インフィニティ : ルネッサンス90
( Infinity : Renaissance90 )



           
Infinity Renaissance 90  8畳の和室のRenaissance90と J.M.Labo-Opal 9,Cabasse-Prao,Acoustik Lab-AL500  手製のサランネット 
         
         
 方式 4ウェイ・4スピーカー・密閉方式・フロア型   H  重量
 使用ユニット  低域    25㎝コーン型   27Hz ~ 150Hz  124.5cm   43.5cm  31.5cm    35.8kg

 インフィニティはNASAの技術者が1960年代末に設立したアメリカのスピーカー・メーカーだ。
1960年代半ばまでに人類を月に送り込むというアメリカのアポロ計画が達成されたが、それは同時にNASAで開発などに関わった数多くの科学者や技術者が職を失うことに繋がった。
 こうした失業者の中には、当時隆盛し始めていたオーデイオの世界に新天地を求める技術者達がいた。
彼らはアポロ計画で磨かれた電子回路技術や素材等々、最先端の知識をオーディオにつぎ込み、斬新な発想とデザインのオーディオ機器により世界のオーディオ界に新鮮な旋風を巻き起こしたのだった。
 Altec, JBL, Electrovoice 等の戦前からある主に業務用を中心とするメーカーに対して、インフィニティーは、一般のコンスーマー向けのラインアッップで当時全盛期を迎えつつあったオーディオ界の中心的な存在となったブランドだ。

 設立当時から、高音域用にウォルシュ・ドライバーや静電型等の高域特性に優れたユニットを採用していた。
が、後に自社で独自にリボン型の中高域ユニットを開発し、ほぼ全てのラインアップに搭載して、インフィニティを象徴する技術となったものだ。
 普及型のカッパ・シリーズには高域に円形のリボン型を採用し、更にペアで100万円を超えるレファランス・シリーズには中低域までリボン型を採用していた。 
 リファランス・シリーズの中核モデルであるオメガ・モデルの普及版として導入したのがルネサンス・シリーズだった。
 普及版と言っても当時の定価でペアで 60万円は決して安いとは言えないが、スピーカー・ユニットやキャビネット等、上級モデルと全く同じユニットを使用した本格的な内容と、音楽性豊かな再生能力とを勘案すれば、究極のスピーカー・システムと言っても過言ではない。
 このモデルの10年以上後に登場した Sonus Faber と Piega との、最新の技術を駆使したほぼ同価格帯のモデルを後に大いなる期待を抱いて入手したのだが、悪いわけはないにしても、ルネサンス90以上のものではないと確認したのみ。
  ルネサンス90を聴いて、ようやく、もう如何なるスピーカーを試す必要はないと、ようやく納得した。 
たとえ、最近むやみと高価になり、数百万円から1000万円を超えるようになってしまったスピーカーをただで呉れると言われたところで、もう結構、音楽を楽しむのであれば、ルネサンス90で十分と、自信をもって言い切れる。
 最終的にどのスピーカーを選ぶかは、音楽再生能力とともに、デザインの好みが重要になる。
Sonus Faber と Piega ともに美しいデザインと音楽再生能力では最も魅力的なスピーカー・システムには違いないが、ルネサンス90の卓越した音場再生能力に相応しい、すらりとしたプロポーションも魅力だ。

 大型のキャビネットに収めたスピーカー・ユニットは中高音を2つのリボン・スピーカーで受け持ち、中域用のリボン・ユニットは550Hz と、リボン型としては異例の低域までカバーし、高域は42KHzと、1990年代初頭には圧倒的な高性能の技術だった。 
 因みに、インフィニティの リボン型の EM IM : Electro Magnetic Induction Mid, EM IT : Electro Magnetic Induction Tweeter、を静電型とする資料があるが、それは誤り。正しくは、即ち普通のスピーカーと同じ電磁誘導方式だ。 
 ただしコーンではなく、誘導コイルが印刷された極薄のプラスチック薄膜のリボンを強力なネオジウム・マグネットで駆動する方式。
 インフィニティのスピーカーの特徴である軽やかに広がる音場再生は主に、この広帯域のリボン・ユニットに負うところが大きいのだが、それに見合った軽やかに反応する低域と中低域ユニットがあって初めて優れたスピーカー・システムが完成する。
 低域と中低域はいずれもグラファイトとポリプロピレンの複合材を用いた軽量で反応性の高いユニットを採用している。 とりわけ低域は口径25㎝と、大型のキャビネットにしては比較的に小型の口径だが、ワトキンス型と呼ばれる2重ヴォイスコイル方式により27Hzの低域まで再生可能のユニットだ。
 大切なことは、この小口径ながら高感度のウーファーとスコーカーとにより、低域まで実に軽やかな、しかし確かな中低音の再生が可能となっており、リボン型の中高域とバランスの取れた、全帯域に及ぶ爽やかで滑らかな音楽の再生能力を実現していることだ。 4-wayとは思えないような、自然な音場再生能力が別格と言われる所以だろう。
 半世紀以上昔のタンノイやグッドマンズから、比較的に新しいソーヌス・ファベール、ピエガまで、17モデルのいずれも優秀なスピーカーを聴いているが、その中で、ただ一つを選べと言われたら、このルネサンス90は筆頭の候補にあがるだろうというのが率直な感想だ。 
 他のスピーカー同様、ルネサンス90も実際の音を聴かずに入手したものだ。 そのきっかけは、日本各地で中古オーディオ店を展開しているハイファイ堂での評価がとりわけ高いモデルだったからだ。
 長年オーデイオと付き合って来て、いわゆるオーディオ評論家や専門店の評価や意見は殆ど参考にもならなどころか、むしろ有害というのが率直な感想だ。
 なぜなら、多くのオーディオ評論家は、エレクトロニクス分野の出身で、電子技術には詳しいのだろうが、必ずしも音楽の専門家ではない。そこでむやみと低音がどうとか高音がどうとか、技術の解説に終始するのだ。
 が、オーディオ機器とは、本来音楽を楽しむためのものであり、最終的にそれらが如何に音楽を奏でるかが大切なのだ。音楽を聴くということは、オーデイオ機器を設計したり、音を測定したりする経験や知識とは全く異なる次元の問題だ。
 けれどもハイファイ堂の店員の中には、”音”ではなく、確かに”音楽”を聴いて判断している評価が少なからずあり、とりわけこのルネサンス90は”別格”とされていたからだ。
 発売から20年後の2011年にようやく入手したが、一般には真っ先に劣化が進む中低域ユニットのエッジも全く問題がなかった。 が、エッジの次に劣化が進むサランネットが部分的に擦り切れて見苦しくなっていたのが難点だった。 
 昔なら秋葉原でジャージのサランネット生地が入手できたものだが、いまどきスピーカー・キャビネットの自作など流行らないから、自分で探すしかない。 幸いなことに、男物の夏の背広の裏地が見つかり、一着分を二重にして自作の木枠に張ったものがオリジナルと比較して見劣りしない外観に仕上がった。 古い.スピーカーを使うには苦労がつきものなのです。  音楽を聴くにはいささか狭い8畳の和室に設置せざるを得ないのは、天井が高く、広いリビングルームで大きな音を出すと家人にうるさがられるためだ。
 せいぜい室内楽や、器楽曲、小編成のオーケストラをごく控えめな音量で聴いているのだが。、しかしダイナミックレンジの広い音楽を聴いていると、フォルテッシモでは、ピアノ一台でも結構な音量になることがあるので、やむを得ず、離れた和室で聴いているのが現実。
 が、8畳の和室でも、ルネサンス90ではスピーカーの後方に音場が軽やかに広がり、あたかも小ホールで実際の演奏を聴いているような臨場感が再現される。
 もちろん、他の3組スピーカーでも十分に音場再生はできるのだが、ルネサンス90による音楽の再生は一味違うものがあります。 微妙な差ではありますが、それこそオーディオにおける音楽再生のエッセンスというものなのです。


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