国防費を少なくても3倍以上にしなければ日本は滅びる

 「新防衛大綱」を直ちに破棄せよ

国防を不可能にする「新防衛大綱」

 民主党菅政権は去年12月17日に、「新防衛大綱」と「新中期防」を策定・閣議決定したが、これらはどのような国際環境下でなされたのだろうか。

 中国は2009年3月、日本などのシーレーンが通っている南シナ海を、一方的に「中国の核心的利益だ」(中国の領海だ)と宣言した。国際法の否定である。それに続き同年12月には、東シナ海の「中国の領海化」(核心的利益化)を目指して、東シナ海等の島の領有を目的にした「海島保護法」を制定し、翌年3月に施行した。そして9月7日、日本領土の尖閣諸島を領土化するべく攻撃を仕掛けてきたのであった。計画された作戦であった。

 中国は、270隻の漁船群に「海上民兵」を乗せて尖閣諸島沖に迫り、70隻に日本領海を大挙して侵犯させ、さらにそのうち一隻に、海上保安庁巡視船へ体当り攻撃をさせたのであった。中国は尖閣諸島は中国領だと強弁した。菅政権は船長を逮捕したものの、中国の政治的・経済的な攻勢により、あっさり屈服して船長を釈放したのであった。中国は、台湾と沖縄などの南西諸島の占領を当面の戦略目標にしている。尖閣諸島への攻撃は、その一環である。

 中国に新鋭兵器を輸出するなど同盟関係にあるロシアも、中国と歩調を合せて、2010年11月初めに、大統領が日本領土である「北方領土」の国後島を訪問したのであった。国のトップの訪問は、ソ連時代にもなかったことだ。ロシア外務省は、「大統領が自国の領土を訪れるもので、外国の指図は受けない」と言い放った。ロシアは北海道の占領を当面の戦略目標にしている。

 菅政権は、国民から外交・安全保障政策等を批判されて、内閣支持率と政党支持率は低迷を続けていたから、「新防衛大綱」と「新中期防」は、政治主導ではなく、防衛省等の官僚主導で策定されたものだといえる。もし民主党内閣の主導でなされていたら、さらに悪い内容になったことは間違いない。もちろん、民主党内閣が閣議決定したものであり、責任を負っている。新防衛大綱・新中期防は、中国とロシアからの侵略に対して、国防を不可能にする内容なのである。批判を述べていくことにする。

 「防衛大綱」は、おおむね10年先を見据えて、防衛力のあり方と防衛力整備や運用の指針を示すものである。「中期防」は「大綱」に基づいて、今後5年間(2011年度から15年度)の装備調達や人員等の計画を表わすものである。政府はこれに沿って、年度ごとの国防予算案を決定していくことになる。

 日本がどれだけ国防に真剣であるかを見るには、国防予算額を見ればわかる。新中期防の総額は、2010年度価格で23兆4900億円程度とされたが、これは現行中期防よりも7500億円も少ないのだ。しかも前記金額には、自衛隊員の子ども手当て約1500億円分が含まれているから、それを除外すれば、現中期防よりも9000億円も削減されたことになる。だから2011年度の国防予算案も前年度よりも削減され、これで9年連続で減少することになったのである。

 しかしこの9年間に、中国とロシアの軍事費は約3倍に急増した。両国の軍事費は、日本の軍事費をはるかに上回っている。中国の軍事費は、為替レートベースでも日本の3倍である。しかし本当の軍事費は、購売力平価で測らなくてはならないし、また人件費比率の大きさも勘案しなくてはならない。これらを考慮した中国の「実質的軍事費」は、日本の軍事費の10数倍の巨額になるのだ。

 米国CIAの資料によると、2006年度の各国の軍事費のGDP比は、米国4.06%、中国4.30%、ロシア3.90%、フランス2.60%、英国2.40%、ドイツ1.50%、オーストラリア2.40%、スウェーデン1.50%、インド2.50%などであり、世界173ヵ国の平均は2.00%である。しかし日本はわずか0.80%にすぎない(北村淳氏『米軍が見た自衛隊の実力』199頁参照、2009年5月刊)。

 日本は、全体主義の凶悪な大侵略国家である中国とロシアのすぐ隣に位置している。両国が軍事費を急増させて、公然と領土拡大の侵略行動をとり出している時、日本がしなければならないことは、国防費を直ちに少なくても3倍以上に増額して、軍備を飛躍的に増強していくことである。もちろん日米同盟の堅持・強化は大前提だ。日本は米国から購入して中距離核戦力を直ちに保有しなくてはならないし、通常戦力の装備も3軍の人員も飛躍的に増強していかなくてはならない。この方法によってしか、日本の自由ある平和は守ることはできないのだ。

 中川八洋名誉教授は、「日本は直ちに、防衛費を最低でも3倍以上に増加する必要がある。(核兵器だけは米国と協議する必要があるが)空母も爆撃機も巡航ミサイルも、対抗する兵力はすべて保有すべきである。これに必要な、逼迫する国家予算の不足分はすべて、社会保障費を削って充当すればよい。国家が存在して初めて社会保障が可能であり、国家が消えれば社会保障制度そのものも消える」と主張する(『地政学の論理』15頁、2009年5月刊)。

 日本が、英国(国防費のGDP比2.40%)やフランス(GDP比2.60%)と同じ国防費比率(GDP比)を支出できないはずはない。日本は現在の国防費(GDP比0.80%)を少なくとも3倍以上に増加させていかなくてはならない。まずデフレ不況を止め、景気回復後に行う消費税アップ分は、優先的に国防費に充てなくてはならない。

 それなのに、新防衛大綱・新中期防は、国防費を大きく削減した。自衛隊員の定員も削減し、600両余りしかない戦車を400両に、600門・両余りしかない火砲を400門・両に大削減する内容である。まさに自殺行為である。国防を不可能にする防衛大綱と中期防なのだ。侵略を誘致する「外患誘致罪」に違反するものである。

 「新大綱」が維持されて、5年後に策定される次の中期防も今回と同じようなものであるとすれば、10年後の中露と日本の軍事力の格差は、絶望的なまでに広がる。日本は両国に侵略占領されて、滅びることになる。しかし、断固たる批判は出てこない。国防、軍事を考えることができない政治家と官僚は、政治家や官僚たる資格はない。

中国は南西諸島の占領を、ロシアは北海道の占領をめざす一「新防衛大綱」は現実を逆に記述する

 「新防衛大綱」は次のように述べる。「専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とならないとの基本理念に従い、文民統制を確保し、非核3原則を守りつつ、節度ある防衛力を整備するとの基本方針を引き続き堅持する」「核軍縮、不拡散のための取り組みに積極的・能動的な役割を果たしていく」「大規模着上陸侵攻等の本格的な侵略事態が生起する可能性は低い」「本格的な侵略事態への備えについては、最小限の専門的知見や技能の維持に必要な範囲に限り保持する」。読むに耐えない反国防の反日文書である。批判していく。

 「大綱」は、「本格的な侵略事態が生起する可能性は低い」と、現実を正反対に記述する。「中国とロシアによる本格的な侵略が迫っている」と、「本格的な侵略の可能性は低い」とでは、「防衛力の整備」が根本的に異なってしまう。防衛省の上級官僚(背広組)が、様々な形で公けになっている中国の国家目標とそのための国家戦略、そして実質的軍事費の巨大さを知らないことはありえない。把握しながらも、意図的に逆に記述しているのである。背広組は「文民統制」を歪曲して、制服組(自衛隊)をコントロールしている。

 トウ小平の側近の中国海軍総司令官・劉華清は1982年に、「近海積極防御戦略」を打ち出した。中国はこの国家戦略に基づいて、軍備を増強し近代化してきた。

 「近海」とは、黄海、東シナ海、南シナ海、そして西太平洋である。劉華清は2010年頃までに、第1列島線(九州、南西諸島、台湾、フィリピン、ボルネオ島を結ぶ島嶼線)の内側の南シナ海と東シナ海の支配権を、2020年頃までに第2列島線(伊豆諸島、小笠原諸島、北マリアナ諸島、グアム島、パラオ諸島、パプアニューギニアを結ぶ島嶼線)の内側の西太平洋の支配権を中国の手に握り、21世紀半ば頃には第2列島線の外側でも中国海軍がアメリカ海軍と肩を並べるだけの実力を保持することを戦略目標とした、と北村淳氏(米国軍事コントラクターのcubic社の米海軍アドバイザー)は述べる(『正論』2010年7月号、99頁)。

 2007年、キーティング米国太平洋軍司令官が中国を訪れた際、中国海軍司令官はキーティング氏に、「将来、中国と米国がハワイで太平洋を2分する」との「太平洋分割案」を告げている(平松茂雄氏『日本は中国の属国になる』109頁、2009年12月刊)。これは、2050年頃には中国は米国海軍を西太平洋から駆逐するということである。当然、米海軍をインド洋からも駆逐する。

 黄海には中国の北海艦隊の基地があり、東シナ海には東海艦隊の基地が、そして南シナ海には南海艦隊の基地がある。だからこの「近海防御戦略」からは、まずは黄海、東シナ海、南シナ海を「聖域化」(敵国が決して侵入できない所)するために、台湾と沖縄などがある南西諸島(つまり第1列島線)を占領するという、当面の戦略目標が出てくることになる。

 前西部方面総監の用田和仁氏は、次のように主張する。「南西諸島は、近海防御戦略の黄海・東シナ海・南シナ海の聖域化を確実にする重要な列島線(中国の言う第1列島線)であり、これを無力化または占拠して対艦ミサイルや防空ミサイルを配置し、中国海・空軍の前進基地とすることができれば、太平洋に向って中国海・空軍の優勢圏を拡大して、米海・空軍の聖域への侵入を有効に阻止することが可能である」(「国民よ、中国の脅威を直視せよ」、『正論』2011年2月号、93頁)。

 中国は台湾と南西諸島を占領すると、日本の海上航通路(シーレーン)を支配できるようになり、日本を経済的に封じ込めることができるようになる。だから日本にとって、台湾の防衛と南西諸島の防衛の意味は、日本そのもの、日本の存立の防衛なのである。

 尖閣諸島への攻撃(2010年9月)は、南西諸島、台湾を奪取するという当面の目標の一環としてなされたものである。用田氏はこう述べる。「尖閣諸島は、中国の海上戦力の策源〔力の源〕に突き刺った障害であるが、これを軍事的に確保すれば、障害を排除できると同時に、中国海軍・空軍の影響力は対艦・対空ミサイルの配置により、与那国島から宮古島までの先島諸島全域に及ぶだろう」(同『正論』92頁)。

 中国は台湾と南西諸島占領を当面の目標(最終目標は米軍を西太平洋から駆逐することだ。もちろんそのときには、日本はもはや存在していない。「東アジア共同体」と呼ばれる巨大支那帝国が誕生している)として、この目標達成のために、(来援にくる)「米軍接近拒否戦略」を着実に構築してきている。

 しかし「新防衛大綱」は、「本格的な侵略事態が生起する可能性は低い」と、逆に書く。「大綱」には、尖閣諸島への侵略行動(2010年9月)すら書かれていない。反対に、「国際社会における多層的な安全保障協力」の「(1)アジア太平洋地域における協力」の項で、「中国との間では、戦略的互恵関係の構築の一環として、様々な分野で建設的な協力関係を強化する」と書いているのである。

 もう一方のロシアだが、中国が日本を侵略するとき、ロシアも北海道を侵略占領することは明らかだ。しかし「大綱」には、ロシアに関する記述自体がほとんどない。

 「新防衛大綱・新中期防」が、赤い左翼官僚の影響下で策定されたことは、その内容によって明らかだ。反国防の反日文書なのだ。

 中川八洋氏は「防衛省の上級官僚で、共産党系や全共闘系でないものは稀にしかいないが、これが実情である」(前掲書246頁)と批判している。私たちは「新防衛大綱」「新中期防」を徹底的に批判して、粉砕し、破棄していかなくてはならない。もちろん左翼民主党政権を直ちに打倒しなくてはならない。しかし、自民党の中から断固たる批判は出てこない。国防、軍事が分からない政治家は国民の代表の資格がない。必死になって、これまでとは異なるしかるべき人々から学んでもらいたい。自民党議員にはその責務があるのだ。

国民が知らされていない中国軍、ロシア軍の実力

 私なども本を読んでいて初めて知ることが多くあるが、日本では、政治家を含め国民に、軍事知識や軍事情報が全く欠如している。こんなことでは国を守り永続させていくことはできない。防衛省の「赤い官僚」が国民に知らせないようにしているのである。

 中国は台湾、南西諸島を手に入れるために、その時に来援に駆けつける米国海軍機動部隊の接近を阻止する、「接近拒否戦略」を構築してきている。空母艦載機の戦闘作戦行動半径は、最大でも700キロメートルなので(北村淳氏)、700キロメートル以上離れた海域に脅威を配置することで、接近を阻止するのである。

 その兵器は、移動中の米空母を攻撃できる射程1500キロメートルとも2000キロメートルとも言われる弾道ミサイル、航空機等発射の射程1500キロメートルの対艦巡航ミサイル、そして海中で待ち伏せする多数の潜水艦の対艦ミサイルと魚雷である。また潜水艦による機雷敷設である。

 北村氏によれば、中国海軍は4から5隻の戦略原子力潜水艦、4から5隻の攻撃原子力潜水艦の他に、50隻以上の攻撃ディーゼル潜水艦を運用し、うち25隻は新型攻撃ディーゼル潜水艦であり、極めて静粛であり強力な攻撃力を保有しているため、海中で敵艦艇を待ち受けてミサイルや魚雷で攻撃するにうってつけである。とりわけロシア製の新型キロ級攻撃ディーゼル潜水艦は、KLUB一Sという強力なミサイルを搭載している。中国海軍が開発中の最新鋭攻撃ディーゼル潜水艦は、キロ級以上の静粛性と攻撃能力を備えている上、長時間海中での作戦行動が可能な、AIPという最新技術も導入済みとみられる。そして中国海軍はさらに潜水艦を増やしていく(『正論』2010年7月号、101,102頁)。江畑謙介氏は、中国の潜水艦数を82隻(うち、攻撃ディーゼル潜水艦は56隻)としている。攻撃原子力潜水艦数がもっと増えているということだ。

 日本の保有する攻撃ディーゼル潜水艦は16隻にすぎない。「新大綱」で22隻に増やすことがうたわれたが、これでは絶対的に足りない。原子力潜水艦は一隻もない。日本は潜水艦を大きく増やして、対潜水艦能力を大増強しなくてはならないのだ。機雷戦能力も増強しなければならない。

 中国空軍が保有している第4世代以上の新鋭戦闘機数は750機である。中国海軍は24機を持つ。この中にはロシアから輸入した最新鋭のSU30(スホイ30)が350機ある。中国はSU27もロシアから76機輸入した。一方日本の航空自衛隊が持つ第4世代以上の戦闘機は290機に過ぎない。

 日本には爆撃機はないが、中国は旧式の機体とはいえ、各種改良を加えたH6爆撃機を100機と、JH7戦闘爆撃機を200機持っている。そして中国海軍は、ロシアから超音速爆撃機バックファイアー(TU22)6機を購入する交渉をすすめているのである。

 中国が持つ早期警戒管制機(AWACS)は4機で、日本も4機。空中給油機は中国が14機で、日本は4機である。

 米空軍のあるF16パイロットは、「中国空軍のSU30、SU27、J10といった新鋭戦闘機が、米空軍、米海軍、日本の航空自衛隊のF15、F16、F18、F2より強いのかどうかという議論があるが、早期警戒管制機や指揮管制情報システムが同等な場合は、ほぼ互角か、ロシア製の方が若干優勢と見ておいたほうがいい」と語った、と北村氏は書いている(以上は北村淳氏『米軍が見た自衛隊の実力』166頁他より)。

 尖閣諸島の魚釣島に直ちに陸上自衛隊1個小隊(約50名。実際は3交代で15名程度)を駐屯させなくてはならないし、自衛隊法に「領海侵犯対処」を追加して、無力な海上保安庁ではなく、海上自衛隊がこれを担当するようにしなくてはならない、と中川八洋氏は10年以上も前に提起していた(『中国の核戦争計画』205頁参照、1999年9月刊)。

 元空将の佐藤守氏は、与那国島にせめて陸上自衛隊を1個中隊(約200人)、そして下地島(宮古島)に1個飛行隊、できなければ、ハーフ飛行隊10機を配備する。そして石垣島の海上保安部の巡視艇とともに、海上自衛隊のミサイル艇を配備すべきだ、と主張する(『正論』2010年12月号、128頁)。

 中川八洋氏は、日本は南西諸島の島々を堅牢な要塞と化するとともに、500両以上の中型戦車部隊(5万人規模の地上部隊)を平時から配備しておく。シー・ハリアー戦闘攻撃機24機を搭載する4万トン程度の空母を少なくとも2隻、原子力潜水艦4隻を緊急に保有する必要がある。そうすることによってこそ、日米台は台湾の独立を守り抜くことができ、南西諸島を守り抜くことができる、と述べる(『地政学の論理』12,13頁)。

 軍備の増強には、国防予算の少なくても3倍化が不可欠である。

 私は「中国、ロシアと対峙する、日米同盟の下での日本の核武装(下)」(2010、11、25脱)で、中川八洋名誉教授の『地政学の論理』を要約して、ロシアの対日侵攻戦力(核戦力、通常戦力)の巨大さ、日露の戦力の大格差について述べた。お目を通していただけたら幸いである。

 ロシアは2010年6月から7月にかけて、択捉島を含むシベリア・極東地域で陸海空の2万の兵員を動員して軍事演習を実施している。今年2月9日ロシア国防省は、「ミストラル」級強襲揚陸艦を太平洋艦隊(本部、ウラジオストク)に配備し、北方領土周辺海域の「防衛」にあたらせると発表した(2月10付読売新聞)。セルジュコフ国防相は、北方領土の軍備強化計画を明らかにした(2月27日付読売)。

 ロシアのこうした一連の行動が、何を意味しているかは明白である。ロシアは最初から北方領土を返す意思など持っていない。逆に、北方領土の軍備も増強して、次の新しい領土の獲得、すなわち北海道侵略・占領に向けた準備をしているのである。北海道侵略が、「本格的な侵略事態」であることは言うまでもない。日本は「北方領土返還」などと呑気なことを言っている時ではない。全力で、北海道と日本全体を守るための軍備の増強に取りかからなくてはならないのである。

 前記した私の2010年11月25日脱の文をお読みいただければいいわけであるのだが、重複になるがここでも中川八洋氏の主張を要約して一部を以下に紹介していきたいと思う。

 ロシアは今も量的には、米国をはるかに凌駕する戦略核兵器を持っている。中距離・短距離の戦術核兵器の量も最大を誇っているし、戦場核でも最大である。ロシアの通常戦力も、優に自衛隊の数百倍を超える。この天文学的な軍事アンバランスを粉飾して、ロシアの軍事力を極端に下算(少なく見せる算定)するのが、日本のロシア専門家であり、防衛大学校の赤い校長と教官群であり、防衛省であり、日本のマスメディアである。

 新ロシアの国章は「双頭の鷲」であり、帝制ロシアのそれを維承した。国歌の旋律はスターリン作のソ連のものであり、ソ連を維承した。赤の広場はソ連時代のままであり、レーニンのミイラを祀るレーニン廟もソ連時代のままだ。新ロシアは共産主義を棄てたが、帝制ロシアとソ連の悪い部分はすべて転倒した矜持において相続したから、悪の帝国性は不変である。プーチン首相は、部下のメドベージェフ大統領を従え、2008年5月9日、侵略国家ロシアの復活を内外に高らかに宣言した。赤の広場で18年ぶりにソ連時代の軍事パレードを再開した。

 健全なロシア専門家であれば、ロシア帝国の復活宣言である2008年8月のグルジア侵攻をもって、ロシアは北海道本島への全面侵略を遠からず決断するだろうと警告したはずだ。日本のロシア専門家の多くは、あらゆる作為・情報操作を行うKGB工作員である。

 日本に投下できるロシアの水爆はおよそ3000発以上であり、これに1週間かからない。バックファイア爆撃機138機からの空中発射核巡航ミサイル、他の核搭載航空機(SU24、SU25、SU27、MIG29)460機からの核爆弾は、初回の出撃だけで1374基・個だ。もし日本が1機も撃ち落とせなければ、第2回の出撃で同数の核が投下される。計2748基・個だ。1基・個200キロトンなので、計54万9600キロトンであり、広島型原爆(13キロトン)の4万2277発分の爆発威力である。水上艦、原子力潜水艦からも核巡航ミサイルが発射されるし、ロシアのヨーロッパ部に配備されているICBMの一部も発射されることになる。戦略爆撃機ベアやブラックジャックも僅かであろうが投入される。射程が2500キロメートルや3000キロメートルの空中発射核巡航ミサイルが発射される。

 対日侵攻時のロシアの陸軍力、海軍力、空軍力を算定しなければ、それに抗して保持する日本の防衛力は算定できないが、防衛省は、日本が必要とする軍事力の算定を妨害すべく、ロシアの対日侵攻能力を算定しない。自衛隊にもロシアの対日侵攻能力を算定する専門家は一人も存在しなく、やろうにもやれない。

 防衛省の上級官僚で、共産党系や全共闘系でないものは稀にしかいない。『防衛白書』は、ロシアと通謀して嘘ばかりを書く「反日の政府文書」である。ロシアに媚を売るべく、ロシアの戦力を改ざんして超下算する。

 ロシアは対日戦争時、陸軍戦力についていえば、戦車8368両を振り向けることができる。このような数字を聞くと、わが自衛隊の将兵は「ウソッ!」と叫ぶ。防衛大学校で赤い校長や赤い教官たちから洗脳されたからでもあるが、実は軍事バランスの算定方法を4年間の在学中に防大生は一度も習わないからだ。防衛大学校は一般通念上の士官学校ではない。防大卒業生の99%が、英国の国際戦略研究所が毎年出す『ミリタリー・バランス』を読めない。戦車8368両も『ミリタリー・バランス』などから算出したもので、実は誰でもできる。

 ロシアはシベリア鉄道で、1週間もあれば8000から9000両の戦車(30ヶ戦車師団)を極東のナホトカ他の港湾に集積できる。それらを積み込み、30ヶ師団分の兵員と武器弾薬と食糧他も積み込み、事前に奇襲占領済みの石狩新港や小樽港他で積み下ろすのに、3週間はかからない。それほどロシア港湾をハイテク設備に近代化したのは、日立造船などの日本企業だ。仮想敵の港湾近代化や鉄道近代化をした企業は、敵国に軍事力を輸出したのであり(港湾、鉄道は軍事力の中の軍事力だ)、敵国と通謀した明白な外患罪の犯罪行為である。刑法82条他を適用して、摘発できるよう法令の整備を急がねばならない。

 プーチンは大統領になるや(2000年)、中学生以上の男子に軍事教練を学校の科目として復活させたから、ロシアはいつでも2000万の陸軍を編成できる。しかし『防衛白書』は、このロシアの予備役2000万を200万に減らす改ざんをなした。防衛省は、「巨大なロシアの核の脅威」を決して口にせず沈黙する。ロシアの軍事的脅威を不在とする。ロシアに全面的に屈し、「日本はロシアの属国」を省の方針としている。

 ロシアが次に侵攻するのは日本である。日本は、ロシアの侵攻を阻止し拒否する国防体制の整備に真剣に全力をあげる以外に、生存の方法がない。露独仏の3国干渉に涙を飲んで、国民をあげて文字どうりに臥薪嘗胆した、1895年から1904年の10年を再現する決断の時を迎えたのである(以上は中川八洋名誉教授『地政学の論理』の要約的抜粋である)。当時の日本の軍事予算は、国家予算の半分にもなった。このようにして、日本は国を守ったのである。

日本の存立を守り抜く戦略と軍備の構築を!

 侵略を抑止するには、日本は侵略国(中国、ロシア)に、損得勘定から、日本侵略を思い留まらせるだけの十分な損害を与えうる、強力な国防力を保持することが必要である。もちろん目指すべきは、日本を侵略すれば、日米連合軍の反撃によって、自分の方が敗北・降伏する事態になってしまうと、当該国が考えて侵略の意思を持たなくなる、そのような日米の強力な軍事力と共同戦略を構築していくことである。

 このためには、前記の私の論文に書いたように、日本は米国から購入して十分な中距離核戦力を保有することが絶対に必要不可欠である。短距離核、戦場核も購入する。さらに米国にはロシアとのINF条約(地上発射の中距離核戦力全廃条約)を破棄してもらい、米国の陸上発射の中距離核部隊を日本に配備させていくことも必要である。米国の陸上発射の中距離核部隊の日本配備とは、米国が東アジアでの核戦争に直接巻き込まれる状態を計画的に創り出すことによって、米国本国等の戦略核戦力が、ロシア、中国に対して確実に発射されるようにすることである。そうすることで、ロシア、中国に日本侵略の考えを断念させるのだ。

 この戦略をより確実にするためには、米国は陸上発射の戦術核部隊を、1980年代までのように、再び同盟国の欧州各国にも駐留させていくことが必要になる。米国は現在、海上・海中艦艇からも戦術核兵器(核トマホーク巡航ミサイルSLCM、空母艦載機の核爆弾)を撤去して保管しているが、直ちに再搭載して前方展開していかなくてはならないのである。また米国は本国他の戦略核を削減してはならず、逆に増強していかなくてはならない。核兵器こそは、西側自由主義各国の平和を守る最大の兵器である。日本が、通常戦力も大増強していかなくてはならないのは、言うまでもないことだ。また台湾、インド、韓国、NATO、オーストラリアとの同盟締結も必要である。

 日本は自らの防衛努力に取り組みながら、同盟国の米国に上記のことを説得していかなくてはならない。たとえば、米国は2010年4月に「核態勢の見直し」(NPR)を発表し、現在海上・海中艦艇から撤去して保管してある、核トマホーク(SLCM)の廃棄を明記したが、完全な誤りである。再搭載していかなくてはならないし、更に新しい型を開発していかなくてはならないのである(なお私は、2010、11、25脱の文では、「核トマホーク(SLCM)の2013年の退役を明記した」と書いてしまったが、退役ではなく、廃棄が正しい。ただし廃棄時期は言及されていなかった)。

 「新防衛大綱」のように、日本が今後も「専守防衛」に徹し、「非核3原則を堅持」して、「節度ある防衛力を整備する」だけで、中距離核ミサイルや空母や爆撃機等の兵器を保有せず、また米国の核部隊も日本に駐留させず、「他国(ロシアや中国や北朝鮮)に脅威を与えるような軍事大国とならない」ことは、中露の日本侵略を抑止できず、侵略を招来することになるのだ。「大綱」の立場は、国防政策・戦略ではなく、法に違反する、反国防政策・戦略なのだ。反日政策・戦略である。

 私たちは「新防衛大綱・新中期防」を直ちに破棄していかなくてはならない。立案した防衛官僚たちを免職させていかなくてはならない。反日反米の民主党左翼政権を今すぐ打倒して、強靭な保守主義に立脚した政権を創り上げて、国防費を少なくとも3倍以上にして、中距離核戦力等と通常戦力の航空戦力・海洋戦力・陸上戦力の大増強に取り掛からなくてはならないのである。そうしなければ、日本は滅亡する。

 新しい保守政権は、国防力増強のためにも、まずデフレ不況を止めなくてはならないが(今、消費税を上げたら、デフレ不況は悪化して税収は減少する)、一石二鳥の良い方法があるのだ。25兆円ほどある現在のデフレ・ギャップに相当する国債を、国会議決によって日銀引き受けで発行するのである。この国民負担ゼロの25兆円の財源で、軍備を増強していくのである。真の公共投資である。間違いなく景気は回復し、税収も増えていく。同時に政府は、国を衰退させる反日経済政策であるデフレ政策を採っている日銀政策委員会の全メンバーを交代させて、日銀に3%のインフレ目標を設定させていけばよいのである。

2011年2月28日脱

大森勝久


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