自民党政府は中国を「仮想敵国」と規定せよ

3%のインフレ目標を設定して経済を復活させよ

●自民党政府は3%のインフレ目標を設定して、4%以上の名目経済成長を実現せよ

 自民党は12月16日の衆院選挙で大勝し、294議席を獲得した。まずはよかった。12月26日の臨時国会での内閣総理大臣指名選挙を経て、安倍内閣が誕生することになる。

 安倍総裁は12月23日、フジテレビの番組で「日銀にはインフレ目標を設けてもらう。次の1月の金融政策決定会合で検討してもらうことになるが、もし受け入れを決定しない場合には、日銀法を改正し、日銀と政策協定を結んで、2%のインフレ目標を設ける。日銀に責任が発生する形にしたい。また日銀には物価の安定だけではなく、雇用の安定についても責任を持ってもらう」と述べた。これは良いニュースだ。自民党政府は必ず、1998年4月に施行された誤った新日銀法を改正して、インフレ目標を設定しなくてはならない。

 日本は1992年に景気後退に陥ってから、GDPデフレーター(国内総生産全体の物価)で見ると1994年から今日までデフレであり、消費者物価で見ると1998年半ばから今日までデフレである。日本は1980年から1991年までの平均実質経済成長率は4.5%で、平均名目経済成長率は6.2%であったが、1992年から2009年までは平均実質成長率は0.7%、平均名目成長率はわずか0.1%である(岩田規久男氏『「不安」を「希望」に変える経済学』参照。2010年7月刊)。

 日本を除くG7の各国は、1991年から2009年の間、平均4.5%程度の名目経済成長をしてきた(経済学者・高橋洋一氏)。リーマン・ショック(2008年9月)までの10年間の先進国クラブであるOECD各国の平均名目経済成長率は4.4%である(エコノシスト・安達誠司氏)。もし日本が1992年以降、他のG7並みの平均4.5%程度の名目成長をしてきていれば、今日の日本の名目GDPは1000兆円を超えている。国民の所得も2倍以上になっている。日銀が正しい金融政策を実行して穏やかなインフレ率(2%から3%)を実現してきていれば、そうなっているのだ。

 日銀は言葉では、「デフレ克服のために力強い金融緩和を行っている」とアナウンスしている。御用学者を使ってもそう主張させている。この言葉は「転倒語」であり、嘘であるが、マスコミ記者は簡単に洗脳されてしまう。そしてそのマスコミが国民を誤導していく。しかし、日銀の実際の行動はどうなのかといえば、「世界最低のマネー伸び率」「世界最低の物価上昇率(マイナス)」「世界最低の名目経済成長率」の実現なのである。日銀は確信犯であって、マスコミと一体となって国民を騙してデフレ政策を推進し、日本経済を衰退させてきたのである。

 日銀はデフレが克服されないことを問題にされると、自らの金融政策は棚上げして、金融政策以外の「デフレ原因」を山ほど述べてきたし、御用学者ら「日銀応援団」にも主張させてきた。だが、すべて他国の実例によって反証されている(岩田規久男氏『日本銀行ーデフレの番人』の「第3章、日銀理論ーデフレの責任は日銀にはない」を参照していただきたい。2012年6月刊)。岩田氏の主張を引用しよう。「日銀総裁から、『日本で、長期にわたってデフレが続くのは、企業と政府が成長率を引き上げる努力を怠ってきたからであり、日銀の金融政策はまったく関係がない』とまで言われて、反論もしない『おとなしい』日本の企業と政府とメディアとは、一体、何者なのであろうか」(同書72頁)。

 「日銀の独立性」の問題だが、日銀は日本政府の一機関であるから、政府から完全に独立して行動することなどできはしない。他国の中央銀行もしかりだ。これは世界の常識である。しかし、1998年4月に施行された新日銀法は、第3条で「通貨及び金融の調整における自主権は尊重されなければならない」となっており、また旧日銀法にあった内閣による総裁や副総裁解任権は廃止された。新日銀法は完全に誤った法律であり、<法>に違反していて無効であり、直ちに改正されなくてはならないのである。

 先進国でインフレ目標を採用していない国は日本のみである。インフレ目標採用国では、政府が中期的(1年半から2年程度)に達成すべき目標インフレ率を設定している。もちろん政府が一方的に設定するのではなく、財務大臣と中央銀行総裁とが協議して、政府が最終的に決定していく。政策協定である。中央銀行は中期的にインフレ目標を達成する責任を負う。達成できなかったときには、中央銀行総裁は説明責任を負う。解任される場合もある。中央銀行の「独立性」とは、この目標を達成するための手段を、政府から独立して決定できるという意味である(前掲書参照)。

 安倍総裁は12月16日に、米エール大学経済学部教授の浜田宏一氏を、経済政策担当の内閣官房参与に任命した。浜田氏は能力の高い立派な経済学者である。

 自民党は「政権公約」で2%のインフレ目標を掲げた。安倍総裁が日銀白川総裁に求めたインフレ目標も2%であった。しかし3%とすべきである。浜田氏も次のように述べていた。「インフレ目標は通常、消費者物価上昇率2%で十分だろうが、人々に定着したデフレ意識を転換させる時には3%でよい」(読売新聞12月13日)。

 自民党は「政権公約」で、「名目3%以上の経済成長を達成する」としているが、「名目4%以上」とすべきだ。リーマン・ショックまでの10年間のOECD諸国の平均成長率は名目4.4%である。正しい金融政策、財政政策を行えば、日本に出来ないわけはない。2005年から2007年の日本の平均実質成長率は2.2%であった。インフレ率が2%ならば、名目成長率は4.2%、インフレ率が3%ならば、名目5.2%の成長率となる。自民党の名目3%成長とは、インフレ率が2%ならば、実質成長率は1%ということになる。それでは、「日本を、取り戻す」「経済を、取り戻す」にはならない。

 日銀と日銀応援団(御用エコノミスト。彼らが多数派である)の問題は、日本を衰退させてきたデフレ確信犯の日銀・日銀応援団と、戦えない日本の経済・政治エリートの知的退廃を示している。日本では、あらゆる分野において真の専門性(真の学問性)が軽視ないし否定されている。そして「声の大きな主張」が「正しい」となってしまう。

 真理と学問性の否定は、真のエリートを否定する平等イデオロギーと国民主権と民主主義の毒の結果である。それは、<法>の支配も道徳の支配も否定し破壊していく。

 自民党政府は、白川総裁の日銀を徹底的に批判して、新日銀法を改正して3%のインフレ目標を設定していかなくてはならないのである。なお、「インフレ目標を設定して、長期国債をどんどん買ってマネーを供給していくと、インフレが止まらなくなり、ハイパーインフレーションになるおそれがある」などと、日銀と日銀応援団は言ってきたが、これもためにする嘘である。インフレ目標採用国で、そのようになった国はひとつもない。「インフレ目標3%」とは、インフレ率が3%を(一時的にではなく)恒常的に超えるようになれば、今度はインフレを抑えるべく金融引き締めを行うという意味であり、日銀には金融引き締めの能力が十分すぎるほどあるのだ。

●安倍自民党政府は尖閣諸島・南西諸島を守るつもりがあるのか?

 私は前回の文で、安倍総裁と自民党への批判を書いた。自民党は、2006年10月、当時の安倍首相が結んだ「日中の戦略的互恵関係」を、自己批判して破棄しなければ、保守政党として再生することは出来ないと。自民党は、日本侵略支配を目標にしている侵略国家中国を、「仮想敵国」と規定しなくてはならないのである。

 中国は12月11日、尖閣諸島沖の日本の領海を侵犯した。海洋監視船2隻が4時間にわたって領海侵犯したのである。9月の野田政権による尖閣諸島の国有化以来、15回目となる領海侵犯である。そして中国は12月13日には、国家海洋局所属のプロペラ機で、尖閣諸島周辺の日本の領空を約30分にわたって侵犯した。中国政府は「海と空から中国領土を立体的にパトロールした」と強弁した。中国機による日本領空の侵犯は今回が初めてである。

 安倍総裁は断固とした抗議をしたのであろうか。否である。衆院選の開票が始まった12月16日夜のNHK番組で、安倍総裁は「信頼ある日米同盟関係を取り戻すことが第一歩。その上で中国との関係を改善したい」と述べたのである(12月17日付読売新聞)。強い非難の言葉が無いばかりか、「関係を改善したい」と言ったのであった。これは中共に対する屈服そのものである。全ては「日中の戦略的互恵関係」から出てきている。

 もう少し具体的に見てみよう。中国の度重なる日本領域侵犯を非難して、同盟国米国では下院が12月20日(日本時間21日)に、上院が21日(同22日)に、尖閣諸島が、米国の対日共同防衛義務を定めた米日安全保障条約第5条の適用対象であることを確認する条項を盛り込んだ、2013年会計年度(2012年10月から13年9月)の国防権限法案を可決している。同法案は中国を念頭に、「第3者による一方的行動は、日本が尖閣諸島の施政権を持っているという米国の認識にいかなる影響も与えない」と明記している。同条約第5条が尖閣諸島に適用されるとの米国政府の立場についても、「同条約に基づく日本政府への責任を再確認する」とした。さらに、尖閣諸島海域を含む東シナ海を、「アジア太平洋すべての国に利益をもたらす重要なシーレーン(海上交通路)」だと位置づけている(読売新聞12月22日夕刊)。

 内閣総理大臣に就任することになる安倍総裁は、この力強い同盟国米国の支援表明を受けて、呼応して、断固として尖閣諸島を守るために中共と戦わなくてはならなかった。勇気百倍であるから、当然すぎることだ。自民党は「政権公約」に、「自民党は、国民の生命・領土・美しい海を断固として守り抜きます」「尖閣諸島について政策を見直し、実効支配を強化します。島を守るための公務員の常駐」(後者は「Jーファイル2012」)と書いていたのである。だが、安倍総裁はその行動において、これらの言葉を裏切ったのだ。また、「政権公約」にある「日米同盟の絆を強化し」も、裏切った。同盟国米国の信頼を大きく損なった。

 読売新聞(12月23日付)から引用しよう。「自民党は・・・・尖閣諸島に『公務員を常駐』などと明記している。しかし、安倍氏は22日〔米上院が可決したニュースが伝わった日であるー大森〕、山口県長門市で記者団に、『「検討する」と何回も申し上げてきた。「検討する」ことに変わりはない』と述べた。党の考えは一貫していると強調しつつ、公務員の常駐など尖閣諸島の実効支配強化策は当面「検討」にとどめ、関係が冷え込んでいる中国を刺激しない考えをにじませたものだ。・・・・靖国神社への参拝に関しても、安倍氏は総裁就任直後の10月、秋季例大祭に合わせて参拝したが、来年の春季例大祭での参拝は見送る意向だ」。なんと無惨なことであることか。国益を守る保守の立場ではない。

 中共は16日の衆院選以降、日中関係改善に向けた安倍氏の「誠意」を占う指標として、靖国神社参拝、憲法改正・国防軍保持、尖閣諸島の3点を繰り返し挙げ、また尖閣諸島国有化は安倍氏が決めたことではなく、安倍氏が善意を示せば中国側も善意で応えることができる、と主張してきた(12月21日付読売新聞)。安倍総裁はこの中共の「心理戦」にあっさり屈服したのであった。そして深刻なのは、これを批判する声が大きく湧き上がってこないことだ。

 安倍総裁の行動は、「日中の戦略的互恵関係」の立場から出てきている。「ウインウインの関係」「共存共栄関係」と言われる「日中の戦略的互恵関係」とは、保守の立場なのか、それとも左翼の立場なのか。後者であるのは明らかだ。  

 中国が、日本や台湾や東南アジア諸国を侵略征服することを国家目標にしていることは明白であって、疑いを容れない。共産党独裁国家の中国とは、自国内で自由を求める人々を徹底的に迫害しており、チベット民族、ウィグル民族、モンゴル民族等を侵略し植民地支配して徹底的に迫害している国家だ。これらは「国内における侵略」である。外交は内政の延長であるから、当然にも対外侵略となる。そんな独裁国家・侵略国家中国と「戦略的互恵関係」を結ぶのは、左翼の立場であり、反日の立場である。なぜならば、中国内で迫害されている人々に敵対する立場であり、中国との関係を悪化させず改善しようとして、中国を「仮想敵国」と規定できなくなり、対中国家防衛戦略と防衛態勢が全く構築出来ず、中国の侵略を招くことになるからだ。

 中共から見たとき、日本政府と日本国民が、両国関係を「戦略的互恵関係」ととらえてくれることは、中国の強国化(日本の技術、資本と協力を利用した)と、日本侵略征服にとって極めて好都合である。要するに、それは侵略戦略の一環なのだ。2006年10月、安倍首相(当時)は、中共が提起した両国の戦略的互恵関係を支持して締結して、日中関係を「改善」させた。だから中共は安倍氏を評価しているのでもある。「日中関係の改善」とは、日本が中国に屈服するということであり、その先には中国の日本侵略征服がある。

 本日(12月26日)、安倍内閣が成立したが、安倍自民党政権は、「日中の戦略的互恵関係」を自己批判して破棄しなくてはならない。「日中関係の改善」など拒絶しなくてはならない。尖閣諸島に直ちに陸上自衛隊部隊を配置しなくてはならないのである。そして尖閣諸島に88式地対艦誘導ミサイルを配置していかなくてはならない。南西諸島の島々にもである。私の前回論文(2012年11月28日脱)も参照していただきたい。

 保守言論界が余りにも軟弱で、安倍氏の思想性を正面から大々的に批判することができないから、また自民党の中からも大きな批判が出てこないから、このような無惨なことになっているのである。

 思想家や政治家や運動家は、無批判的な「応援団」ではない。内部からの的確な鋭い批判こそが、政治家と政党を成長させていく力である。政治家も思想家も運動家も、自らの誤りに気がつけば、直していかなくてはならない。人間は、自らに対してこそ厳しく在ることが最も大切なことである。誤りを認めることは恥かしいことではない。誤りを認めることを拒むことが恥かしいことなのだ。

 2012年12月26日脱

大森勝久


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