テロ支援国家指定解除と国際的謀略


 ブッシュ政権は6月26日、北朝鮮の「核計画」の申告書提出を受けて、北朝鮮をテロ支援国家の指定から解除する手続きに入ることを議会に通告した。阻止 できなければ45日後の8月11日には発効することになる。ブッシュ政権は来年1月に任期を終えるため外交成果を上げようと焦っているが、騙すことを外交 の本質とする金正日や中国やロシアに見事に騙されているだけである。解除手続きを取りやめ追加制裁を科さないとすれば、ブッシュ大統領は金正日に騙された クリントン・元大統領の二の舞を演じることになる。米国の国益と同盟国の国益また北朝鮮の奴隷的に支配されている国民の利益を踏みにじった愚かな大統領と して歴史に名を刻むことになってしまう。

 金正日は絶対に核兵器を放棄しない。核兵器は北の独裁支配体制を守る最大の武器であるからだ。金正日は核兵器で日本と韓国を人質に捕ることで独裁体制を 維持することができる。ブッシュ大統領は03年末にリビアが核開発計画を放棄したことをもって、北朝鮮に対しても体制を保証し経済的見返りを与えれば核兵 器と核計画を放棄するであろうと考えているのだろう。だがリビアと北朝鮮では条件が全く異なっている。

 カダフィーが独裁支配するリビアは核開発計画の初期段階にあったに過ぎない。またリビアは周辺の米国の同盟国・友好国を人質に捕ることができる大量破壊 兵器(運搬手段と化学兵器)が無かった。だからかつてレーガン大統領は米軍基地へのテロ攻撃に対する反撃としてカダフィー一家への爆撃を実行したのであっ た。カダフィーは、ブッシュ政権が03年3月にイラクフセイン独裁政権を打倒する軍事作戦を実行したために、核開発計画を放棄しなければ次には自分がフセ インと同じ運命を辿ることになると危機感を抱いて放棄したのである。

 しかし金正日はソウルを火の海にできる無数の大砲、ミサイル、多連装ロケットを休戦ライン近くに配備してきたし、日本を攻撃できる200基を超えるノド ンミサイルに化学弾頭(VXガス、サリンなど)を搭載して実戦配備してきたのである。両国を人質に捕ってきたわけである。そして核兵器も開発して手に入れ てしまった。金正日がこれまで軍事行動をとれなかった米国が今後とれるわけがないと考えているのは明らかだ。だから金正日は絶対に核兵器を放棄しない。 05年9月の6カ国協議共同声明を信じて、北の体制を保証し経済的見返りを与えれば核を放棄すると考えるブッシュ大統領は、国際社会を理解できていない。 北朝鮮、中国、ロシアという全体主義侵略国家のことを理解していない。テロ支援国家指定解除と経済的見返りは、北の独裁体制の強化を支援するものであり、 ブッシュ政権の米国こそが“テロ支援国家”になってしまう。もちろん拉致問題は解決しなくなる。

 北朝鮮が申告した「核計画」には核兵器数や核兵器の配備基地などは除外されている。これは07年10月の6カ国協議の合意である「核計画の完全かつ正確 な申告」に違反している。<法>の支配を国是とする米国の政権が「合意」に反する申告を受け入れることは断じて許されないことである。この「核計画」こそ が、金正日が核兵器を廃棄する意志がないことを示している明白な証拠だ。またブッシュ政権は過日、北朝鮮による日本人や韓国人などの拉致を国家テロだと認 定した。拉致問題は全く未解決のままである。つまり北の国家テロは継続している。だからブッシュ政権の指定解除手続きの開始はここでも自らの<法>を否定 するものである。

 米国議会にはブッシュ政権のこの措置に対する批判が強く大きく存在する。米国の国益、日本などの同盟国の国益等を大きく害するという非難である。米国の 憲法は、ブッシュ政権の措置を違憲で無効とする。私たちは米国議会、シンクタンク、マスコミ、世論に精力的に訴えてブッシュ政権を包囲し、指定解除手続き を撤回させるか、議会の三分の二以上の再可決で大統領の拒否権を葬り去っていくことを目指していかなくてはならない。私たち自らが行動し、また日本政府と 議会をも突き上げて行動させて行かなくてはならない。また私たちは米国議会等に、自国の安全を守り拉致問題を解決するために、そして日米軍事同盟を飛躍的 に強化するために、日本は早急に核武装する必要がある。米国の中距離核を売却してもらいたいと訴えていかなくてはならない。心ある政治家は政治生命 を賭して以上のことを主張し、米国世論を説得していかなくてはならない。日本の世論に対しても同様である。

 ブッシュ大統領に外交上のアドバイスをしている人物にキッシンジャーとキッシンジャーの側近であるスコークロフト(元ブッシュ父大統領の国家安全保障担 当大統領補佐官)がいる。ライス国務長官はスコークロフトの愛弟子である。私はこの3人は隠れ共産主義者だと考えている。3人がやってきたことはソ連=ロ シアと中国と北朝鮮の国益を守って増強し、米国とその同盟国の国益を弱体化することばかりである。日米の離間を図ることばかりである。6カ国協議の路線 を敷いたのも青木直人氏によればスコークロフトである。

 キッシンジャー、スコークロフト、ライスはブッシュ大統領をはじめ議会、マスコミ、シンクタンク等に、ポスト冷戦の米国の対露、対中政策は対決や封じ込 め政策ではなく、経済貿易関係を軸にして積極的に関与していくことによって両国の変化を促し、米国が主導する世界秩序の中に「責任ある利益共有者」として 取り組んでいくことであるという「関与政策」を注入し説得していきた。ライスが02年9月にまとめた米国の「新国家安全保障戦略」もロシアと中国の歩みを 高く評価している。経済の自由化は次には政治の自由化、民主化を生み出していくだろうと述べられている。中国を議長国にした6カ国協議もこの考えのもとに つくられた。

 関与政策は謀略理論・政策である。それはキッシンジャーが1970年代の初頭から実行してきた、ソ連との経済協力、貿易を通じてソ連の行動を変えて東西 の緊張緩和、平和を作りだすのだという謀略理論・政策を発展させたものである。ソ連は70年代の西側の対ソ経済協力と貿易によって、自国のエネルギー資源 開発と経済を強化して核・通常兵器の大軍拡を実現し、これを背景に西側のデタント気分の隙をついて革命を輸出して南イエメン、南ベトナム、アンゴラ、モザ ンビーク、エチオピアを勢力圏に入れ、自らもアフガニスタンに直接軍事侵略したのであった。

 関与政策は経済界に大いに受け入れられている。投資や貿易による利益の追求が、非民主国家(中国、ロシア)を民主的な国家に変化させ、親米国家に変えて いく、米国の国益の追求にもなっていくと(嘘)説明されているからである。だがロシア、中国に通じているキッシンジャーらの隠された真の目的は全く違う。 中国やロシアを米国など西側の資金と技術と市場を利用して強大軍事国家にしていくことであり、米国ら西側を前記のように騙して思想的に武装解除させていく ことが目的である。最終的にはロシア、中国による世界征服が目標である。

 私たちは北朝鮮の核と拉致とミサイルだけでなく、はるかに巨大な脅威を西側の誤った政策によって作りだしてきていることを早急に深く認識する必要があ る。このことを同盟国米国の議会、政府(国防総省が核となる)、シンクタンク、マスコミ、世論に訴え説得して行かなくてはならないのである。日本の各界に 対しても同様である。(2008年6月30日記 7月7日発行戦略情報研究所「おほやけ」191号所載 このホームページには7月17日掲載)

(最初のページに戻る)