東アジア征服という中国の国家目標と 「平和的発展」戦略


1、敗北の日中首脳会談と日中共同プレス発表

 日本政府と議会そして保守勢力のほとんども、中国共産党(中共)が台湾の回収のみならず、2020年代に日本を含む東アジア諸国を征服することを当面の 国家目標としていることを全く認識できていない。だから去る4月に中国首相温家宝が招かれて来日し、国会で嘘と「反対語」で塗り固めた演説を行うと、閣僚 も与党もこぞって立ち上がり何度も大きな拍手を送るという惨たんたる光景が現出したのであった。日本は中共の情報心理戦に完全に敗北している。

 中国の侵略戦争には2つの形態がある。武力を使用しない情報心理戦と、武力(核・通常)を行使する戦争である。前者こそが主要な形態であることを私たち 日本国民は深く認識しなくてはならない。中国に限らずロシアや北朝鮮やイランなど全体主義侵略国は全てそうだ。独裁支配が貫かれて言論の自由、自由な報道 が 否定されているため、謀略外交を展開することができるからである。

 共産党をはじめ全体主義者が用いる言葉は、私たちが日常使っている言葉とは全く異質である。相手(敵)を騙すための言葉であり、反対の意味を持つ言葉 だ。「反対語」とか「転倒語」という。日本人は「平和」「友好」「協力」という言葉に実に弱い。日本人ほどではないが西側文明国の国民にも共通するもので あろう。日本人は、これらの言葉を語られると相手に善意を感じてしまう。少なくとも悪意は少ないと幻想してしまう。外交担当者ですらそうである。中国やロ シアや北朝鮮等の全体主義国は嘘が外交の基本原則であることすら認識し得ていない。

 4月11日の日中首脳会談後の「日中共同プレス発表」の中に、「東シナ海を平和・協力・友好の海とし」とあるが、中共の理解は「中国の海とし」である。 1970年代以降の中国と日本の行動によって明らかである。中国は1995年以降毎年「日中中間線」の日本側海域で資源調査と軍事調査を行ってきたが、日 本政府・外務省は調査の中止の警告をするだけであり、海上保安庁の巡視船も中止要請をするのみで、中止させることも排除することもしなかった。日本側海域 は事実上無法状態となったのである(平松茂雄氏『中国は日本を併合する』2006年3月刊。102頁参照)。

 この時、中国船は日本の領海も侵犯したが、海保は停船・臨検をしなかった。領域主権を放棄したようなものであった(中川八洋氏『中国の核戦争計画』99 年9月刊。202頁参照)。日本政府の在り方は既に中国に併合されているような在り方である。国際法を守るのが文明国であるが、国際法(領域保全対処、排 他的経済水域における主権的権利)を守れないわが日本は文明国と言えるであろうか。独立国と言えるだろうか。

 全体主義国は国際法や国際取り決めで相手(敵)を縛りながら、自らは平然と破っていく。国内において法の支配を否定して国民を独裁支配しているのが全体 主義国であるから、国際法や国際取り決めを守るわけがない。それなのに、中共にとっては紙に過ぎない「日中共同プレス発表」で中共が東シナ海を「平和・協 力・友好の海にしてくれるであろう」と考えるのは、無知の極みで愚かさもここに極まれりである。日本政府はこの共同プレス発表に支配されて、中間線の日本 側海域の主権的権利と海洋権益を守るために不可欠である海上自衛隊に新たな任務を付与する等の法整備作業を遅らせ、さぼることになることが確実である。

 共同プレス発表の冒頭には、「双方は歴史を直視し、未来に向かい、両国関係の美しい未来を共に切り開くことを決意した」と謳われている。安倍首相は、米 国政府が騙されて幻想を抱いているのと同様に、日本政府も「戦略的分岐点にある中国」を民主主義国へ誘導していくのだと考えているのであろうか。ともかく も日本の征服を明確な国家目標にしている全体主義国中国と「両国関係の美しい未来を共に切り開く」と安倍首相は決意したのである。無惨であり、なによりも 恐ろしいことである。思想的に征服されてしまっている。一日でも早く誤りを自覚しなくてはならない。

 情報心理戦の核心は敵国、征服対象国を騙すことである。中共は、中国の近年のグローバルな台頭を「平和的発展」とか「平和的台頭」と呼称して、中国の台 頭は平和的、友好的、互恵的であり、反覇権主義であって、米国を含めてどの国とも衝突する意図はなく、どの国の影響力をも削ぐ意図もないと繰り返し嘘プロ パガンダしてきた。中国の軍事力は純粋に防御的なものであると真っ赤な嘘を強調してきた。中共はこの情報心理戦という侵略戦を、西側内の尖兵と位置づけて いる左翼(マスメディアと学者がその主力である。日本ならNHKとか朝日などである)を使って共同して仕掛けている。言葉の爆弾である。また中国で企業活 動をしている大企業、財界及び中国利権で生存している与野党の大物「政治屋」を使って仕掛けている。彼らは中共のエージェントである。

 日中共同プレス発表にも「双方は戦略的互恵関係に基づき、平和的発展を相互に支持し」と謳われている。安倍首相も騙されてしまったのだ。しかし首脳会談 は何ヶ月も前から準備してきたものである。日本人には世界に誇れる立派な国際政治学者や中国研究者がいるのに、なぜそれらの人々の叡智が政府の政策に反映 されないのか。政治は、政治家と官僚のみで私物的に行うものではなく、祖国とその法のために、一国の最も優れた叡智を結集して行うものである。政治家をは じめ日本人の政治に対する考え方が根本的に改められなくてはならないのだ。

 安倍首相は中国の軍事力増強に関して「透明性をさらに高めるよう」要望したが、中共にあっさり黙殺されることは火を見るよりも明らかである。日本政府は 「日中の防衛交流」が信頼を醸成すると幻想させられて、共同プレス発表に盛り込んだ。だが、逆にそれによって日本は中国に対する警戒感を弱められ解体させ られていくことになる。そればかりか中共に、日本のイージス艦などの高度な軍事機密をスパイされることにもなってしまう。中国の国家目標が日本等の征服で あることを見抜けず、「戦略的互恵関係に基づき」、中国の「平和的発展を支持する」というのが日本政府の思想的立場であるから、そのような日本が「防衛交 流」をすれば上記のようになるのは論理的に明らかだ。

2、中共の「平和的発展」戦略

 米国国防総省とCIAが入手した中国政府の内部文書によれば、中共は2020年頃まで現在のような経済発展と軍事力増強を続ければ中国は米国に対抗しう る国力を蓄積できると分析しているという(伊藤貫氏『中国の核が世界を征す』2006年3月刊。76頁参照)。中国は2016〜2020年頃に実質購買力 ベースににおいてGDPで米国を抜いて世界一となり、軍事費も実質購買力ベースで世界一になると見ている。米国国防総省、CIA、世界銀行、米国の学者も 同一見解である。ただし実質軍事費で米国を抜いても同時に米軍を凌ぐ軍になれるわけではない。中共は中国軍が軍事技術の面など軍隊の総合的な戦闘能力で米 国を凌ぐようになるのは2030年頃だと予想している(前掲書92頁他参照)。

 国力の根幹は軍事力である。ほとんどの日本人はこの冷厳なる事実を見ようとはしない。軍事力の基盤は経済力である。従って中国が米国と対抗し得る国力に なる2020年代までは、現在の経済・政治環境が変更されないように努力しようと考えるのは当然すぎることだ。もしも米国を決定的に刺激して、米国が早期 にレーガン政権が実行したような攻勢的封じ込め戦略を中国に対して発動することになれば、中国は輸出も輸入も直接投資の受け入れもほぼ不可能となり、経済 は麻痺することになってしまう。軍事力の増強も出来なくなる。東アジア征服は不可能になるばかりか、中共と中国の解体の危機にすら発展することになる。

 だから中共は、米国と正面から対決する事態になることを慎重に回避しつつ、米国と対抗できるだけの国力を蓄積していく戦略を採ることになる。これが「平 和的発展戦略」とか「平和的台頭戦略」と呼ばれているものである。

 それゆえ中共は、中国の台頭は平和的、友好的、互恵的なものであると嘘プロパガンダを執拗に繰り返す。また誤っているのは承知の上で、米国に「覇権主義 外交」の虚偽レッテルを貼り付けて機会ある毎に非難する。日本には「軍国主義復活」の虚偽レッテルを貼って非難する。また60年以上も前の戦争を持ち出し 自らを「被害者」と位置づけることも常に行う。政治的に優位に立つためである。自らを被害者と位置づけ、中国外交を反覇権主義の「善」なるものだと嘘プロ パガンダすると同時に、一方に巨大な「悪」(米国)の存在をデッチ上げて非難することによって、中共は自身の東アジア征服の国家目標、覇権主義・軍国主義 を覆い隠そうとするのである。これは情報心理戦の基本的テクニックであり、大いに成功してきた。共産主義時代と基本的に同じである。

 中共はこうした情報心理戦を、米国や日本の左翼マスコミ・学者を使って頻繁に展開させていく。中国に進出して活動している米日の大企業を使ってプロパガ ンダさせていく。米国に進出している多くの中共系企業に命じて米国の大手シンクタンクに多額の献金をさせて、中国に都合のよい平和的発展のレポートを書か せていく。金の力は巨大である。それらのレポートを米国政府や議員が読むことになる。腕利きの米国人ロビイストを大量に雇って議会工作も行う。また大きな 影響力を持つキッシンジャーのような中共の大物エージェントが、中国台頭の平和的意図を主張して中国擁護論を展開するわけである。

 伊藤貫氏によればキッシンジャーは、「アジア諸国の中で、中国封じ込め政策に賛成する国などない。もしアメリカが中国を封じ込めようとするならば、他の アジア諸国はアメリカから離れていく。アメリカと日本との関係も悪化する。日米同盟は、厳しい試練にさらされることになる。アメリカが中国を敵視する政策 を実行すればアメリカこそ世界で孤立することになるのだ」(前掲書79頁)と主張しているのだという。逆を主張するのだ。

 またキッシンジャーは、現在の中国は大型空母・外洋艦隊を持っていないし、長距離戦略爆撃機も持っていないし、大規模な兵力輸送能力を持っていないし、 多数のICBMも持っておらず、米軍との戦闘能力を備えていない。だから中国軍はアメリカにとって脅威ではない。従って、中国の軍拡もアメリカがいるから 周辺国にとって脅威ではないという議論もしているという(167頁)。

 固体燃料の車搭載の移動式ICBMの東風31号を有する中国が米国にとって脅威であるのは自明であり、それによって中国は米国を逆抑止する可能性を持つ から、中国の存在が周辺国にとって脅威であることも明白であるのに、キッシンジャーは平然と嘘を述べる。キッシンジャーは、中国がワシントンやニューヨー ク等東部を狙えるMIRV弾頭の移動式ICBM東風41号を今にも実戦配備しようとしていることも、中国の軍拡は周辺国にとって脅威ではないと言うのであ る。キッシンジャーにかかれば、中国の周辺国はみんな中国の平和的な台頭を信じていて進んで友好関係を結ぼうとしている国々だということになる。米国が中 国を敵視して封じ込めをしようものなら、それらの国々は米国から離れ、米国の国益に深刻なダメージを及ぼすことになるから、米国は中国を敵視してはならな いというわけである。保守派の大物と目されているからこそ、その嘘プロパガンダの影響力にはあなどれないものがある。

 こうした発言で、キッシンジャーが実は隠れ共産主義者・反祖国主義者(反米主義者)であることが判るというものである。

 私は現国務長官・前国家安全保障担当大統領補佐官のライスも隠れ共産主義者だと考えているが、ライスは2002年9月『新国家安全保障戦略』をまとめ た。そこには「共通の価値に基づく各国間の団結も強まっている。民主主義国家としての将来と、テロとの戦いにおけるパートナーを目指したロシアの歩みには 希望が持てる。中国の指導層は、経済的自由が国富への唯一の手段であることに気づき始めている。中国は早晩社会的・政治的自由が偉大な国家への唯一の道で あることに気づくはずである。米国はこの二つの国家における民主主義と経済開放を奨励する」と謳われている。ライスがロシアや中国のエージェントであるこ とも明白であろう。

 中国やロシアにおいて共産主義経済が否定され、経済の自由化により経済成長が実現されていけば、政治的な自由化、民主主義化も開始され進展していくだろ うという謀略理論のプロパガンダである。ここから米国ら西側がロシア、中国を敵視して封じ込めを実行すれば両国は改革を止めて昔の道に回帰することにな る。だから西側は「戦略的分岐点にある」両国を敵視せず、関与して、民主主義化を奨励し誘導していくのである、という米国の政策・戦略が提起されたわけで ある。そして「テロや無法国家との戦い」が米国ら西側の第一の課題だとなったのである。

 中国やロシアの情報心理戦によって、米国をはじめ西側の国家安全保障政策・戦略はズタズタに破壊されてしまっている。2006年2月に出された米国国防 総省の「4年ごとの国防政策の見直し(QDR)もまたそうである。

 こうして中共は世界市場へ輸出を拡大し、世界中から資源を買い集め、西側先進諸国からの直接投資と技術移転また融資を吸収して、経済の高度成長を持続し ていく。それを基盤に軍事力を増強していく。自らの勢力圏を形成していく。中国は豊富な外貨でロシアから最新鋭のソブレメンヌイ級駆逐艦(艦対艦サンバー ン超音速ミサイル装備)、キロ級攻撃型潜水艦(最新型の魚雷と対艦ミサイル装備)、最新鋭戦闘機スホイー27とスホイー30(日米のF-15、F-16に 対抗できる)等を購入してきた。今後もそうである。東風41号はMIRV弾頭(各個独立再突入多弾頭)である。今後東風31号もMIRV弾頭へ移行されて いくし、射程も伸ばされていくことになる。2010年頃に仮に東風31号と41号を合わせて60基とし、平均4個の多弾頭を持つとすると、計240個の核 弾頭が米国を狙うことになる。巨浪2号のSLBM(東風31号を潜水艦発射型にしたもの)も米国を狙う。日本を狙う東風21号改等も増産されていくことに なる。

3、中国の軍事費は日本の5倍以上である

 中共はその全歴史を通じて残虐な殺人集団である。『中国がひた隠す毛沢東の真実』(北海閑人著、2005年10月刊)を読めばよく分かる。中国という国 家は中共の私有物である。だから中国には「法治主義」さえも微塵もない。中共はこれまでに漢民族とチベット人やウイグル人や蒙古人やキリギス人等の少数民 族を8800万も虐殺してきた。国内において国民を独裁支配する(侵略すると言ってもよい)中共は、国外に対しては侵略することになる。中共は朝鮮戦争に おいて韓国に武力侵攻し、チベットや新疆に武力侵攻して併合した。中共は台湾、インド、ソ連、ベトナムとも戦争してきた。中共の中国は建国以来10数回の 戦争を行ってきた軍国主義国家である。中共は1989年から今日まで2002年の9.6パーセントを例外として軍事費を毎年2桁台で伸ばしてきているので ある。

 中国の軍事費が最近17年間も2桁台で急増していることは保守論壇でも語られるが、日本の軍事費を既にはるかに超えていることはほとんど知られていな い。中共が隠してきたからである。中共の尖兵で宣伝機関であるNHKや朝日新聞などが共謀して報道しないからである。2005年の中国の公表軍事費は約 300億ドル(1ドル=8.1元で2430億元)で、日本の450億ドル(4兆8000億円)の67パーセントであるが、英国の国際戦略研究所 (IISS)は中国の実際の軍事費は公表数字の3倍になるという。つまり900億ドルであり日本の2倍である。

 ソ連=ロシアがそうであるように、中国も真の軍事費を隠蔽する。人民解放軍が輸入する外国製兵器は世界一であるが、軍事予算には計上されていない。ミサ イル部隊の兵器コストと運用コストも計上されていない。人民解放軍は多くの武器製造企業を経営しているが、兵器製造コストと開発コストも予算に入っていな い。宇宙戦争の軍備コストも計上されていない。人民解放軍の衣食住コストの多くも予算に入っていない。人民解放軍が所有する100万人の人民武装警察隊コ ストも除外されている。人民解放軍(230万)と人民武装警察隊(100万)の医療費と年金コストの多くも予算から排除されている等である(『中国の核が 世界を制する』173頁以下参照)。したがって中国の真の軍事費は公表の3倍となる。

 さらに次のことがある。軍事費の比較も為替レートベースのドル換算ではなくて、実際にどれだけの量の兵器と軍事サービスが生産され消費されているかを比 較しなければ正しい比較は出来ないということである。日本は米国より国内物価は高いし、中国は米国や日本より国内物価は大幅に安い。したがって金額が同じ でも買える兵器・軍事サービス量が少なかったり多かったりしてくるのである。それで軍事費は実質購買力(どれだけの量の兵器・軍事サービスが生産され消費 されているか)で比較しなくてはならないのである。

 日本は米国に比べて国内物価が高いため、兵器や軍事サービスについても日本の方が割高になっている。つまり金額が同じでも買える量はより少なくなる。円 の価値=実質購買力は円とドルの為替レートよりも小さいのである。そのために、日本の軍事費を円の価値が過大に評価されている為替レートで換算すれば、実 質購買力よりも過大に表れてしまうことになる。2005年度の軍事費4兆8000億円は1ドル=106.66円の為替レートで換算すると450億ドルであ るが、実質購買力ベースでは400億ドルである(前掲書86、175頁参照)。450億ドルは400億ドルよりも12.5パーセント過大になっている。計 算すると実質購買力ベースでは1ドル=120円ということになる。

 中国の2005年度の軍事費の公表額は300億ドルだが、隠されているものを含めると3倍の900億ドルである。為替レートは1ドル=8.1元である。 しかし中国は米国に比べて軍事分野の国内物価は安い。同じ金額でもより多くの量の兵器・軍事サービスを買うことができる。人民元の価値=実質購買力は元と ドルの為替レートよりもずっと大きいのである。2005年の軍事費900億ドルは元の実質購買力よりも大幅に過小に評価されている為替レートで換算したも のなのである。実質購買力ベースだと1500億ドル以上になるのである(前掲書91頁)。900億ドルの1.66倍以上である。計算すると軍事分野の実質 購買力のレートは1ドル=4.86元になる。

 2005年度の中国の軍事費は公表額は300億ドルだが、実際はその3倍の900億ドルであり、実質購買力で計算した実質軍事費は公表額の5倍の 1500億ドル以上なのである。これは日本の実質軍事費400億ドルの3.75倍にもなる。日本円で表示すれば4兆8000億円の3.75倍の18兆円と なる。為替レートは1元=13.16円だが、軍事分野の実質購買力ベースのレートは1元=24.69円になる。

 3月に発表された中国の2007年度の軍事費は、公表額で3509億元、日本円で5兆2600億円という。公表額で初めて日本の軍事費4兆8000億円 を上回った。前年比17.8パーセントの増加である(古森義久氏の日経BP社のホームページ「第45回、中国軍拡への懸念、再び高まる」より)。古森氏は 「米欧の専門家達は実際の中国の軍事予算は公表『国防費』の3倍から5倍、つまり日本円で年間25兆円を超える額だと推定している」と主張している。その 通りである。隠された軍事費を含めると公表の3倍の1兆527億元(15兆7800億円、1348億ドル)になる。そして仮に元の実質購買力が05年と同 じだとしても(実際はより大きくなっているが)、1ドル=4.86元、1元=24.69円なので、1兆527億元は実質軍事費で2166億ドル、25兆 9911億円となり、2007年の日本の軍事費4兆8000億円の5.41倍にも達しているのである。

 さらに中国の軍事費は西側大国に比べて兵器そのものに投入される割合が圧倒的に高いということがある。日本の自衛隊の場合には人件費と糧食費を合わせる と軍事費の半分以上になるとされるが、中国ではその比率はわずか5パーセントだとされている。残りのほとんどが兵器に投入されるのである(古森義久氏「ア メリカの対中認識が教える現実」『正論』2005年12月号。79頁)。

中国は2016〜2020年頃実質GDPで世界一になり実質軍事予算も世界一になる

  『中国の核が世界を制す』から要約しよう。IMFは1990年代、実質購買力で計測した場合の中国経済の規模は為替レートを使った名目的な GDPの約4倍であると推定していた。CIAが発表している最近(2003〜2005年)の諸国経済の統計集でも、中国の実質GDPは為替レートによる GDPの約4倍となっている。CIAの計算によれば2005年の中国の実質GDPは約8兆ドル、米国は約12兆ドル、日本は約4兆ドルである。為替レート (1ドル=8.1元)による中国の名目GDPは2.1兆ドルしかないが、13億2000万人の中国人が実際に生産・消費している財・サービスの総量約8兆 ドルは、すでに日本経済の実質的な生産・消費量の2倍の規模になっている(86〜87頁)。

 中国経済は1980〜2005年の期間、毎年平均9%の成長率で増加してきた。1991年〜2005年の平均成長率は10%であった。今後成長スピード がある程度減速すると仮定しても、2016〜2020年ごろ、中国経済の実質規模が米国経済の実質規模を凌いで世界最大になるとの予測は、それほど荒唐無 稽な予測ではない(87頁)。

 日本の保守派の言論人には、中国政府の経済統計は嘘ばかりだとか、中国経済の繁栄は単なる投資バブルにすぎないとか、中国人の民度は低くハイテク産業は 無理だとか、近代的な経済運営に適していないとか、中国政府は非常に腐敗しているから、そのうち内戦、内乱状態になって分裂してしまうだろう等々、感情的 な中国批判を並べて、中国の実質経済規模が世界一になる可能性を否定する人が多い(87〜88頁)。中国なんかそのうちダメになるに決まっているという嫌 中保守派の傲慢な態度は日本人を慢心させ、中国の急速な軍拡に対する日本政府の真剣な対応策を遅らせる原因になっている(89頁)。

 しかし中国政府の経済統計がどんなにでたらめなものだとしても、国際貿易の統計数字まで誤魔化せるわけではない。中国の輸出増加率、原材料の輸入増加率 等を見ると、毎年平均9〜10%の経済成長率という数字にそれほど誤りがあるようには見えない。2005年の中国経済は鉄・銅・アルミ・ニッケル・石炭・ セメント等の消費量が世界一、石油の消費量は世界二である。中国の実質的な経済規模が世界で二番目だから、これほど大量の原材料を使用・消費するのであ る。為替レートを使って計算した中国の名目GDPが2.1兆ドルしかないという過小数値はミスリーディングである。OECDは2005年9月、2010年 に中国の国際貿易量はアメリカを抜いて世界最大になると予想した。2010年に世界最大の貿易国になる国が2016〜20年頃に世界最大の実質経済規模を 持つ国になることは自然な成り行きであろう(88〜89頁)。

 日本の嫌中保守派の言論人には二つの欠点がある。一つは正統的なマクロ経済学の理論モデルを真面目に勉強したことがないこと。もう一つは、中国には優秀 な人材が多いということを知らないことである。筆者は若い頃、アメリカとヨーロッパの大学で学ぶ中国人の留学生たちとつきあったことがあるが、彼らの大部 分は優秀であり、勤勉であり、真剣であり、とても意志力が強い人物であり、彼らの勉強ぶりはまさに「死に物狂い」であった。日本の保守派の言論人に、中国 を軽蔑し、中国人の能力を過小評価する人が多いのは危険な傾向である(89頁)。

 現在、中国の労働人口の3分の2は農民であるが、今後農業の機械化が進めば労働人口に対する農民の比率は1割程度で済むようになる。つまり中国には労働 人口の約5割を労働生産性が非常に低い農業セクターから労働生産性がはるかに高い製造業やサービス業に移行させる余地があるということである。ポジティブ な要素でもあるのだ。同様に中国人の8割は貧しい生活レベルにあるということも、これら10億の貧民たちもミドルクラスレベルの消費生活を望んでいるとい うことで、中国は今後も総需要が不足することはありえないというポジティブな要素にもなる。中国経済の成長のポテンシャルは大きい(90頁)。

 現在の中国の指導者階級には「中国の経済規模がアメリカと対等になるまで現在の成長戦略を変えてはならない」というコンセンサスがあることを忘れてはな らない(90頁)。

 CIAの計算によれば、中国政府は2004年、GDPの4.3%を軍事費として使っている。アメリカ政府は同年3.7%を軍事費として使っていた。中国 の軍事支出の対GDP比率はアメリカよりも高い。従って中国経済の実質的な規模が2016〜2020年頃に世界一になるとき、中国の実質的軍事費も世界最 大規模になる可能性が強い(91〜92頁)。

4、日本は直ちに核武装を開始すべし

 中共が2020年代に日本等を征服しようとしていることはもはや明白であろう。中共の独裁支配と対外侵略の歩み、そして軍事力をかくも急速に増強してき たこと、しかも軍事費を3分の1に偽装し続けていること、言葉では逆に「平和的発展」を繰り返していることで証明されている。1990年代の半ば、当時の 首相李鵬はオーストラリア首相に、「日本などという国は20年位後には消えてなくなってしまう国だからまともに相手にする必要はない」と語っている。 2015年では少し早すぎるが、中共と一般の中国人が「小日本」は征服し併合してしまえと思っているのは明白な事実である。旧満州の通化には、固体燃料の 移動式中距離ミサイル東風21号改(射程1800km、威力200キロトンの水爆)が1989年から配備されて日本全土を照準している。射程1700km の東風21号は1986年に初配備された(中川八洋氏『日本核武装の選択』2004年10月刊。65頁参照)。

 中共の対日核戦力は通化、石台の東風21号改、石台、海晏の東風3号改(射程2800km、1971年、液体燃料、威力2メガトン)、渤海のSLBM巨 浪1号(「夏」搭載、射程1700km、1988年、固体燃料、200キロトン)であり、合計100基だという(前掲書65頁)。さらに今後増産されてい くし、東風3号改は固体燃料の移動式のものに移行されていくことになる。MIRV弾頭化もされるであろう。

 平松茂雄氏によれば、1952年に中国で使われていた中学生用の歴史教科書『中国近代簡史』によれば、中共は沖縄などの琉球諸島を日本に奪われた中国の 領土だとしている(平松氏前掲書118頁)。通化の対日核ミサイルで明らかなように、中共の対日征服戦争は武力こそ使っていないが既に発動されて現在進行 中なのである。私たちはこのように正しく認識しなくてはならない。中国は1840年のアヘン戦争までアジアの覇権国家であったのだ。千数百年間もアジアの 覇権国家であった。この中華民族の覇権主義意識があるからこそ、中共が再び中国をアジア最強の覇権国家にすることを国家目標にするのはごく自然なことなの である。中国の過去2千数百年の歴史は、法の支配が存在しない独裁主義、侵略主義の歴史である。

 朝日新聞やNHKなどの左翼マスメディアは、中共の宣伝機関である。これを支配する幹部の共産主義者は中共のエージェントである。彼らは中国の軍事費が 実際は公表額の3倍であること、とっくの昔に日本の軍事費を超えていることを熟知しているが報道しない。逆に中国の軍事費はまだ大した額ではないという印 象を与える報道をしてきた。日本を狙っている核ミサイルの存在などもちろん報道しない。だから日本政府も与党政治家も第1節でみたように、中共とその尖兵 の左翼マスメディア・学者の情報心理戦という侵略戦争に敗北して、無惨な有様になっているのである。「朝日」やNHKは刑法81条の外患誘致罪に違反して いる。放送法1条に違反しているのだ。法を執行しなくてはならない。

 中共が農民の抗議運動等を西側に伝えるのも、「中共の支配はいずれ崩壊するかもしれない。中共など恐れるに足らず」と西側の保守勢力に思わせて、警戒心 を解き油断させるための情報心理戦のひとつである。日本の保守論壇も誤った思想やどうでもよい思想が溢れて、それによって真正な思想が隠されてしまってい る。政府や与党に対する建設的な厳しい批判を提起できない者は学者や言論人として失格である。

 国の統治、政治は私企業の統治とは根本的に異なる。政治家と官僚が自由に、私物的に行ってよいものではない。祖国に忠誠を尽くし祖国の法に支配されて行 うものである。憲法の条項も法に違反するものは無効である。政府も与党もアンテナを張り巡らせて、この日本の真の学者・知識人・言論人(その主張は政府や 議会の在り方を厳しく批判するものである)を探しだし、招いて、主張を聞いて政策を作り上げて行かなくてはならないのである。日本の安全、独立を守れない ような政治家や官僚は、欠格者として更迭される。「公け」とはそういう存在である。日本国民全体が根本的に変わらなくてはならない。

 中共は2020年代には日本を征服する。ロシアもそうする。その時、両国に進出している日本企業と日本資産は全て収奪されることになる。もはや時間の猶 予はな い。日本は中国とロシアと北朝鮮に対する核武装を直ちに開始していかなくてはならないのである。日本の核武装は米国の国益をも飛躍的に強化することになる から、米国の指導者や国民を説得することは難しいことではない。日本が強い意志を持って核武装を決断すれば、米国も断固支持することになる。求められてい ることは、政治家が、日本は直ちに核武装して日米台3国各同盟を構築しなければ、中国、ロシアの征服から国の独立を守ることは出来ないという厳然たる事実 を深く認識することである。そして日本国民を正面から説得していくことである。選択の余地のない政治課題である。これに反対する朝日新聞やNHKや学者や 日共や社民党等の左翼勢力は、全体主義侵略国の中国やロシアや北朝鮮の意識した、あるいは無意識の尖兵であり、侵略勢力であるから、このような者の主張や 運動は断固粉砕すればよい。彼らの行為は「言論の自由」「報道の自由」「表現の自由」とは無縁であり、その否定である。反国家の違法行為である。正面から 国民に、中国、ロシア、北朝鮮と、その尖兵の左翼に対する批判を語り、説得し、国民に政府と共に行動するよう訴えていくことである。

 日米台3国核同盟や左翼批判については稿を改めて書いていきたいと思う。

(2007年5月20日記・6月19日掲載・6月28日、7月14日誤字等一部修正)

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