中国、ロシアと対峙する、日米同盟の下での日本の核武装(下)

 前回は時間になってしまったために、ともかくまとめるために最後の部分が、節見出しも内容も唐突なものになってしまった。重複するが、改めて前文の続きとして書いていきたい。

ロシアは日本領土の「北方領土」、北千島、南樺太を侵略し不法占領を続けている

 ロシアのメドベージェフ大統領は11月1日、日本固有の領土である「北方領土」の国後島を訪問した。国の元首が訪問するのは、ソ連時代を通しても初めてのことだ。なぜこの時に訪問したのか。中国による尖閣諸島奪取のための攻撃も、理由は同じである。民主党政権は左翼政権であり、だから反日反米であって、日本の国益を守る政権ではないこと、そして日米同盟関係を破壊していく政権であるからである。

 メドベージェフの訪問について、ロシア大統領府は「大統領が自国領土を訪れるもので、外国の指図は受けない」と述べ、ロシア・ラブロフ外相も「大統領の国内視察と対日関係には、何の関連もない」と言い放った(11月1日)。つまり、「北方領土」はロシアの領土だと正面から主張したのであった。ロシア(ソ連)は日ソ中立条約を破り、日本に武力侵略を開始し(1945年8月)、日本の固有領土の「北方領土」(4島)等を不法に占領してきたのだが、公然とロシア領土だと宣言したわけである。ロシアがその先に見ているのは、北海道占領である。

 ところが民主党反日政権は、駐露大使を召還して抗議することすらしなかった。前原外相は、河野駐露大使の一時帰国(わずか5日間)について、「今回は事情を聞くための一時帰国だ」と、「抗議」の言葉さえ避けて記者会見(11月2日)で述べた。大使自身が「抗議のためではなく、事情を説明するための一時帰国だ」とモスクワで記者に語っている(11月3日)。前原外相は記者会見(11月2日)で、「日露間の協力関係を強めていきたいという方向性は何ら変わらない」とも述べているから、民主党政権が、最初から国益を守る意思がないのは明白である。

 日本の領土を不法に占領している侵略国家ロシア、つまり日本国の主権を侵害し続けている侵略国家と、「協力関係を強めていきたい」と言うことは、「日本はロシアの属国です」と述べているのと同義である。民主党は尖閣諸島、東シナ海、琉球諸島の奪取を狙っている中国と、「戦略的互恵関係を深めていきたい」と言う。民主党政権は、日本領土と日本そのものを、侵略国家のロシアと中国に貢ぐことをひそかに狙っている反日亡国政権であり、日本国の政権ではない。

 ロシアが侵略し不法に占領している日本領土は、いわゆる「北方領土」(4島)だけではない。得撫島以北の「北千島」もそうだし、南樺太もそうである。だから、日本がロシアに対して返還を要求する領土は、「北方領土」と北千島と南樺太でなくてはならない。

正しい「北方領土」は4島に北千島と南樺太を加えたもの

 歴史的なことを、中川八洋氏の著書『ゴルバチョフの嘘』(1987年11月刊)と『ソ連が悪い』(1991年4月刊)からまとめてみる。1855年の「下田条約」以前は、樺太全島と南千島(つまり択捉島と国後島)が日本領土、得撫島が日露が争奪していて未確定の領土、それより北の北千島諸島がロシア領土であった。色丹島と歯舞群島は北海道の一部であり、もちろん日本領土である。

 「下田条約」で日本は、共同統冶とすべき得撫島をロシア領土にし、定住して漁業、農業を営むロシア人は存在せず、一方定住して漁業や農業を営む日本人がいた、日本固有領土の全樺太を、ロシアとの「雑居の地」(共同統治、共同主権)と、してしまった。当時の世界では、「樺太=日本領土」は常識であった。一般ロシア人の樺太移住は、下田条約の2年後の1857年頃からである。下田条約は、ロシアの軍事的恫喝(樺太の対岸にロシア軍2万6千人が集結していた)によって強いられたものであった。下田条約は南千島を日本領土だと確認している。

 1875年の「樺太・(北)千島交換条約」で、全樺太がロシア領土、得撫島以北の北千島が日本領土となった。ロシアは軍事力を背景に、不毛の北千島と樺太の交換を日本に強いたのであった。この条約で、全千島列島が日本領土になった。

 日本は日露戦争に勝利して、1905年の「ポーツマス条約」で南樺太を領有した。

 1925年の「日ソ基本条約」は、第2条で「ソ連は1905年のポーツマス条約が完全に効力を存続することを約す」としており、日本の南樺太領有を確認している。また同条約は、1875年の「交換条約」により、全千島が日本領土であることも確認している。

 日本は1951年9月、サンフランシスコ平和条約に署名した(同条約は1952年4月発効)。日本は「サ条約」で「南樺太と千島列島(クリル諸島)」を放棄したが(「サ条約」はその帰属は定めていない)、ソ連は「サ条約」に加盟しなかった。だから日露間においては、「サ条約」は無関係である。日本は同条約に加盟した45ヵ国に対して、南樺太と北千島列島を放棄したが、ロシア(ソ連)に対しては放棄しておらず、日露間においては、両領土は今も日本領土のままである。

 なお、「サ条約」で言う「千島列島(クリル諸島)」とは、得撫島以北の「北千島列島」のことであり、南千島の択捉島と国後島は入っていない。むろん、北海道の一部たる色丹・歯舞は言うまでもない。「下田条約」(1855年)と「交換条約」(1875年)が、いずれも第2条において、「クリル諸島とは、得撫島以北の千島列島である」と定めているからである。

 ロシアは、日本を騙すために「クリル諸島には択捉・国後が含まれている」と、両条約に反することを承知の上で主張している。さらにロシア外務省は本年11月初めには、色丹と歯舞を「小クリル諸島」と呼び、「メドベージェフ大統領は小クリル諸島も訪れる意向だ」と声明した。私たちはロシアに騙されてはならない。

 南千島の択捉・国後と北海道の色丹・歯舞、いわゆる「北方領土」は、1945年8月のソ連の侵略までは、一度もロシア(ソ連)領土になったことはない、日本固有の領土である。ロシアが不法に占領しているものだ。

 北千島列島も、日露間においては今だに日本の領土であり、ロシア(ソ連)が1945年8月の侵略によって、不法に占領を続けているのである。

 日本は「ポツダム宣言」を受諾(1945年8月14日)した。「ポ宣言」の第8項には、「カイロ宣言」(1943年11月)の「履行」がうたわれているから、日本はこれによって、南樺太については放棄していると解される。カイロ宣言は「日本国はまた、暴力および貪欲により、日本国が略取したる他の一切の地域より駆逐せらるべし」とうたっているからだ。しかし、ロシア(ソ連)も「ポ宣言」に加盟したから、カイロ宣言の「領土拡張のなんらの念も有するものにあらず」を履行しなくてはならない。従ってロシアは南樺太も領有できないことになっている。

 ロシアは以上の日本領土を侵略し不法占領を続けているが、中川八洋氏によれば、ロシアが違反している条約等は次のようである。すべての領土について、「日ソ中立条約」違反と「ポツダム宣言(第8項のカイロ宣言)」違反が共通している。それに加えて、南千島には、「下田条約」違反と「日ソ基本条約」違反が加わる。北千島には、「交換条約」違反と「日ソ基本条約」違反が加わり、南樺太には「日ソ基本条約」違反が加わる(『ソ連が悪い』165頁他)。

 ロシアが法を否定する非文明国家の侵略国家であることが如実に示されている。法的には日本は、いわゆる「北方領土」(4島)については、無条件にロシアに返還要求ができる。サンフランシスコ平和条約は、日本が放棄した南樺太と北千島(クリル諸島)の帰属を定めていない。法理論上、2国間交渉で定めるのが適切だと考えたからだ。北千島は、日露間においては今も日本領土のままだから、日本はロシアから取り戻して、「サ条約」加盟の45ヵ国と条約改訂を行えばよい。

 南樺太だけは、ポツダム宣言(第8項のカイロ宣言)受諾(8月14日)で、日本は南樺太を放棄し、ロシアも領有できず、帰属が定まっていない土地になった。しかしロシア(ソ連)は、日ソ中立条約(1946年4月まで有効)を破って、日本の降伏・停戦後の8月16日から南樺太、全千島、色丹・歯舞を武力侵略して奪ったのであり、ポツダム宣言(第8項のカイロ宣言)に違反したのである。だから、同宣言に基づく「日本の南樺太の放棄」は、ロシアとの間においては無効であり、従って南樺太は、日露間においては日本領土のままである。日本は北千島と同様に、ロシアから取り戻し、「サ条約」加盟の45ヵ国と条約改訂を行なっていけばよいのである。

 1956年10月の「日ソ共同宣言」以前は、「北方領土」と言えば、北千島も南樺太も含んだものであった。外務省の「北方領土」の定義がそうであった(中川八洋氏『福田和也と《魔の思想》』、2005年9月刊、269頁)。実際、1955年のロンドンにおける対ソ交渉において、日本は南樺太と北千島も4島とあわせて返還要求したのである。だが翌年1956年のモスクワ交渉では、南樺太と北千島の返還を要求しなくなった。私たちは、全千島も南樺太も日本領土だとの原則を貫ぬいていかなくてはならないのである。

ロシアはまず北海道占領を狙う一「日露首脳会談」について

 私は今、ロシアが侵略し不法に占領している日本領土について述べた。また日本は、これらの日本領土(4島に加えて北千島も南樺太も)を返還させなくてはならないと述べた。しかし私は現在、いわゆる「領土返還交渉」をすすめれば、これらの領土を取り戻すことができるとは思っていない。だから、取り戻すことができると幻想して、返還交渉を力強く展開していくべきだ、と主張しようとしているのではない。それは極めて危険なことなのだ。ロシアの本性とロシアの国家目標を認識できないままだからだ。

 ロシアはこれらの日本領土を返す意志など微塵も持っていない。そればかりかロシアは、これらの占領している日本領土を軍事基地として、更に北海道を軍事侵略し占領しようとしているのだ。北海道侵略は、西は沿海州、北は南樺太、東はいわゆる北方領土(4島)の3方向から包囲する形で実行される。日本は南から中国、北からロシアによって侵略されようとしている。中露は同盟関係にある。私たちはまず、この国際環境を認識しなくてはならない。

 領土問題を述べたのは、ロシアは国際法(条約)など否定していて拘束されない非文明の野蛮国家、侵略国家であることを明らかにするためである。ロシアを動かすことができるものは力(軍事力)のみだ。ロシアは口を開けば、「友好」「協力」「信頼関係」などと言うが、本当に友好、協力、信頼関係を追求するのであれば、前記した条約等に違反して侵略し不法占領している日本領土を、直ちに日本に返還するはずだ。謝罪し賠償もする。だがロシアは「それらはロシア領土だ」と強弁して、当然視している国である。「友好」「協力」「信頼関係」は、「反対語」なのである。私たちはロシアと中国の外交は、嘘が原則であることを深く認識する必要がある。

 11月13日、「日露首脳会談」が行なわれた。メドベージェフ大統領は、「あらゆる分野で協力し、特に経済分野での関係を発展させていくことで、両国間の雰囲気を改善していくべきだ。4島の経済開発にも日本に参加してもらいたい」などと述べた。菅首相も「経済的にも協力関係を深めていくことが必要だ」と応じている。

 経済力とは、軍事力である。港湾も道路も鉄道も空港も軍事力でもある。従ってメドベージェフ大統領の発言は、日本に経済協力させて、ロシアのシベリア・極東地方と樺太と「北方領土」の経済開発を進め、経済力すなわち軍事力を増強させて、その力を持って北海道侵略と占領支配を狙う、という意味である。菅首相は記者会見において、「経済的にも日露の協力関係が深くなると、領土面にも良い影響が出てくるので、経済的な協力関係を深めていくことが必要だ」と言っていた。この発言は、ロシアの首相の発言だ。菅氏は、日本の国益を守り日本を守る、日本の首相ではなく、ロシアの首相だ。ロシアはこれまで、北方領土返還をほのめかして、つまり騙して、日本から経済協力を引き出してきたからである。

 さらに菅首相は首脳会談で、「日本とロシアはアジア太平洋地域での協力、国際舞台(国連安保理等)での協力も必要だ」と述べ、メドベージェフも「そうしていこう」と応じている。菅氏は記者会見では、「日露の西太平洋におけるパートナーシップのために、信頼関係を深め、友好を深めていくために、努力していきたい」と言った。菅氏は、現在日本領土を侵略中で、これから北海道を奪い取ろうとしているロシアを、パートナーと位置づけて、アジア太平洋地域と国連安保理等で協力していく、と言うのである。

 日本は国の安全と存続のためには、米国など同盟国と協力して、侵略国家のロシアと中国を、軍事的・政治的・経済的に包囲し封じ込めていかなくてはならないのに、菅首相はメドベージェフと一緒になって、その逆を主張する。民主党左翼反日反米政権は、ロシアと中国に日本を侵略させようとしているのだ。左翼は反日であるが、反日になると、日本を侵略しようとしている国(ロシア、中国)が仲間に見えるのである。

 さてロシアの米国攻撃用のSLBM搭載の戦略原子力潜水艦は、東側ではオホーツク海を発射場にしている。それを防衛しているのが、南北千島列島と樺太である。そこの軍事力である。もし日本がこれらの領土を取り戻し(45ヵ国との条約も改訂する)、米軍基地も設置すると、ロシアの戦略原潜はオホーツク海に潜めなくなる。日米は宗谷海峡と千島列島の各海峡を封鎖できるようになり、ロシアは西太平洋へ出られなくなる。ロシアがすんなり、これらの日本領土を日本に返還するはずがないことが、理解されるであろう。軍事をタブー視している日本だが、軍事の観点を欠落させたら、物事の本質はまったくつかめないのだ。ロシアが奪った領土を返還するときは、外国に軍事的に包囲されて、国家が存亡の危機に直面したときである。

 ロシアが、北海道を侵略し領有せんとする軍事的理由は次のとうりである。北海道が日本領土であれば、日米の対潜哨戒機などが、三沢基地や千歳基地から北海道上空を通過して、オホーツク海のロシアの戦略原潜を攻撃することができる。津軽海峡を封鎖できるし、宗谷海峡に対しても攻撃ができる。しかしロシアが北海道を奪い取ってしまえば、これらが不可能になる。それだけではない。室蘭など質の高い不凍の軍港をいくつも入手できる。東京、大阪等の日本の主要都市を制圧できる空軍基地が入手できる。沖縄、グアムの米軍基地を攻撃できる空軍基地を保有できる。これらは中川八洋氏が『ソ連は日本を核攻撃する』(1982年8月刊、17,18頁)で主張されたことである。

 ロシア(ソ連)は1945年8月に、北海道にも侵略することになっていた。ワシレフスキー極東軍総司令官は、スターリンから北海道侵攻の命令を受けていた。日本がポツダム宣言を受諾して降伏・停戦した直後の8月16日、スターリンはトルーマン米大統領に対して、北海道の北半分をロシア(ソ連)に分割占領させてくれと要求している。トルーマン大統領は即時に拒絶した。

 1989年2月8日のモスクワ放送は、1985年にロシア(ソ連)が北海道侵攻演習を行ったことを堂々と認めている。ロシアは、国家の安全と領土の拡大のために、一度狙った他国の領土は、どこまでも狙い続ける(中川氏、前掲書および『ソ連が悪い』)。

 中川八洋氏の『地政学の論理一拡大するハートランドと日本の戦略』(2009年5月刊)の主張を、抜粋的に紹介したい。

 新ロシアは、プーチンとKGBの共同的独裁のもと、石油・天然ガス等の資源輸出の厖大な利益をすべて軍拡に投入している。プーチン首相は、部下のメドベージェフ(大統領)を従え、2008年5月9日、侵略国家ロシアの復活を内外に高らかに宣言した。赤の広場で18年ぶりにソ連時代の軍事パレードを再開した。新ロシアは、共産主義を棄てたが、平和愛好国家に変貌したのではない。白い帝制ロシアと赤いソヴィエト共産帝国の、その悪い部分はすべて、転倒した矜持において相続した。このため、新ロシアの悪の帝国性は変わっていない。

 新ロシアの国章は「双頭の鷲」で、帝制ロシアのそれを継承した。新ロシアの国歌の旋律はスターリン作のソヴィエトのそれであり、傲然の拳を誇示してソ連を継承した。赤の広場はソ連時代のままだし、レーニンのミイラを祀るレーニン廟もソ連時代のままである。戦争に終始した74年間のソ連の対外政策を非難するロシア民族はいない。日本のロシア専門家の多くは、ロシアの内政と対外政策を意図的に混同して区別しないなど、あらゆる作為・情報操作を行うKGB工作員である。

 ロシアは核戦力ではいまだ米国に並ぶ超大国である。ロシアが有しているその他の軍事力も、優に自衛隊の数百倍を越える。この天文学的な軍事アンバランスを粉飾して、ロシアの軍事力を極端に下算(少なく見せる算定)するのが、日本のマスメディアであり、日本のロシア専門家であり、防衛大学校の赤い校長・教官群であり、防衛省である。

 健全なロシア専門家であれば、ロシア帝国の復活宣言である、2008年8月のグルジア侵攻をもって、新ロシアは択捉島・国後島・色丹島・歯舞島などに侵略している延長上に、北海道本島への全面侵略を遠からず決断するだろうと、警告したはずである。

 帝国が、次に侵略するのは日本である。日本は、ロシアの侵攻を阻止し拒否する国防体制の整備に真剣に全力をあげる以外に、他に生存の方法がない。露独仏の3国干渉に涙を飲んで、国民をあげて文字どうりに臥薪嘗胆した、1895年から1904年の10年を再現する決断の時を迎えたのである(16頁から21頁)。

ロシアの対日核戦力等一中川八洋氏の『地政学の論理』より

 保守系の言論人や政治家は、なぜ中川八洋氏の著書から学ぼうとしないのであろうか。私は著名な方で、この『地政学の論理』を推薦する人を見ていない。私はホームページで読者の方々に紹介してきた。中川氏は2004年10月には、『日本 核武装の選択』を出版された。氏はこの書で、日本の対露、対中の核戦略について提起された。私はホームページで援用しつつ、人々に紹介したが、著名人でこの書を援用する人を見ていない。中川氏は中国の脅威について、すでに1999年9月に『中国の核戦争計画』を出されている。私はすぐに小冊子の中で援用し、心ある人々に伝えようとした。しかしながら著名な方で、この著書を引用する方はいなかったと思う。今問題になっている尖閣諸島のことも、「第6章 尖閣諸島の不法占拠を狙う中共一海保に対応能力は無い」として展開されていた。

 べつに中川氏の著書を引用しなくても、学んだものを自身の思想にして、自らロシアの対日核脅威等を主張すればいいだろう。日本を救い得る偉大な思想家がいるのに、人々は学ぼうとしない。そのために氏の貴重な主張は、その他の「大きな声」の中で埋もれてしまい、社会的な影響力を大きく削がれてしまう。その結果、日本は国防ができず、国家滅亡の危機を深めていくことになる。学ぶことができないのは、その人に、中川氏の主張の重要さを認識するだけのものが備わっていないということだし、既に誤った思想に脳を支配されてしまっているということである。あるいはまた、自らの小っぽけな名声を守ることや、あるいは雑誌編集者との関係を維持することを、国益よりも優先するためだろう。

 「日本では、ハートランド〔ロシアのこと〕の核脅威を、警鐘するものがひとりもいない。このことは、日本政界・政府・防衛省ならびに学界、マスメディア界、言論界、教育界が、ロシアKGBの情報操作に完全に統轄され支配されている現実を明らかにする。情報や対外認識の独立が主権国家の要締である以上、日本はすでに「ロシアの属国」である。ロシアに頭をレイプされている今日の日本とは、かつて跡形もなく滅んだカルタゴのような、国家滅亡寸前の主権喪失の国家である。

 ハートランドの対日核脅威に対して、まず日本がすべきことは、その巨大な核戦力やその他の対日侵攻能力を算定することである。敵の侵略・攻撃力の算定なくして、それに対抗する日本の防衛力は算定できない。ところが日本では、防衛省がロシアは仮想敵ではないと同じ意味で、「ロシアの核脅威」の7文字を決して口にせず沈黙する。ロシアの軍事脅威を不在とする。ロシアに全面的に屈し、「日本はロシアの属国」を省の方針としている。

 現実にも、日本はロシアに北方領土(南樺太、国後・択捉島など)を貢いで、この日本の固有の領土内にロシアの軍事力を駐兵させてあげるばかりか、その軍事基地の強化のため、樺太の石油生産や天然ガス採掘・液化から、港湾等の整備まで、いや日本のハイテクまですべて提供している。プロジェクト「サハリン2」は、ロシアの樺太からの対日侵略軍事力を数十倍に強化した」(242頁から243頁)」。

 以上の引用だけでも、この著書の重大さが認識できるというものである。さらに同書より、抜粋的にまとめていきたい。

 日本に投下できるロシアの水爆はおおむね3000発以上である。これに1週間かからない。日本の反核運動は、日本国を呪い、日本を敵として牙をむく、ロシアの対日侵略先遣部隊である。

 爆撃機(バックファイヤー)138機からの空中発射巡航ミサイル(ALCM)、およびその他の核搭載航空機(SU24、SU25、SU27、MIG29)460機からの核爆弾は、初回の出撃だけで1374基・個だ。もし日本が1機も撃ち落とせないとすれば、第2回の出撃で同数の核が降ってくることになる。計2748基・個だ。1基・個200キロトンなので、計54万9600キロトン。広島型原爆(13キロトン)の4万2277発分の爆発威力である。

 また1隻の巡洋艦(スラバ級)、1隻の駆逐艦(ソブレメンヌイ級)、4隻の原子力潜水艦(オスカー2級)の計6隻の艦艇から、巡航ミサイル(SLCM)が計120基が日本の主要都市等へ撃ち込まれることになる。核弾頭威力が大きいので、120基で5万5200キロトンになり、広島原爆の4246発分に相当する爆発威力である。日本がこれらの艦艇を撃沈できなければ、最低でも第3撃まで攻撃が続くので、合計で広島原爆1万2738発分の核爆発となる。

 さらに、ロシアのヨーロッパ地域に配備されているICBMの一部も発射される。SS25とSS27が50基(核弾頭威力は1基550キロトン)発射されると、2万7500キロトンとなり、広島原爆の2115発分の核爆発威力となる。このほか、戦略爆撃機のベアH6やベアH16それにブラックジャックも僅かであろうが投入される。そうすると、射程が2500キロメートルもある空中発射巡航核ミサイルAS15Aや、射程が3000キロメートルもあるAS15Bが、東シベリア上空から日本にぶち込まれる。1基200キロトン強の威力である。日本には撃ち落とす兵器がない。MD(ミサイル防御)は巡航ミサイルには役に立たないのだ。

 軍事力の整備にあたっては、「敵を上算し、自国を下算する」のが国防のイロハだが、防衛省はこれを転倒する。『防衛白書』は、ロシアに媚を売るべく、ロシアの戦力を改ざんして超下算し、自衛隊の軍事力は風船のように膨らます。自衛隊の戦力を可能な限り弱体化するのが、転倒のシビリアン優位にあぐらをかく防衛省の永年の方針だ。防衛省の上級官僚で、共産党系や全共闘系でないものは稀にしかいない。

 防衛白書は、ロシア海軍の前記の120基の核巡航ミサイル(SLCM)を隠す。通常戦力について、ロシアは戦車8368両を対日侵攻に投入することができるが、「白書」は超下算する。ロシアはシベリア鉄道で、1週間もあれば8000から9000両の戦車(これは戦車師団でいえば30ヶ師団である)を極東のナホトカ他の港湾に集積できる。しかも、それらをナホトカ他で積み込み、事前に奇襲占領済みの石狩新港や小樽港その他で積み下ろすのに、この30ヶ師団分の兵員、それが要する武器弾薬や食糧その他、これらすべての北海道上陸に、3週間はかからない。それほどロシア港湾をハイテク設備に近代化したのは、日立造船などの日本企業である。

 仮想敵の港湾近代化や鉄道近代化をした企業は、敵国に軍事力(港湾や鉄道は軍事力の中の軍事力である)を輸出したのであり、敵国と通謀した明白な外患罪の犯罪行為である。刑法82条他を適用して、これらの企業を摘発できるよう法令の整備を急がねばならない。

 ロシアは現在、戦車を7万両保有している。対日用8千から9千両はその1割程度でしかない。ロシアの戦車生産能力は、最大で年3500両。毎年自衛隊を5つほど作れる規模だ。現在でも、年700両を生産できる態勢にある。日本の戦車生産能力は、90式で年20両程度である。

 ロシアは、2000年、プーチンが大統領になるや、中学生以上の男子に軍事教練を学校の科目として復活した。いつでも2000万人の陸軍を編成できる。しかし「白書」は、このロシアの予備役2000万を200万に減らす改ざんをなした。

 極東空軍力の日露の大ギャップは、ロシアの663機に対して日本は262機である。この日本の劣勢を誤魔化すために、「白書」は海軍力である対潜哨戒機P一3Cを、空軍力にする作為をなした。また実戦能力のない練習機のF一1や中古すぎてどうにもならないF一4までを、対口空軍力としている。さらに「白書」は、ロシアの航空機名「SU24、25、27」とか「MIG29、31」を、わざわざ消して、日露間の航空機の質的差異がわかって、日本のレベルの低さが判明しないように作為している。日本は爆撃機や戦闘爆撃機が1機もない。爆撃機がないから、日本には空中発射巡航ミサイル(ALCM)が1基もない。「白書」はこのことを黙して語らない。

 極東の海軍力についても、日本は貧弱で、原子力潜水艦を持たない後進国海軍である。日本はロシアと戦闘ができる潜水艦はない(同書243頁から251頁)。

 これを読まれて、どのようにお感じになられただろうか。このような重要な著書を無視し続ける保守系の言論人とは、一体どうなっているのだろう。祖国を守らんとする姿勢が弱いことは疑いようがなかろう。読者の方々には、是非とも『地政学の論理』をお読みになっていただきたいと思う。

ロシア、中国を核包囲・抑止する西側の世界戦略一「核兵器の地政学」

 ロシアは今も量的には、米国をはるかに凌駕する戦略核を保有しているし、中距離・短距離核兵器の量についても、最大を誇っている(中川八洋氏)。中国、ロシアの対日侵攻核戦力について述べたが、日本は核兵器を保有していない。しかしロシアも中国も、日本他を軍事侵略・併呑することはできなかった。この歴史的事実が、米国が同盟国に約束する「核の傘」(拡大核抑止力)が機能していることを示している。

 米国は、ユーラシア大陸の周縁部(リムランド)とその周辺海域に、中距離核戦力を前方展開してきた。地上発射弾道ミサイルと巡航ミサイル(GLCM)、艦艇発射(海上と海中)巡航ミサイル(SLCM)、航空機(空母艦載機を含む)発射巡航ミサイル(ALCM)と投下爆弾である。米国は、リムランドの同盟国およびその周辺海域に前方展開した、これらの戦術核戦力および通常戦力によって、もちろん同盟国の軍事力と連合して、ソ連・ロシアと中国を包囲し、その侵略を抑止して(封じ込めて)きた。もちろん、これらと米国本国の大量の戦略核戦力が結合することで、侵略国家のソ連・ロシアと中国を包囲し封じ込めてきたのである。

 このように、米国が同盟国に差し出す「核の傘」は、前方展開している戦術核戦力と、米国本国の大量の戦略核という2層構造になっている。両者の2層構造の核があってこそ、「核の傘」は有効に働くのである。後者の戦略核だけでは、「核の傘」の有効性は大幅に抵下する。

 ソ連(共産ロシア)が1970年代末頃から、ソ連のヨーロッパ部とシベリア・極東に核兵器の弾道ミサイルSS一20とバックファイヤー爆撃機を配備したため、米国は西欧各国の要求もあって、1983年11月から、戦術核の弾道ミサイルのパーシング2と陸上発射巡航ミサイルのトマホーク(GLCM)を西独、英、伊、オランダ、ベルギーに配備していった。配備最終年の1988年には572基になる予定であった。また米国は同時に、艦艇(水上・水中)発射巡航ミサイルのトマホーク(SLCM)を1984年から1992年にかけて合計758基を配備していった。

 これによって、ソ連は完全に包囲されて封じ込められてしまったのだ。もしソ連が西欧を核攻撃すれば、西欧も決定的に破壊されるが、パーシング2やトマホーク(GLCM)によって、ソ連のヨーロッパ部の軍事指揮中枢や核等の軍事基地や軍需工場や産業施設が壊滅させられることになる。しかしこの「欧州戦域核戦争」では、米国はまったく安全な位置にあるのだ。つまり米国本国の戦略核等は無傷である。従って、第2段階の米ソの全面核戦争では、米国の勝利は戦争をする前に決定している。だからこそ、ソ連は絶対に西欧へ侵攻することはできないのである。「核の傘」による抑止である。

 リムランドに前方展開した米国の戦術核戦力の存在によって、米国とソ連・ロシアの間には、戦域核戦争の戦場から、米国が「聖域」となるという、「地理の非対称」がうまれるのである。これによって、米国・西側は、たとえ核兵器が量的に劣勢であっても、核戦争のシュミレーションにおける絶対優位を獲得できるのだ。中川八洋氏は、この地理と核戦力を組み合せる戦略理論を「核兵器の地政学」(『地政学の論理』202頁)と名付けてみえる。

 ソ連はこのとき、東側の日本へ侵略することも不可能になった。極東における米軍の核戦力は、海上・海中の核トマホーク(SLCM)、航空機からの核巡航ミサイル(ALCM)と核爆弾であり、ソ連のシベリア・極東地方の軍事基地等を破壊できても、ソ連の中心部のモスクワなどには到達しない。しかしながら、ソ連が日本へ侵攻すれば、西欧に前方展開している米国の核がモスクワ等へ撃ち込まれるから、前記したとおり、ソ連は次の第2段階の米ソ全面核戦争では、戦う前から敗北が決してしまっている。従って、日本へも侵略できないのである。

 私たちは、中川氏の主張される「核兵器の地政学」(核戦略理論)を学ばなくてはならない。1988年は、「東欧解放」の前年だが、この時の西側全体の核戦力の配備状況を再現すれば、侵略国家ロシアを完全に包囲でき、西側の安全は完全に保障されるということである。

 中国に対しても、ソ連に対して展開したような中距離核戦力を、日本、台湾、韓国に前方展開すれば、インドの核とも連合して、完全に中国を包囲して侵略を抑止できる。さらにソ連が解体したように、中国を解体していくことすら可能になるということである。

ロシア伝統の「退却兵法」

 レーガン大統領は、前述した戦術核戦力の前方展開に加えて、1983年末頃からSDI、今日のMD(弾道ミサイル防御システム)の開発を始めていった。これらによって、ソ連は「国家滅亡の危機」に陥ったのである。しかしながら、当の米国を含めて、西側は、このことを認識できなかった。ゴルバチョフはレーガン大統領を騙して、1987年12月にはINF条約(地上発射の中距離核戦力廃絶条約)を結び、1988年6月に発効した。ソ連がSS一20を全廃し、米国がパーシング2と陸上発射トマホーク(GLCM)を全廃する条約である。アメリカはソ連を包囲して封じ込めた、地上発射の中距離核ミサイルを廃棄させられたのだ。しかもアメリカは、バックファイヤー爆撃機はミサイルではなく飛行機だという理由で、この条約の対象外にしてあげている。外交(兵器を使用しない戦争)における大敗北である。

 ゴルバチョフらは、「ソ連の民主化」を演出して、米国、西側を騙し、油断させて、対ソ連・ロシアの核包囲を解体しようとしてきた。1989年の「東欧解放」は、「ソ連の民主化」を米国・西側に信じ込ませるための演出であった。共産党独裁国家は、国民(人民)の反独裁の運動では絶対に倒れない。北朝鮮や中国を見ればよい。東欧諸国はソ連の植民地であったから、ソ連共産党が、東欧各国共産党へ命令することによって、東欧解放ということになったわけである。ソ連消滅と新ロシアの誕生も、ソ連の国民の運動の力ではない。ゴルバチョフらの演出である。米国・西側を騙して油断させ、その対ロシア核包囲を解消させていくばかりでなく、米国の戦略核をはじめとする核戦力を大削減させてしまうための大謀略である。今日まで大成功裡に進展してきている。

 これはロシア伝統の「退却兵法」「退却による油断兵法」(中川八洋氏)である。ロシアはヨーロッパにおける国境線を600キロメートル後退させた(東欧解放)。しかし20年後から30年後に再侵略し、更に新しい領土を獲得すればよい、とロシアは考えるのである。「不利となれば即座の退却兵法こそは、戦争におけるロシア民族五百年の伝統で、15世紀からのロシア民族の戦争哲学である。退却による油断兵法こそ、ロシアに世界最大の国土を獲得させた。20年、30年ごとに侵略と退却とを繰り返す、サイクル的な退却兵法が、隣接国を油断させ、次の大規模侵略を容易にして、その膨張を結果として絶えず成功に導いてきた。ロシアの退却兵法こそは、『孫子』を凌ぐ、ロシア流の領土拡大の秘伝で、レーニンの迂回戦法もここから生まれた」「過去五百年の平均では43年後に再侵略している。20世紀では平均は約20年後に再侵略する」(『地政学の論理』205、350頁)。

 ソ連・ロシアは条約に拘束されない。拘束されるのは米国だけである。しかし、米国父ブッシュ大統領は、ソ連は民主化されたと錯覚して、1991年7月、第1次戦略兵器削減条約に調印した。1993年1月には、第2次戦略兵器削減条約に調印した。この第2次の条約は、米国上院がその「修正議定書」を批准しなかったので発効しなかったが、米国政府は条約の内容を実行してきている。ブッシュ前大統領は、2002年5月にモスクワ条約に調印し、翌年発効した。オバマ大統領は2010年4月に、「新戦略兵器削減条約」に調印した。米国上院は絶対に批准をしてはならない。

 批准されて発効すると、米国が配備できる戦略核弾頭数は1550個が上限となる。米国は予備弾頭を保有するが、それほど多くは保有しなくなることは明白である。一方のロシアは今でも、第1次戦略兵器削減条約の6000個に違反して、1万個以上の戦略核弾頭を保有している。米国は今、戦術核を含めて新しい核弾頭を製造していないが、ロシアは製造し続けている。米国がロシア、中国に撃ち込める戦略核弾頭数が少なくなればなるほど、米国の拡大核抑止力(「核の傘」)は弱くなるのだ。

 米国は前方展開した戦術核戦力を、ソ連・ロシアとの条約によるのではなく、まさに一方的に進んで大削減してきた。父ブッシュ大統領は1991年9月27日、前方展開している艦艇(水上・水中)の核トマホーク(SLCM)を撤去すると声明し、1992年3月末に実行された。北海・ノルウェー海、地中海、アラビア海、そして日本列島の南の沿岸海域に展開して、ソ連・ロシアを核包囲してきたSLCMは撤去されてしまって無い。次のクリントン大統領は1994年に、空母艦載機の核爆弾を撤去させたのであった。

 これらの措置は、「ソ連の民主化」「東欧解放」そして「ソ連から新生ロシアへの転換」「冷戦終結」という、ロシアの「退却兵法」「退却による油断創出兵法」に、騙され負けたものである。米国・西側の指導者も国民も、「冷戦は終結したのだ」と油断し、驕慢になってしまったのである。

 前方展開している戦術核戦力は、航空機による空中発射巡航ミサイル(ALCM)と核爆弾だけになってしまっている。これは「核の傘」の大幅な弱体化である。もちろん、撤去されたSLCMや核爆弾は、危機が到来すれば再配備される。ただし、即応的な核の傘は、大幅に弱体化している。

 根本的な問題は、米国・西側がロシアの「退却兵法」を認識していないことだ。私は1998年以来、何度となく書いてきたが、お一人を例外として、反応はなかった。ロシアはソ連時代の支配者が、独裁的に支配している国である。ソ連共産党の幹部がKGBの幹部にもなってきたが、1982年11月に、KGB議長のアンドロポフがソ連共産党書記長になったように、ソ連共産党とKGBは一体化するようになっていったのだろう。そして米国・西側を騙すために、共産党を棄てて、KGBの組織を使って国を支配していくことに転換したわけである。共産党独裁からKGB独裁へである。共産主義の放棄は、イコール自由主義ではないが、米国・西側は「東欧解放」等の演出もあって、批判精神を喪失して、騙されてしまったわけである。

 「NATO首脳会議」が本年11月19日に採択した「新戦略概念」も、「NATOロシア理事会」が11月20日に発表した「共同声明」も、完全に誤っている。ロシアの正体を見抜けていない。

 そして米国・西側は、ソ連が「民主主義ロシア」に変わったように、中国もそうなるであろうと考え、中国をそのように導くべく「関与政策」を実行していくのだ、と対中政策も完全に誤ってきたのである。そのことが、中国の経済大国化・核大国化・軍事大国化を阻止できず、許してしまうことになったのである。私たちは、ロシアと中国の兵器を使わない戦争である外交戦に敗北してきたのである。

 米国国防総省は2010年4月、「核態勢の見直し」(NPR)を発表したが、そこで、現在艦艇から撤去して保管してある核トマホーク(SLCM)の廃棄を明記したのである。そうなれば本当に深刻な事態になっていく。ロシア、中国は、核トマホークが廃棄されてから、侵略を開始する。

日米同盟の絆の下での日本の核武装

 現在、これまで述べてきたように、米国の「核の傘」は雨漏りがするようになっており、時間の経過とともに雨漏りは激しくなっていくことが明らかである。だから日本は、国の安全と存続のために、絶対に核武装することが必要である。しかしこのことは、日本が米国の「核の傘」から離脱することでは断じてない。ロシアの対日核戦力を書いたが、日本には、米国の「核の傘」から離脱して、「自主防衛」で核武装しても、ロシアから国の安全と国の存続を守り抜いていけるような条件も国力も技術も全くない。対中国においても、しかりだ。米国の「核の傘」からの離脱、つまり日米同盟破棄は、日本がロシアと中国に侵略されて滅びることであり、日本の自殺である。

 日本の核武装は、米国の「核の傘」の雨漏りを修理して強化していくものでなくてはならない。日本の核戦力は、米国の全ての核戦力および他の同盟国の核戦力と結合して、対ロ、対中の核抑止力を形成するのである。米国の「核の傘」と結合して、対ロ、対中の核抑止力となるということである。日本は、日米同盟の強い絆の下で核武装を行い、同盟を一層強化していくのである。

 日本は米国に発注して核兵器のミサイルも核弾頭も購入する。核のボタン(発射キー)は米国との2重キーとする。英国と同じである。米国に届くICBMは保有しない。中距離核戦力(INF)を購入する。INFであれば米国は売ってくれる。中川八洋氏は、日本が保有するINFと数を次のように主張してみえる。

 走行式弾道ミサイル「パーシング2改」(射程2000キロメートル)を100基、地上発射巡航ミサイル「トマホーク改」(射程4000キロメートル)を150基、海上海中発射巡航ミサイル「トマホーク改」(射程2500キロメートル)を250基の計500基である。「改」は改良型のことである(『日本 核武装の選択』142頁参照)。

 私たちは、日本の核武装を巡る米国当局者との協議の中で、ロシア、中国の本性とその国家目標と戦略について討議して、本論文で述べたようなことを共通認識にしていかなくてはならない。またロシア、中国を核包囲する世界戦略(核兵器の地政学)についても、共通認識を得ていくのである。それは、米国がヨーロッパに再び地上発射のINFを配備していくことである。当然、ロシアとのINF条約は破棄する。艦艇(水上・水中)へも核トマホーク(SLCM)も再搭載していくし、空母艦載機にも核爆弾を再搭載していく。戦略核も条約を破棄して増産していくことになる。

 日本は、米国のINF部隊を日本に駐留させるようにすべきである。米国の核部隊が日本に配備されることは、ロシア、中国が日本を核攻撃したとき、米国の核部隊をも直接狙うことになるから、米国は必ず第2段階の全面核戦争で本国の戦略核を発射することになるからである。米国のINFの日本配備や欧州配備は、日本と米国の戦略核を、欧州と米国の戦略核を分かちがたく結合させる働きをする。そのことによって、対ロ、対中核抑止がより確実になる。このことは、中川八洋氏が1980年代の前半から主張してこられたことである。

 日本がロシア、中国に侵略され併呑されたら、日本国民は全てを奪われるのだ。日本は全力を挙げて核武装していかなくてはならない。社会保障制度への国庫負担金を大きく削って、核武装と通常戦力の増強を図っていかなくてはならない。民主党左翼政権が導入した「子供手当」は、直ちに廃止する。これは、日本の軍事予算の増大を不可能にすることを狙ったものである。ロシア、中国に、日本を侵略させるためである。日本国民は、直ちに中国、ロシアの尖兵である民主党政権を倒さなくてはならないのだ。日本国民は「国民あげて文字どおり、臥薪嘗胆した、1895年から1904年の10年を再現する決断の時を迎えたのである」(『地政学の論理』21頁)。当時の日本は、国家予算の半分を軍事費に投入して、国家の存続を守っていったのである。

 最後に一言述べておきたい。保守を詐称する「反米民族派」(たとえば西部邁氏とか西尾幹二氏とか多くいる)は、「米国の核の傘は幻想だ」と言い続けてきた。しかし中、露の侵略が抑止されてきたという歴史的事実によって、反証されている。彼らは「反米・自主防衛(核武装)」のキーワードで、日米離間、日米同盟の否定をめざしている。もしそうなってしまえば、日本はロシア、中国に属国化され、併呑されることになるのだ。彼らは祖国の安全と存続などいささかも考えない。彼ら反米派は、反日派でもあるのだ。私は「反米民族派」は、左翼の別動隊だと思っている。

2010年11月25日脱

大森勝久


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