共産主義は衣服に過ぎない

ー隠れ共産主義者に操られているブッシュ政権―

 G8を控えた去る7月2日、ブッシュ大統領はホワイトハウスで行った読売新聞などとの会見で、米中関係について「ある意味、これまでで最も良好だ」と述 べ、胡錦濤と築き上げた「心のこもった関係」が朝鮮半島の非核化問題などで共同で取り組む素地を作ったと強調した。そして日本に対しても「中国との関係を 強化すべきで、そのために努力することを望む。日本も米中関係強化を期待してほしい」と述べた(7月4日付読売)。ブッシュ大統領のこの発言はまるでどこ かの中国の同盟国である全体主義国の支配者の発言と同じである。私は記事を読んで激しい憤りを抑えることができなかった。自由主義国アメリカの大統領は米 国憲法に支配されて外交などの仕事をする義務を負っているから、氏の言動は憲法違反である。米国の国益と同盟国の国益を深刻に毀損する行為であるからだ。 米国議会にはこうしたブッシュ大統領を厳しく非難する議員が超党派で多く存在する。

 ブッシュ大統領は「中国はすでに共産主義経済を放棄して市場経済に転換しているから、もはや共産主義国ではない。経済の自由化に続いて、次には政治の自 由化、民主化が課題に上ってくる。米国は積極的に中国に関与して中国の変化を促がし、中国を「責任ある利益共有者」として米国が主導する自由の世界秩序の 中に取り込んでいくのだ」と考えているだろう。主観的にはこうした戦略に基づいて外交を展開しているはずである。そこが思想も戦略もないただ中国べったり の日本のエリートとの違いである。だが、この戦略は、中国およびロシアそして両国の米国内の工作員が仕掛けてきた謀略なのである。工作員とはキッシン ジャーやスコークロフトや両者の愛弟子であるライスである。ブッシュ大統領はこうした隠れ共産主義者・反祖国主義者の思想工作によって洗脳され操られてし まっているのである。

 米国を盟主として西側諸国は東西冷戦を長く戦ってきた。その勝利とは東側が共産主義を放棄することだと信じられてきた。そのため中国やロシアが共産主義 経済を放棄して市場経済に転換したとき、西側はそれを両国の敗北であるとともに両国の対外的な侵略主義(共産主義の輸出)の終焉も意味すると考えた。そし て国内における人権抑圧も、政治面における自由化が進展していけば段々と解決に向かっていくだろうと考えたのである。両国も西側内部の工作員もそのように 精力的に思想工作をしてきた。情報思想戦である。

 私たちは、中国やロシアという全体主義国にとって共産主義とは“衣服”に過ぎないことを認識しなくてはならない。共産主義という“衣服”を脱いで別の “衣服”に着替えても国家の本質と国家の目標(世界の征服支配)は不変なのだ。国内における国民の迫害や植民地の支配(チベットや東トルキスタン等)も不 変である。両国は西側をだますとともに自国をより一層強国化し国家目標を実現できるより好ましい“衣服”(国家統制の市場経済と全体主義)に替えただけで ある。

 1991年に共産主義ロシアがエリツィン派によって市場経済と“民主主義”のロシアに転換したとき、西側は「我々は長く苦しい冷戦に勝利した。市場経済 と民主主義が唯一の正統性ある制度として残った。歴史は終わった」と驕慢になり油断することになってしまった。確かにゴルバチョフやエリツィンらロシアの 支配者が打ったこの大謀略の芝居は天下逸品であったが、それだけでは西側は上記のような誤った認識を抱いてしまうことはない。西側内部のロシアの工作員 (先の3名ら)がそうした思想工作を米国大統領や議会等に精力的に展開したから、つまり西側の大統領などの指導者が自らの口でそのように述べたから信じ込 まれていったのである。ロシアは全体主義国であって民主主義は存在していないことは、国家権力に2006年10月7日に暗殺されたロシアの女性ジャー ナリスト、アンナ・ポリトコフスカヤ氏の『ロシアン・ダイアリー』(2007年6月刊)で証明し尽くされている。

 キッシンジャーはニクソン大統領を操って、中国を対ソ戦略上の準同盟国にして、中華民国=台湾を国連安保理常任理事国の座から追放し代わりに中国を就け ていった。そして日本に対中ODAを出させて中国を軍事・経済大国に育て上げていく路線を敷いたのである。キッシンジャーは1972年5月に第一次米ソ戦 略核兵器制限協定を締結して、1970年までの米国の戦略核戦力の対ソ優位を70年代半ば以降の対ソ対等から劣位へと大逆転させていった。これを背景にし て ソ連の70年代半ばからの革命の輸出(南イエメン、南ベトナム、アンゴラ、モザンビーク、エチオピア)とアフガニスタン侵略が可能になったのである。

 キッシンジャーの最側近のスコークロフトは父ブッシュ大統領の国家安全保障担当大統領補佐官に就き、ライスをロシア担当に起用した。両名はブッシュ大統 領を操って外交成果として第一次と第二次米ソ戦略兵器削減条約に署名させていった。1991年7月と1993年1月である。米国が冷戦に勝利したのである から一方的にソ連の核戦力を廃棄させるべきなのに、父ブッシュ大統領は対等の立場で共に核軍縮することを約していったのである。だがロシアは全体主義国で あるから条約に拘束されないが(国内に批判勢力が不在)、米国は拘束されてしまうから、この条約は米国こそが冷戦の敗者のごとく自らの戦略核戦力を大削減 させられていくものになっている。

 ライスは現ブッシュ大統領の国家安全保障担当補佐官として2002年5月に大統領を操って、戦略兵器削減条約(モスクワ条約)に署名させていった。この 条約によってロシアは対米絶対優位を確立することになっていく。米国には既に稼働している核弾頭生産工場はないが、ロシアは維持している。新型ICBM トーポリMも開発し1997年から配備を開始しているが、米国はそんなことは一切していない。ライスはまた2002年9月に米国の「新国家安全保障戦略」 を策定した。そこには21世紀の最大の脅威は国際テロとテロ支援国家だと規定されており、ロシアと中国は、テロとともに戦う側に位置しているとされている のだ。民主主義を目指すロシアの歩みは最大限に高く評価されているし、中国も早晩政治の自由化、民主化の大切さに気づくはずだとされている。

 この3名は隠れ共産主義者であり、彼らによってブッシュ政権は操られてしまっている。私たちは米国議会やシンクタンクや国防総省やマスコミに以上のこと を訴えて説得していかなければならない。共産主義は古くなった衣服を脱ぎ棄てるようにロシア、中国が自ら進んで脱いでいったのである。両国は米国の「関与 政策」によって、米国・西側の資金と技術と市場を大いに利用して世界征服のために経済を強化し、技術を高度化して、軍事超大国を目指しているのである。戦 いの土台は思想戦情報戦である。これに負けたら国が滅びるのである。(2008年7月23日記 8月14日発行戦略情報研究所「おほやけ」192号所載 このホームページには9月10日掲載、9月26日一部誤字訂正)


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