ロシアや中 国等全体主義国に対する第二次冷戦を開始すべし(2006.4.8)

1、日米同盟の絆の下での日本の核武装

大森勝久

(1)中国は100基の水爆で日本を狙っている

 過日、麻生外務大臣が「中国の軍事力は脅威だ」と正しく批判したところ、小泉首相は「脅威ではない」と述べ、「私は日中友好論者であり、中国の経済成長 は日本にとってのチャンスだと思っている」と論じたのだった。まだ記憶に新しいことだ。ODAという中国への「朝貢」を続けている国の首相らしい反国家 (反日)発言であるが、日本の保守派から激しい大規模な糾弾が起って当然のところであるが、そのようなものは全くなかったのだった。

 「小さな政府」だろうが「大きな政府」だろうが、政府の第一の責務は国家の安全、独立を守ることだ。国防の責務を果し得ない小泉首相は、この一事におい て失格である。だが、自民党の中から首相を批判する大きな声は起らなかった。もちろん、左派的な民主党からは批判を期待することは無理な相談である。日本 の政治家や官僚は、中国が百発以上の核弾頭ミサイル(水爆。その威力は広島型原爆の2000発分に相当する)で日本を狙っていることを知っているだろう か。その中国の核武装を、日本はODAで支援してきたのだ。

 「中共は『東風21号』など百発以上の核弾頭(すべて水爆)搭載の弾道ミサイルを、日本の主要都市を標的に展開している。だが日本で、日本全土を標的と する中共の核ミサイルとその水爆について、知っている日本人はほとんどゼロに近い。NHKを始め、日本のマスメディアがこぞって対中叩頭して報道規制して きたその一大成果であろう」「日本に関して驚くべきことは、何といっても、日本政府(防衛庁)が中共の核の脅威についていっさい検討したことがないという 職務放棄の異常さであろう。日本はその問題すべてを“丸投げ”的に米国に依存している。そして、米国の核戦力が中共の対日核脅威を完全に『抑止』している はずだとの、根拠ゼロ/検討ゼロの、いわば“信仰”だけに立脚している」(中川八洋教授『日本核武装の選択』2004年10月刊。72、73頁)。

 米国の「核の傘」の信頼性は100%ではなくなっている

 現在中国は、東風5号、5号改、東風31号、巨浪2号という合計数十基の対米攻撃核戦力を保有している。だから、米国の「核の傘」の信頼性、すなわち米 国の核戦力が、中国の対日核攻撃を抑止するその信頼性は、100%ではなくなっている。仮に米国の対中抑止の信頼性が60%だとすれば、抑止の失敗の確率 は40%だから、日本は抑止を100%にする方策(日米同盟下での日本の核武装他)を必死で考え、米国と協議して実施していかなくてはならない(前掲書 72、 73、95頁参照)。

 中国は日本や台湾や東アジア諸国を征服することを国家目標にしている。ミサイルや銃を撃つだけが戦争ではない。情報心理戦という戦争形態もある。中国は 今、日本に対して兵器を用いない情報心理戦という侵略戦争を展開しているのである。「靖国神社参拝」「歴史認識」での攻撃はそのひとつである。中国を「全 体主義の侵略国家」と認識してこそ、正しき日本人である。だが日本政府や政治家は、中国の軍事力を脅威でないとし、「日中友好」を唱えるのであるから、兵 器を用いない侵略戦争に完全に敗北してしまっている。

 日本人には正しき法思想が欠如している。だから、正義と悪を峻別できず、国防の義務を果せず、国家意識と愛国心すら希薄になってしまっている。もし、こ のままの状態で時間が過ぎてゆくならば、日本が核武装を決断しえなければ、15年後位には、日本は確実に核超大国のロシアと核大国の中国に分割占領されて しまうであろう。そうなれば、日本人は何百万人が殺害され、他の者も自由ゼロの迫害を受けることになってしまう。

(2)中川八洋教授の核武装提言に感応できない保守派

 国の統治は、真正なエリートだけが担うべきものだ。国防や国の威信の向上、国内の法道徳秩序の維持、正しき教育行政、正しきマクロ経済政策の実施などの 重要な法的責務は、真正なエリートにしか担えないからだ。日本の政治家、官僚でその資格を有する人は極めて少ない。東大出だろうと、真正な学問をしていな ければ大衆人である。政治は大衆に迎合して行なうものではない。日本国と法に忠誠を尽して、戦って実行していくものである。言論人を含め保守派は、戦う保 守派でなくてはならない。

 日本には、世界の碩学中川八洋教授がいる。日本国と自由世界の安全保障、政治哲学・思想等の分野でまさに天才の提言を精力的に行なっている。中川氏は 1970年代末から、日米同盟の絆の下での日本の核武装を提唱してきた。82年(と思う)からは「戦域限定核戦争戦略」を提起してきた。

 戦域限定核戦争戦略とは、侵略国家ソ連や中国に対する、日米欧等の共同の二段階の核戦争戦略の第一段階をなすものである。すなわち、核戦力を日本欧州等 に前方展開することによって、戦域を限定して米国を無傷のままに残すことによって(これを「聖域化」と言う)、第二段階における日米欧等の勝利を100% 確実にするのである。この戦略が構築されると、ソ連(ロシア)、中国は敗北が確実に予想されてしまうから、もはや日欧等へ侵略核攻撃を開始することが不可 能になる。完全に抑止され、完全に封じ込められてしまうのである。

 この戦略は、米国とNATO諸国が1983年から「ヨーロッパ戦域限定核戦争戦略」として実行していったものである。その結果は、ソ連の一時的ではあれ 大退却となった。東欧諸国の解放、旧ソ連のバルト三国等の解放となった。しかしソ連=共産ロシアは、「市場経済国ロシア」と名前を変えて西側諸国を騙し て、30年後の大反攻=大侵略を心に秘めて、軍備増強・経済力強化に邁進している。米国を始め西側諸国は完璧に騙されてしまっている。中川氏は90年代の 初めから、このことも一貫して主張してきた。例えば『大侵略』(ネスコ1990年12月)、『戦争の21世紀 蘇るロシア帝国』(学習研究社1992年6 月)。

 中川氏は99年9月『中国の核戦争計画』(徳間書店)を上梓し、2004年10月には同書店から『日本核武装の選択』を出版した。祖国日本を愛し、日本 の永続を願うならば、必読文献であることは明白だが、私の知るかぎりでは、保守派の政治家、言論人、官僚の中で、中川氏の主張を公然と支持する人はほとん ど例外の状態である。ここにも、日本の深刻な法的、倫理的、思想的、政治的、軍事的な問題性が象徴されている。

日本を救い得る書『日本核武装の選択』

 『日本核武装の選択』について述べていこう。同書は、ロシア、中国、北朝鮮の核攻撃、とりわけ核超大国のロシアと核大国の中国の侵略核攻撃から日本を守 り、日本を未来に永続させていく唯一の方策は、日米同盟の下での日本の核武装しかないことを詳細に論証している。

 同書は、日本が保有する核兵器は、核弾頭を含め全てを米国に発注し購入するとしている。走行式弾道ミサイル「パーシング2J」(射程2000km)× 100基、地上発射巡航ミサイル「トマホークJ」(射程3000km)×150基、海上発射巡航ミサイル「トマホークJ」(射程2500km)×250基 の3種類500基である。核ボタンは米国との二重鍵(ダブル・キー)とする、としている(132頁)。

 同書は、前述したロシア、中国に対する「戦域限定核戦争戦略」を提唱している。その場合、ロシアのヨーロッパ部の軍事目標の攻撃は米国の分担として、日 本の役割とはしないことにして、だから日本は長射程のICBM等は保有しないようにすると主張している。その理由として中川氏は、米国は自国に届く ICBM等は売ってはくれないし、日本には保守系の中に紛れ込んでいる反米屋(例えば福田和也)が想像以上に数多いし、極左集団の反米勢力も侮れないほど 強いから、日本の核兵器が万が一にも米国を標的とすることがないよう何重にも警戒しておくことが必要であり、日本を亡国に導いた「パール・ハーバー」の狂 愚を万が一にも決して再発生させてはならないからだ、と述べる(133頁)。

 私も、日本は長射程のICBM等の核兵器を保有しないとの中川教授の主張に賛同する。私はこれまで、米軍のICBM部隊の日本駐留とともに、日本自身で もモスクワ等を攻撃できるICBM・SLBMを米国から購入し配備する、と主張してきた。ここで修正しておきたい。

 ソ連がロシアと名前を変えたら、北方からの侵略の脅威、核の脅威は無くなってしまったと日本人は考えてしまっている。だがロシアの対日核戦力は、ソ連時 代よりも増大している。ロシアは今、1000発以上の水爆を一斉に日本に投下できる態勢にある。中国の対日核の十倍以上の脅威である。今日、中国の軍事力 の脅威はいくらかは論じられても、ロシアの脅威を警告する論者はほとんどいない。これは、ロシアの兵器を使わない対日侵略戦争=情報心理戦が中国以上に勝 利していることを意味している。また国防意識を喪失している日本人は、ロシアは現在、日本領土を侵略中である(北方領土)ということすら自覚できていな い。

 日本が独立国家で存続してこられたのも、日米同盟と米国の核の傘があるためであるに過ぎない。もしこれらが無くなれば、わが日本は明日にでも、ロシアと 中国に属国化されてしまうのである。日本人は奴隷的に支配されることになる。

 米ソ冷戦時代も、ソ連の核戦力の規模自体は米国のそれに優位していた。ソ連=ロシアが一時的に大退却をしたのは、米国とNATOがなした「ヨーロッパ戦 域限定核戦争戦略」に追いつめられたからだが、米国は、ゴルバチョフソ連共産党書記長に騙されて、西ヨーロッパに配備したパーシング2ミサイルとトマホー クミサイルを全廃するINF条約を批准してしまったのである。もはやそれらのミサイルもこの戦略も無い。西側諸国はソ連=ロシアの大退却という謀略に美事 に騙されたのである。

 冷戦後も、世界最大の核超大国はロシアであって米国ではない。しかも米国は、2002年ロシアとの間でモスクワ条約を締結してしまった。米国は、条約に 拘束されて核軍縮を進めるから、ロシアの核戦力の優位とその格差は益々大きくなっていく。情報心理戦の核心は、敵を騙すことであり、それも、自国を味方だ と思い込ませ、かつ自国の軍事力・経済力を弱小だと相手に思い込ませることだ。ロシアは情報戦に勝利している。ロシア、中国がしきりに「友好」を言うの は、このためである。西側は基本的なところが理解できていない。ロシア、中国の国家目標(世界征服、東アジア征服)は不変だ。

 なぜロシア、中国は情報心理戦に勝利できるのか。そのひとつの理由は、西側のロシア専門家、中国専門家のほとんどは、ロシア、中国のエージェントである からだ。西側の知識人には左翼が非常に多い。彼らがロシア、中国のエージェントになる。もうひとつは、西側の政府の要路にも、ロシアや中国のエージェント である左翼が、正体を偽装して侵入しているからだ。

 中川八洋教授は、以上のようなことを以前から一貫して主張してきている。私は氏の著書から大いに学んできた。残された時間的余裕は多くはない。今から核 武装に取り組んでいかなければ、祖国の安全、独立、永続は守れなくなってしまう。

 核武装という日本国家の安全保障政策の核心を論じるには、敵国(ロシア、中国、北朝鮮)を特定し、それぞれの核戦力を算定することが大前提となる。日本 では中川教授ただ1人が、しかも詳細にこれを行なっている。これから導き出された日本が保有する核兵器の種類と数が、前記したものである。日本のこの核戦 力は、日米の二段階戦略の第一段階の「戦域限定核戦争戦略」で使用されるものであって、米国の巨大な核戦力と有機的に連関して存在するものなのである。

中川教授の偉大さが理解できない保守派

 なぜ保守言論人、日本政府、政治家は、日本の国益を守り日本の永続を保障する正しき政策と戦略を提唱している中川教授から、学ぼうとしないのだろう。政 府や政治家はもちろんのこと、日本人には国防の義務があるのだから、最も優秀な人から真摯に学ぶのは当然過ぎることだ。私益を捨て、国益の立場、法の支配 の立場に立脚するならば、中川教授に学ぶことはごく自然の成り行きである。結局、中川教授の偉大さが理解できない。ロシア、中国の国家目標と脅威が認識で きない。つまり日本の安全と独立と永続を守り抜くための能力が不足している、ということになろう。

 もし総合月刊誌が中川教授に、国家安全保障に関する論文執筆を頻繁に依頼し、保守言論人が氏を強く推奨することがなされていれば、心ある政治家、官僚、 国民の対ソ連=ロシア認識、対中国認識と日本の国防思想は劇的に深化発展していき、日本は米国の協力の下で核武装を実現出来ていたであろう。

 しかし、「保守系」雑誌と言われている『正論』や『諸君!』等の編集部にも、大東亜戦争(1937年以降)を「自存自衛」の戦争と捉える確固たる反米主 義者がかなりいて、親米の中川教授を忌避してきたのである。また保守系言論人の中にも、同様の反米主義者や嫌米主義者がすこぶる多く紛れ込んでいて、彼ら が総合月刊誌の常連執筆者になってきた。当然ながら彼らは中川氏を嫌ってきた。

 保守派は親米である。真正な保守主義者の昭和天皇が、戦前から一貫して親米英であられたことで明白である。日本は国民レベルにおいても、戦前から親米英 である。「反米保守」との自称もなされているが「反米嫌米派」は断じて保守派ではない。私は便宜的に「右翼」と規定しているが、彼らは親米の日本政府と親 米の日本国民にも敵対するから、反米反日派なのである。だから「右翼」でもなく、本質的に左翼なのだ。共産主義とは別の左翼である。

 彼らは保守系言論界において強い勢力を持っているために、保守派も彼らの言動に惑わされたり、洗脳されている。そういう面からも保守派は、中川教授を強 く推奨することができないできたと思われる。日本が米国との同盟を強化し、米国の協力を得て核武装を実行していくためには、私たちは、共産主義勢力を批 判・解体するとともに、「右翼」も批判・解体していかなくてはならないのである。(2006年3月20日記)

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