
語弊だらけの四方山話の会(仮)
〜from 2006/08/05〜
/localhost:8118/
<こうしん>
2010/08/30
改訂版『ネギま運命』の[7]の後編を掲載
2010/08/24
改訂版『ネギま運命』の[7]の前編を掲載
2010/08/02
『東方運命』の[5 かぐや姫の日常(前編)]を掲載
メニュージャンプ
出張明け、再開一回目のホームルームに、自然とタカミチの頬は緩んだ。
日常と非日常。
こうして健やかに平和な日々を謳歌する少女達の前に立つことと、気や魔力といった超常の力持つ者と対峙することと。
どちらがどちらと区別付けた事はなかったが、今の自身が後者の場とは格段に肩の力が抜けている事をタカミチは自覚していた。
自身の力を他者の役に立てることに否やはないが、こういう平穏があるからこそ――いや、なければ、自分はこれまで戦い抜いて来れなかったかもしれない。
「先生、どうかなされましたか?」
「いや、何でもないよ、雪広くん。ただ、みんなが変わらず元気でいてくれて、ちょっとホッとしたかな?」
「……そうですか」
柔らかく微笑む少女に微笑みを返し頷いて、タカミチは途切れた連絡事項を再び声にし伝達していく。
やや暖かくなってきたとはいえ、まだまだ冷え込む事もあるから注意するように、と厚情からの小言で締め――たところで、教室の後ろの扉が開いた。
長いウェーブがかった金髪を揺らし入ってきた少女。
それなりに付き合いの長い、タカミチにとっては教え子というよりは友人という意識が勝っている彼女の相変わらずさに苦笑して、注意の為に立とうとした雪広をそれとなく制し、少女に続けて教室に入ってきた青年にぽかんと口を開けっ放しにした。
「…………士郎?」
「は、はは……久しぶりだな、タカミチ」
笑みが引き攣っているのは、30人余りの少女達の注目を一身に浴びているからか。
クラスの用件は済んでいるので連れ出し話を聞くべきか、それともこんなところまで入ってきたのは何か特別な理由があるのか。
帰国が夜遅くとなり、士郎が麻帆良に滞在しているのは学園からの連絡で知っていたものの再会は落ち着いてからと考えていたタカミチは旧交を深めたい気持ちは抑えて様子見を選択した。
士郎に注目するあまり、その傍で口を出さないと察してニヤリと笑った旧友――エヴァンジェリンには気付かずに。
「あー、なんというか、用件はすぐに終わるはずなので、朝早くから騒がせてしまって心苦しいが、どうか容赦してもらえるとありがたい。――っていうかおいエヴァさっさと終わらせてくれ逃げたいぞ俺切実に」
「なんだ、もう良いのか? 言っておくが、私はフォローなぞせんぞ?」
「はっはっは。地獄に落ちような、エヴァ。俺も一緒に行ってやれるものなら行ってやるから」
どこか、などとという余地無くはっきり泣きの入っている士郎の声に、その内容に、クラスのざわめきが倍化する。
物騒な、しかし告白じみてもいる悪態。
クラスの中には何かが起こった後の始末についてと取った者もいたようだが、彼女達も判断は保留、大勢は年頃の少女達にとって一の関心事である色恋へと向いていた。
クラス含めて交友が乏しく、相対的にエヴァンジェリンを良く知るといえるタカミチが場の雰囲気に否と苦笑したところで、
「よっと」
「む」
リノウムの床を蹴り、エヴァンジェリンが士郎の首に両腕を回してしがみついて、
「「ん」」
ほとんど間をおかず、むちゅ、っとばかりに士郎とエヴァンジェリンの唇が合わさった。
タカミチが苦笑したまま石と化し、クラスが完全な静寂に沈む。
……――鳴り響く予鈴。
音を立てて唾液にまみれた唇が離れ、糸を引き、地へと引かれてぷつりと切れる。
十数人分の音にならない嬌声を睥睨して、クラスメートの内とある1人ににやりと笑いかけ、エヴァンジェリンは士郎の首に回した腕を引き寄せて頬を合わせる。
それから、腕に腰かけるようにして密着したまま、相も変わらず石のままなタカミチに気付き含み笑いを重ねた。
「クク……さて、一部始終見たなら分かっただろうが、こんなわけで寿退学だ」
「……日本の中学は義務教育だけどな」
苦し紛れの士郎の突っ込みをかき消すように、ついにクラス1−Aが絶叫に包まれるのだった。
プラズマ化した炎が舞い、物理限界をも超え零点振動すら阻む世界と鎬を削る。
そんな模擬戦の果て、別荘が壊れるからと肉弾戦に限定し、敗北し、俺はエヴァに指定された罰ゲームを遂行する破目となった。
そして現在、校舎内をエヴァのクラスメートたちから逃げ回った後、授業時間となってようやく俺達は学園長室に落ち着いていた。
対面のソファーには近右衛門氏、そして傍に控える1時間目は授業が無いというタカミチ。
彼もいることで、エヴァと出会ってからの簡単な経緯というか、エヴァの呪いを解いたことについても説明することとなった。
「聞いてませんよ、学園長……」
「電話やらで軽々しく伝えられる事でもなかったからのう」
額を押さえるタカミチに対し、既に色々と割り切っているというか、苦労は覚悟したらしい近右衛門氏は笑みさえ浮かべて見せている。
エヴァと共に赴いて事情と話を通した際、椅子から転落した姿はとてもではないが連想できない。
手を下ろしたタカミチに疲れたような目つきで見つめられ、俺は肩を竦める。
「昔エヴァを“退治”しようとした奴らに同情の余地はない。まあ、エヴァの思想に思うところがない訳じゃないけれど、ここに縛られてたらいつか良いように利用されかねない、それを強いるほどの罪とは思えない。近右衛門氏だって……言い方は悪いかもしれないが、永遠に生きてられるわけじゃないしな」
「……不老不死のエヴァとは対等な条件になり得ないと分かってはいたけれど……無茶するね、全く」
「フリーランスは気楽だぞ?」
「ああ、そうかい」
冗談めかして告げると、タカミチは深々と溜息を吐いて下がった。
実際、全てはもう過ぎ去ったことなのだ。
「確認じゃが、すぐに麻帆良を出ていくという訳じゃないんじゃな?」
「なんだかんだで13年も括ってくれたからな。家の荷物の整理も面倒だし、そもそも出てったところでやることが無い」
「ふむ……ナギが生きとるという話もあるがのう?」
「士郎から聞いている。……生きているというなら2,3発殴ってやらんと気が済まんが、わざわざ探してやるのも業腹だ。探して見つかる状況とも限らんしな」
ふーむと唸る近右衛門氏の横で、タカミチが目を丸くし、次いで頬を引き攣らせた。
「……さっき、『なんだかんだで仲良くなった』なんて士郎は言ったけどさ」
「深く追求してくれるな」
「ぶっちゃけ行きずりの関係というやつだな」
誤魔化そうとした直後にエヴァの暴露が重なった。
頭に“些細”とかつけるには既に状況が色々と深まっていると思ったが、ともあれ意味は伝わったらしくタカミチが凄い目つきで俺を見てくる。
非常に痛い。
「士郎……、君……」
「年齢を考えれば満更駄目ってこともないだろう?」
「身体が問題じゃないかと思うんだけど……」
「待てば問題が無くなる訳でもないだろう」
「というか、つまり……惚れたのかい? エヴァに?」
「……現状を言えば、そうなるかな」
ちらりとエヴァの方を見れば頬を赤くしてそっぽを向いていた。
ニヤニヤと笑っている学園長は見なかったことにして、天井を見上げる。
数百年を生きた、などと言う割に、ここ数週間――別荘にもつれこまれたので感覚的には倍程度――を共に過ごしてみれば結構俗人くさかった。
暇だ暇だとベッドに転がり言うので遊ぶものでも無いのかと問えばTVゲームを引っ張り出し、対戦出来るものは相手がいないからすぐ売ったとコントローラーを放り投げ、ゲーム店に突撃。
初プレイである俺に大人げ無く完全試合を連発した上、弱過ぎてつまらん特訓だとばかりにCPU100人抜きをさせられた。
考えてみれば久しぶりに元の世界に似た地球であり、コンピューターゲームなんて数千年ぶりだったのだが、懐かしさもさほどでなく、ゲームにいまいち入り込めなず、自身の価値観の変動というか枯れ具合を強く感じさせられた。
……まあ、なんだかんだ手を替え品を替え挑発されと彼女に乗せられ結果的に遊び倒すこととなったのだが。
それまでは通販で我慢していたが、呪いから解放さたことで晴れて行けるようになったというコスプレ専門店へ強制的に俺も同道。
服飾に関しては長らく工業製品と無縁だったためそれなりに詳しくなったつもりだったが、それを悠々と上回るエヴァの知識量に舌を巻くことになる。
中世ヨーロッパ風の世界が長かったため並ぶ衣装にはどこか懐かしさを感じつつ、子供用以外では流石に合うサイズがなかったエヴァにどうにか話を振り、軍帽などを被せ褒めたりした。
何故か女性用下着コーナーへと連れ込まれる流れになり、しかしいざ踏み込めば品ぞろえの多種多様さに素で驚愕し、これならばと嬉々として選び出したエヴァに『それはいくらなんでも扇情的を通り越して下品だ』と窘めつつ、ふと視線の注目に気が付き周囲を見渡して一斉に逸らされる。
……似合うだろうかと訊かれ、黒系が似合ってたから濃い色が肌の白さに映えると思うと答えた際は他の客何人かが一斉に吹き出していた。
メールの誤字の多さを指摘すると顔を真っ赤にし、ゲームは得意なのになと言うとボタンが多過ぎると返してくる。
血の調査が開胸まで発展し、いつの間にか麻酔に抵抗が付いていたか俺が途中で痛みを感じ訴えると治療系の魔法は苦手なんだと慌て、最終的に落ちつくと照れ臭そうにボソッと謝ってくる。
喜劇には笑い、悲劇には顔を顰め、ふとした拍子に大きな戸惑いや甘さを見せる。
あるいは、それまでの数百年では経験した事の無かった類である麻帆良での十数年が要因なのかもしれない。
我を通す強さを持ち、適応する柔軟さも持ち、半生を考えれば蹴ってもおかしくない真っ当な倫理観すら理解し認めている。
器の大きさは俺など比べるべくもない。
だが、自身の理想を認め、体現しようと努め、結果独りになって――。
「――ああ、俺はきっと……惹かれてる。エヴァの事が好きなんだ」
懐古と憧憬の奥から引き上げた……放っておけない、見ていたい、手を取りたい、そんな本音を声に乗せて……。
見詰めればきょとんと見返してきて、次いで首筋まで真っ赤にして罵ってきたが、肩に置いた手は結局振り払われなかった。
異世界放浪士郎解説
そこそこ更新中 ( ̄─ ̄)