙と比べると重く、そのため反応が遅れるにも拘わらず、アルミニウムに拘って使ったのだろう。
 C-3の中低域のパルプ・コーンのユニットはデンマークのスキャンスピーク製と分かっていたから、ソーヌス・ファベールと同じと判断して迷わず入手した。
 音も聴かずにデザインだけでスピーカーを選んだが、結果は正解だった。
他のオーディオ機器と同様に、デザインを見れば、作った人の感性が分かるというもの。
 瑞々しく、爽やかな響きが部屋全体に拡がる出色のスピーカーだ。
ソーヌス・ファベールのコンチェルトと切り替えてもどちらが鳴っているのか判らない程の全帯域に亘る音の統一感が、このスピーカーの素性の良さを感じさせる。
 リボン・ツィーターとスキャンスピーク製の中低音ユニットとの組み合わせ賜物だろう。
その後ピエガはアルミニウム製の中低音を止めて、紙パルプコーンに切り替えた。
 近年、新しいスピーカーは30~38㎝の大口径のユニットを使わず、大型システムでも20㎝程度のユニットを複数個使う傾向になって来ている。
 高音ユニットの高性能化に伴い、それに見合った反応の良い中低音でないと、全体域の音の統一感が取れなくなるからだ。
 スキャンスピーク製のユニットがツゥイターも含め、世界の高級スピーカーに数多く採用されているのはそのためだ。  
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