アントニー・ガウディ(Antoni Gaudi:1852-1926)

聖家族教会(Sagrada Familia : 1882年着工 - 2026年完成予定)


サグラダファミリア完成予想イメージ
     
建築中の教会地下にある完成模型   3D完成想像図  完成予想図

 アントニー・ガウディという建築家の名前とバルセロナに建築中の大聖堂について知ったのは未だ中学生の頃だった。
 新聞の文化欄に小さく掲載されたモノクロームの写真には驚かれされたものだ。
柱やファサードには至る所に蛇やトカゲ、蛙、亀、蝶、カタツムリ等々、無数の生き物の彫刻があり、建物全体が奇妙な植物や、キノコのような装飾で覆われているという異様さは、しかし、忘れがたい不思議な魅力に溢れていた。
 以来、インドのタージ・マハール、ジャワ島のボロブドール、カンボジアのアンコールワットにもまして、何よりもこの不思議な建物を見たいという思いは、胸の内に次第に膨らんでくる一方でありました。
       
 1960年当時完成していた4本の塔  生誕のファサード 
 塔に刻まれた”Hosanna in Excelsis :  天のいと高きところにホザンナ”を見ると、パレストリーナのミサ曲 Hodie Christus natus est : 今日ぞキリストは生まれ給えりの一節が聞こえてくるようだ
 まさしく、この教会はキリストの生誕を祝福して、人類のみならず、地上の動物、植物を含め、ありとあらゆる生命を祝福するために建築されたものだと思い起こさせられる
 ガウディについて詳しい情報を得たのは、1966年発行の鹿島研究出版会の本 "ガウディ"
だった。
 当時の定価2500円は気が遠くなるほどの高値だったが、ガウディの建設等のほぼ全貌が見られるとあれば、ともかくやりくりして何とか入手した。
 今になってネットで調べると、当時すでにガウディは知る人ぞ知る建築家であり、すでに300余りの情報が主に建築や美術関連の出版物にあった筈なのだが、一個人にとっては、紀伊国屋や丸善のような大きな書店で偶然見かけない限り、分かる筈は無かったわけだ。

サグラダ・ファミリア教会の概要

 この教会は正式にはカタルニア語で聖家族贖罪教会(Temple Expiratori de la Sagrada Familia)と呼ばれ、地元のカトリック団体が個人の寄付によって建設される贖罪教会として計画され、建築家フランシスコ・ビリャールの設計で1882年に着工したもの。だが、意見の対立によりビリャールは翌年辞任し、その後ガウディが引き継いで1926年の死まで、ほぼ独力で細々と建築を続けていたもの。
 ガウディが引き継いだ時点では、当初計画されたゴシック建築が進んでいたため、現在でも地下の礼拝堂部は建築中のガウディの設計とは全く異なる、古い様式が残されている。
 が、その後ガウディは独自の構想による大聖堂を計画した ;
それはそれぞれ4人の福音記者と12人の使徒を象徴する16本の塔に囲まれた、中央部に聖母マリアと、キリストを象徴する、高さ170mの2本の主塔を加えて、合計18の塔が起立し、キリストの生誕と受難、栄光とを象徴する三つのファサードを持つ壮大な大聖堂だった。
 しかし、40年余りをかけて生誕のファサードを飾る高さ120mの4本の塔を完成したのみで未完となっていた。
ガウディの死後、教会の建築は細々と続けられたが、スペイン内戦 (1936 - 1939) とその後、内戦に勝利し1975年の死まで続いたフランコ将軍の独裁政治により、最後まで反フランコ派として抵抗したバルセロナを中心とするカタルーニアは徹底的な政治、経済、文化と広範な分野に及ぶ制裁を受けて疲弊し、教会建築に全力を挙げる余裕など全くなかった。
 ようやく再建が始まったものの、ガウディ自身が全体の詳細な設計図を残していたわけではなく、構想に基づいて、各部を部分模型を作りながら詳細な設計図を描くという作業を余儀なくされた。
 したがって建築は遅々として進まなかったが、それでも1984年に思いもかけずバルセロナに駐在することになった時には、サグラダファミリアはガウディの死で残された当時に完成していた生誕のファサードを飾る4本の塔に加えて、その反対側の栄光のファサードを飾る同じ高さの4本の塔が完成していた。だがその他の外壁や内部のホール、高さ170mのキリストを象徴する塔を含む残りの8本等々に未だに着手に至らず、完成までにあと300年はかかると言われていたものだ。

 もっとも、ガウディ自身も、これを完成させられるのは天使のみ、と言っていたくらいだから、完成されるとは予想もしてなかっただろう。

未だ300年はかかるといわれていた教会の建築が急進展し始めたのは21世紀になってからのこと。
 EUの拡大、バルセロナ・オリンピック、ユーロ導入等により。、バルセロナを中心とする経済の急成長と、スペイン最大の年間300万人超となったサグラダファミリアへの入場料に依って、膨大な建築費が賄えるようになった。
 しかもコンピュータ・グラフィクスや三次元プリンターによる、模型制作の高速化等々のおかげで、冒頭の写真のように、なんとガウディの死後100年となる2026年には完工が予定されている。
 運が良ければ完成をこの目で見届けることができる!!! 

 2026年の竣工まで生きられないとしても、建築が急進展し,日々刻々と完成に至るまでのコンピュータ・グラフィクスによる様々な高精細映像をYou Tubeで見ることができる世の中となりました。
  
     
壮麗な外観に劣らず完成した内部も圧巻の美しさ 風の谷のナウシカの腐海の森のようだ 

ガウディの設計図
       

 壮大な聖家族教会全体の細部の全ての設計図を残さなかったとは言え、バルセロナ建築学校出身で若くしてその才能を認められたガウディは、直線、双曲線、放物線、円、楕円を駆使して、まるで有機物で出来ているかのような建築物の詳細な図面を残している。
 これらの設計は緻密な力学計算に裏付けられたものだ。
それだけでも陶然とするような幾何学的な美しさに満ちているが、これらの図面を建築物として実現するのは容易ではない。
 これを完成させられるのは天使のみ、とのガウディの言葉には、壮大な構想を企てたものの、よもや人間の力や努力で完成させることは不可能ではないかとの、万感の思いが込められていたのだろう。
 未完のままと考えられていたガウディの聖家族教会は、しかし、後10年も待たずして遂に完成の日を迎える。すでに完成した聖堂の内部は目も眩むほどの美しさには心を打たれる。

 何と嬉しい知らせだろう。


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